よんばば つれづれ

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女たちそれぞれの愛『四色の藍』西條奈加著

主人公は藍染めの店紫屋のおかみ環(たまき)。貧しい暮らしのため子供のころから働き通し、料理茶屋の仲居をしているときに紫屋の主人茂兵衛に見初められ後妻となったが、もともとは武家の娘だ。

 

年の離れた夫に大切にされる幸せな日も長くは続かず、ある日出先で茂兵衛が殺されてしまう。職人気質の茂兵衛はその日、新しい藍の色を染めることに成功し有頂天だった。その新しい色の秘密を手に入れんがための商売敵東雲屋の仕業とにらみ、環は主の三左衛門を問い詰めようと日参するが、やくざまがいの男たちが店を固めていて、目指す三左衛門には会えない日が続いている。

 

そうした中で、阿波から兄の仇を追ってきた男装の麗人伊予や、酌婦のお唄、洗濯婆のおくめと知り合い、力を借りるようになっていく。環の夫を殺めた犯人探しに、阿波藩の藍の生産をめぐる汚職事件も絡んで、物語は進んでいく。

 

ミステリーを縦糸に、女たち四者四様の大切な人への思いが横糸のようになって紡がれるストーリーは、なかなか魅力的だ。憎みながら憎み切れなかったり、反発しながら共感するものを感じあったり、べたつきすぎない情の通い合いが快い。

 

男女の情以上に、女同士の相手を思う気持が、爽やかな読後感を残す物語だった。

 

 

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