よんばば つれづれ

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手紙を出しに行ける、たったそれだけのことと玲子さんの本

我が家から南郵便局まで、地図で確認すると1キロメートルもない。普通に歩けば、ほんの十数分のところだ。それが、歩いていけなかった。鎮痛剤を飲んで、杖を突いて、その杖に全体重を掛けんばかりにして歩いても、耐えられそうもなくて行けなかった。だから好きな葉書を書くことも、この2、3か月休んでいた。

 

それが手術のおかげで行けるようになり、今日は久々に葉書をしたため、郵便局まで投函に出かけた。手紙を書いて、そうしてそれを自分で投函することができる、そんな当たり前のことが、たったそれだけのことが、こんなに嬉しいなんて!

 

失って初めて、当たり前にできたことやあったもののありがたさに気付くということは知ってはいたけれど、知っているということは実感することとは違う。

 

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一日一日心を込めて

『玲子さんの のんびり老い支度』  西村玲子著

これも嫁からのお見舞いの本。またAmazonの内容紹介文を引用すると、

 

70代になって大きな病気を体験。
残りの人生への向き合い方も微妙に変化した、玲子さん流「老い支度」をイラストと共に綴る。

70代になり、大きな病気を体験したことで人生への向き合い方にも変化があったという西村玲子さん。
毎日を無理せず丁寧に、心豊かに過ごすために、玲子さんが始めたこと、あきらめたことをイラストとエッセイで綴る。
「あちらこちらの体の支障は仕方ない。
2016年の秋に2か月近く入院して、いろんなことの原点に立ち返る良い機会を得た。
どんなことが起きても恐れないという死生観も出来た。
それを境に小さな身近な幸せに感謝できるようになった。
今の時間を大切にして楽しみたい、などといいながら、
本来の性格が出て、まあ、いいかという楽天的な根の部分に引き戻されている」
(あとがきより)

第1章 大切なものに囲まれてすっきりシンプルに暮らす
第2章 失うだけではないことを知った病気からの贈り物
第3章 心はいつも贅沢に好きなことをあきらめない
第4章 未来はこれから生まれる思い出で満ちている1日1日ていねいに前へ

 

西村さんの素敵なイラストがふんだんに入った楽しい本だ。カバーの見返し部分に「あっという間の人生だけど、新鮮なことを見つけたら、少女のように喜びたい」という言葉が載っている。そうだ、こどもは面白い形の雲を見つけても、風が葉っぱを揺らしても喜ぶ。そんなみずみずしい心を取り戻して、なんでもない毎日を大切に暮らしたい・・・入院体験の中でこの本を読んで、そんな気持ちになった。

 

好きなものだけに囲まれたシンプルな部屋に花を飾って、お気に入りの部屋着を身にまとって、好きな本を読んだりDVDを見たり。それだけで、どんなに幸せだろう。自前の右股関節は失ったけれど、代わりに得たものは決して少なくない。