よんばば つれづれ

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時計屋さんに恋する!『思い出のとき修理します』谷瑞恵著

入院と手術に付き添うため信州から来てくれた長男が、嫁からの見舞いとのことで全四巻(今後まだ増えるかも)のこのシリーズを持ってきてくれた。本さえあれば退屈はしないと、自分でも入院中に読むための本を何冊か買って、入院用の荷物の中に入れていたのだけれど、なんだかこの本に惹かれていの一番に手に取った。

 

Amazonの紹介文:

仕事にも恋にも疲れ、都会を離れた美容師の明里。引っ越し先の、子供の頃に少しだけ過ごした思い出の商店街で奇妙なプレートを飾った店を見つける。実は時計店だったそこを営む青年と知り合い、商店街で起こるちょっぴり不思議な事件に巻き込まれるうち、彼に惹かれてゆくが、明里は、ある秘密を抱えていて…。どこか懐かしい商店街が舞台の、心を癒やす連作短編集。

 

主な登場人物はヒロインの明里、時計屋さんのシュウ、津雲神社の親戚の大学生だという太一、この太一がいったい正体は何者?と思わせるつかみどころのなさで、不思議な味を演出する。そしてちょっと寂れた津雲商店街に、パラパラと残ったお店の住人達で、どの人物もいきいきと描かれている。

 

商店街で起きる問題にシュウや明里が関わって解決していくなかで、人が死んだりはしないけれど、結構これがミステリー仕立てで謎解きの面白さを味わえる。さらにファンタジーの要素もあり、ラブストーリーの楽しさもある。

 

そして何と言っても一番の魅力は、時計屋のシュウだ。ドイツの時計の学校で学び機械式時計の職人になるはずだったシュウだが、兄との不幸ないきさつでその夢を断念して帰国し、祖父の時計店を継いでいる。

 

商店街で起きる様々な問題や事件を、静かに解決していくクールさと、ちょっと天然っぽい面を持つ明里がときにドジなことをしても、必ず優しく温かく受け止め支える懐の深さを持つ。おまけに料理も手早くてうまいときている。こんな男性がいつもそばにいてくれたら、女性はどんなに心強く幸せだろう。

 

いまや全国の地方都市が抱えるシャッター商店街問題。この物語の舞台もそうした寂れた商店街だ。時代に取り残されたような町だからこそ、現代では貴重な人情も健在で、傷ついて後ろ向きになりかけていた明里の心も救われていく。

 

 

手術後の痛みや微熱で不快なはずの何日かも、この物語に没入することで、あまり気にならなかったように思う。男性には向かないだろうし、夢見がちな乙女(?)向きの話かもしれないが、人気のシリーズだというのも納得だ。映画やドラマにするならシュウは誰が演じたらピッタリだろうなどと想像するのも楽しい。

 

 

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夜中も電気をつけて本が読めれば退屈しないんだけど・・・。

開き直って楽しんだ夜明け前の空。実際はもっときれい。

朝ではないが、一日だけ真っ白な富士山がクッキリ見えた日があった。

(追記:この写真およびキャプションは入院中の病院でのことです)