よんばば つれづれ

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車中の人々

昨日、録画しておいたNHKスペシャル『車中の人々 駐車場の片隅で』を見て衝撃を受けていたら、思いがけなく自分の足元で似たような事態に出くわしてしまった。

 

今朝8時前に老人会のNさんから電話が来た。私の棟の最上階の住人であるXさんが、駐車場の自分の車のそばに車いすを置いて中で寝ているらしいと言う。死んでたりしたら大変だから、何か打つ手はないだろうかと言われた。二日ほど前にも、Nさんから「Xさんが階段の途中で上がれなくなったらしく、座り込んでいるよ」との連絡を受け助けに行ったところ、大丈夫だとかたくなに断られたばかりだったが、とにかく様子を見に駐車スペースに行ってみた。

 

車の窓は、中が見えないようにしっかり全て塞いでいる。わずかな隙間から覗こうとすると、たちまち中からドンとガラスを叩かれた(良かった!最悪の事態はない)。声をかけると、「管理センターに言ってある。プライバシーの侵害だ」と言われてしまい、スゴスゴ戻るしかなかったのだが、どうやら車の中で寝ていたというのは間違いないようだ。少し前までお母さんの介護をしていらしたのに、いつの間にご自分が車椅子生活になったのか、Xさんは近所付き合いをしない方なので、全く知らなかった。

 

Xさんはこのところずっと家を空けていた。神奈川のほうの親戚のところに行っているらしいという話が聞こえてきてはいたが、誰も正確な話は知らない。先日階段で座り込んでいた時にも、「これからまたこちらに住まれるのですか」と聞いてみたが、返事はなかった。住むなら住むで、下の階に移るなどしないと、とても車椅子での一人暮らしは不可能だろう。

 

Xさんが高齢のお母さんを介護していた時から、折りを見ては「手がいる時は言ってくださいね」など声掛けをしていたが、いつもそっけない返事だった。それでも、前回と言い今日と言い、ここまでかたくなに拒否されるとは思っていなかった。

 

ちょうど連休中なので、明後日まで管理センターに問い合わせることもできない。きちんと現状を伝え、下の階への転居など、今後の手立てが処理済みならいいけれど、そうでなければ当該機関に相談する必要があるだろう。でもXさんのあの様子だと、それも結構難航するかも知れない。

 

番組でインタビューを受けていた人たちからも感じたが、本当に困っている人は得てして助けを求めるすべを知らないか、知っていても、援助を求めることを潔しとしないことが多い。世の中には、驚くほど要領よく、悪用とすら言えるほどに救済システムを利用する人もいるのだけれど。

 

番組で取り上げた人たちの中には、年金を月10万円受けている人(公的住宅があるか、住宅手当などさえあればギリギリ生活できるのでは?)もいたし、車中生活になる前に借りていたアパートのある人、故郷に自分の家がある人もいた。ある50代の夫婦など、家もあり二人とも看護師の資格さえ持っているのだけれど、人間関係に耐えられないようだった。

 

気楽だからと望んで選び取っている人もいるので、車中暮らしの人を一概に不幸だと決めつけることはできないが、やむを得ずその状況にいる人は、なんとか援助の手を差し伸べたいものだ(番組ではNPOの人が関わっていた)。赤ちゃんを抱えて、車中生活をしている30代の母親もいた。

 

社会のシステムになじめなかったり人付き合いが苦手だったりする人に、さらに不運が少し重なると、簡単にセーフティーネットから転落してしまう。もちろん人生は思うようにならないことが多いものではあるが、人としてこの世に生を受けた以上、誰もがもっと喜びのある人生を生きていいはずだ。特権や有り余る財を持っている人々の視野には、こうした厳しい生活を余儀なくされている人たちの姿は入らないのだろうか。

 

人を踏みつけて手にする快楽など、むなしいという思いにとらわれることはないのだろうか・・・。

 

www.nhk.or.jp

 

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