よんばば つれづれ

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少し高い所の話、『雨降る森の犬』馳星周著

夫を亡くした後、奔放に女としての人生を生き始めた母親に嫌悪を感じ、伯父の元で暮らすことになった中学生の少女雨音が主人公だ。伯父は山岳カメラマンで、蓼科の別荘地で、バーニーズ・マウンテン・ドッグという大型犬のワルテルと暮らしている。これは、その少女とワルテルの出会いから別れまでを描いた成長物語。

 

伯父の家の隣には広い敷地の豪壮な別荘があり、ゴールデンウイークと夏休みにやって来るその家の美貌の息子正樹は、地元の少女たちの憧れの的だ。買い物中にその正樹と若い継母に遭遇し伯父に紹介されるが、正樹はつっけんどんで雨音には最悪の第一印象だった。

 

伯父がワルテルの前に飼っていた、雌犬のマリアと同じ犬種だというのが信じられないほど、ワルテルは雨音に対して威嚇的な態度をとる。伯父は、男尊女卑の犬なのだと言う。やがて、雨音がボスである伯父道夫の家族だと理解し、だんだん雨音とワルテルも家族のようになっていく。最後まで、雨音のことは妹と思っていたようではあるけれども。

 

道夫や雨音、そしてワルテルと付き合い、深い森の美しさや山に登る喜びを知って、正樹のかたくなな心も徐々にほぐれ、三人と一頭は本当の家族のようになっていく。

 

雨音と母、正樹と父の親子ゆえの葛藤や、地元少女の憧れである正樹と親しくなることによって起きる、雨音と周囲の少女たちとのちょっとしたトラブルなどを織り交ぜながら物語は進む。

 

舞台は美しい信州。そこに「シズル感」たっぷりの食べ物と、悲しい時つらい時にいつも雨音のすぐそばで寄り添う犬の細やかな描写ときては、つまらないわけがないというくらいだ。犬の、とくに大型犬の魅力があふれていた。私はもともとは犬派だった。それがかなわず猫を飼い、飼ってみたら猫に魅入られてしまったが、理想は交通事故の心配のないような田舎で、大型犬も小型犬も猫もいっぱい飼って、のんびり暮らすことだったので、この作品を読んで、あらためて大型犬の魅力を感じた。

 

山岳カメラマンや優雅な別荘族という、ちょっぴり自分の日常から離れた場所の物語だったが、嫌味を感じることもなく、楽しい読書だった。雨音や正樹の素直さと不器用さ、伯父道夫の凛とした生き方などがとても心地よかったせいだろうか。もちろん、ワルテルのちょっと頑固なところも大きな魅力だった。

 

 

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このうっかり者が!

鎮痛剤が終わるのでまた整形外科に出かけた。行きはタクシーで行ったが、帰りは病院のすぐ近くの金融機関に寄って延びのびになっていた用件を済ませ、そのあと帰路は杖を頼りに歩いてみた。

 

初めのうちは思いのほか快調に歩け、あらこの分なら今度は髪のカットに行けるかしらとさえ思ったのだけれど、やはり歩くほどにつらくなってくる。それでもこの道のりの半分ほどしかない整骨院に、杖なしで行っていた時のつらさよりはずっとマシと思える程度で帰りつくことができた。やはり道具はありがたい。

 

午後の見守り隊も、ごくごくゆっくり歩いて所定の場所まで行き、子供たちを待つ間など、ときどきガードレールに寄りかかったりして行った。私たちの立つ一本下の通りで、先週小1と小2の男児に対し誘拐未遂案件が2度あったとかで、車で迎えに来る親御さんも多い。杖を突く私は、黄色い「横断中」の旗が持てない日の多い雨がちの一週間だったが、なんとか無事終了した。

 

先月から数百歩しか歩かないような日が続いている。そんななか、今日は病院の片道と見守りとで久しぶりに3000歩を超え疲れてしまったが、夜は”言い出しっぺ”の英語の講座を受けるので、頑張って地区市民館まで行かなければならない・・・と、ずっと昼間から思い込んでいて、早めに夕食や後片付けを済ませて出かけた。

 

何年も利用しているが、市民館の3階の会場に行くのに今日初めてエレベーターを使用した。そのエレベーターを降りると、廊下が暗い。会場の大集会室も電気が付いていない。おかしい・・・と思い、やっと気づいた。講座は第三金曜日、来週だ。なんてぼんやりしているのだろう!なぜか朝から、今日は病院と市民館と2つ重なった、頑張らなくては・・・と思い込んでいた。

 

せっかく苦労して来たのだし、来週また講座に来るのだからその時返却すればよいので、このところ利用できずにいた図書室に行って、本を借りてきた。転んでもただでは起きないよんばばだったが、それにしても情けないミス!

 

杖を使ったり、機敏に動くことができなかったりで、すっかり年寄り臭い行動になり、頭までもうろくし始めているような気がしてしまう。しっかりしろ、私!

 

 

 

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1歳のころのオーガスト。若いからほら、こんなに体が柔軟!・・・って、猫だものね。

横山秀夫さんの原点『ルパンの消息』

半落ち』『クライマーズハイ』『64』・・・と作品が次々映像化されている横山秀夫さんの、サントリーミステリー大賞で佳作を受賞したデビュー作だ。受賞したのは1991年だけれど、作品は出版されることなく、本作は15年後に改稿出版されたもの。

 

昨日見守り隊の会議で小学校に出かけたので、その敷地内にある校区市民館によって借りてきた。二段組で330ページという長編作品だが、昨日の夕方から読み始め、夢中で読破してしまった。

 

殺人罪の15年の時効が明日いっぱいで成立するという夜、忘年会に沸く刑事たちのもとに、信頼できる筋からということでひとつのタレコミ情報がもたらされる。15年前自殺として処理された女性教師の墜落死は、実は殺人で、しかも犯人は教え子の男子高校生3人だという。たった24時間で真相に辿り着き、訴追まで持ち込めるのか、刑事たちの総力を挙げた捜査が始まる。

 

問題の3人のツッパリ高校生を追っていくと、当時その3人が決行した「ルパン作戦」という、破天荒な期末テスト問題奪取計画が浮かび上がる。女性教師と3人の高校生を取り巻く生徒や教師、3人が入り浸っていた「ルパン」という名の喫茶店のマスターなど、秘密や闇を抱えていそうな人間が入り組んで、次々と捜査線上に浮かぶ。

 

3人のうち2人はすぐに見つけ出せ、供述も始めるのだが、当時の状況が分かって来るにつれ、謎はますます深まっていき、読者はグイグイと物語に引き込まれてしまう。昭和史に残る未解決事件「三億円事件」まで絡ませ、15年前の人物たちはおろか、現在の取調室の刑事たちまで魅力的に描き分けながらストーリーは進む。はたして時間内に刑事たちは犯人に辿り着けるのか・・・。

 

売れっ子になってからよりも、デビュー作のほうが優れているということは少なくないし、この作品の場合15年後の横山氏が手を入れて出版した、思い入れもひとしおであろう作品なのだから、面白くないはずがない。読みながら、これも映像化したら良いものになりそうだなと思っていたら、やっぱりすでにWOWOWでドラマ化されていた。

 

じつは感想はアップしなかったけれど、先月同じ横山氏の『出口のない海』も読んでいた。人間兵器「回天」の搭乗員を主人公にしたこの作品もなかなか良かったのだが、読後もたもたと日を過ごしていたら、なんだかまとまらなくなってしまった。

 

出口のない海』でも主人公と銃後の乙女の純愛が描かれていたが、『ルパンの消息』も、ミステリーの醍醐味はもちろん、人の生き方を変え、時を超えて人を支える、「愛」の描き方にも心が震えた。

 

 

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リーマンショックから10年

今朝のニュースで「リーマンショックから10年」と言っていた。へえ、まだそんなものなんだ・・・という気がした。

 

当時私が勤めていた会社も、それまでの順調な営業数字が、リーマンショック後はさすがに大きくマイナスに転じた。それで、経費削減で乗り切るため正社員は給与カットするということになり、その方法について、全員忌憚のない意見を出すように社長から言われた。ほとんどの人は「御意に従います」という内容のものだったようだが、私は忌憚のない意見を書き、それは社長の思惑とは違うものだった。

 

それまで感じられていた社長からの信頼は雲散霧消、(以前にも書いたことがあるが)その日から私はパワハラの嵐に見舞われた。もう少し若ければすぐにも辞表を叩きつけていただろうが、さすがにあと数年で60歳という年齢では次の職場はないと思ったので耐えた。なにか自営業はできないかとまで考えたが、資金も特技も才能もなく、諦めざるを得なかった。

 

そうしているうち、第一次定年を過ぎたので給与が3割減給になることになり、仕事の内容は量も責任の重さも変わりないのに新人と大差ない報酬になってしまい、そのうえパワハラまで受けるのでは合わないと思い、ええい、なんとかなるだろうと、退職することを決心した。

 

第二次定年の65歳まではもちろん、そのあとも適当な働き場所があれば、働ける間は働いている方が若さや健康のためにもいいだろうと考えていたのに、思いがけなく61歳で毎日が日曜日の生活を始めることになった。

 

いざやってみればこれが快適で、地域の役目やボランティア活動、自分の勉強やら読書と、退屈する暇もない。安保法の2015年からは市民活動も加わって、いろいろ新しい経験をし、新しい人間関係も広がった。

 

今朝のニュースを聞いてまだそんなものかと感じたのは、今の私にとって、忙しく会社勤めをしていた日々は、もう遠い昔のように感じているからだ。ということは、今の生活は心が動くことが多く、時間を長く感じている(これは「チコちゃん」情報)ということだろうか。

 

ただ、現在は身体的な制約のため、少々変化や感動の少なめな生活になっている。しっかり体のメンテナンスをして、また心を動かす日々を送りたい。

 

 

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まさか、60過ぎてハロウィンの仮装をすることになるなんて・・・。(2016年の活動)

 

 

 

 

母のために用意したものに助けられる

80代半ばだった母が、今思えば年齢的な影響もあったのだろうが、同居していた兄と衝突し、もう一緒に暮らしたくないとへそを曲げた。それで、思いがけなく豊橋に戻っていて、しかも当時すでに息子たちは独立して独り暮らし(プラス猫2匹)になっていた私のところに来ることになった。

 

内科的には何処も悪いところはなく薬も一切服用していなかった母だけれど、脚は大分頼りなくなってきていた。それで、少しでも暮らしやすくなるようにと、玄関に小さなベンチ椅子を置いた。靴の脱ぎ履きが楽になったと母は喜んだ。兄に買ってもらった老人車を持っていたが、母はそれを使うことに抵抗感があるようだったので、ちょっとお洒落な杖を買った。

 

そうして5年近く我が家にいて、そのあとグループホームに入居し、その杖もほとんど使わなくなった。老人車は片付けてしまったが、たしか杖は処分してなかったはずと思いだした。なぜかと言えば、先日医者をしている友人が電話をくれて私の脚の話になり、松葉づえも随分助けになるから使ってみてはと言われたのだ。前回整形外科に受診した折り、先生からも提案はあったのだが、なんとなく大げさな感じがして躊躇してしまっていた。

 

また受診して松葉づえの相談をしてみようか・・・と考えているうち、思い出したのだ、母の杖の存在を。傘と一緒に保管されているのを見つけ、取り出して家の中を歩いてみると、確かに痛みが軽減されてひどいびっこを引かずに済む。松葉づえほど大げさにならないし、しばらくはこれを使ってみようかという気になった。

 

玄関のベンチ椅子は、身支度をしてタクシーを待つときに重宝している。部屋で待っていると、運転手さんに呼ばれてから出ていくまでに時間がかかってしまうので、「少々時間がかかります」と言われた時も、支度は済ませてこの椅子に座って本を読んで待っていれば、車が来たときさっと出られる。

 

まさか、九十近い母のために用意したものに、こんなに早く自分が助けられるようになるなんて、用意したその頃は思いもしなかった。

 

 

日本中、いたるところで思いがけなく不自由な生活を強いられている人たちがいる。慣れぬ異国を旅行中だった方たちや障碍のある方たちは、情報も十分に手に入らず、どんなに心細いことだろうと思う。もちろんそうしたハンディを持たない日本人の方たちだって、さぞ大変なことと思う。

 

一つの大きな災害が収束しないどころか、被害の全容すらつかみきれぬうちに次の大災害が起きる。一連のオウム事件のころも、中華航空機の墜落があったり、阪神淡路の震災が続いたりして不安が募ったが、近ごろも大きな災害続き(なかでも最大級の痛手の原発事故は、本来は避け得た人災)で、なんだか日本全体が罰を受けているのではないかとすら思えてくる。

 

人生何が起きるか分からない。いつ何に助けられることか。今日は無事でも明日も無事だとは限らない。周囲の人には親切に、離れている人にも心を寄せて、自分のできることをしたい。ある程度のお金はもちろん必要だろうが、最後の最後に助けられるものは、人と人のつながりのような気がする。

 

 

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地震のニュースの朝の朝顔。元気を出して!というようにいっぱい咲いてくれた。外側から撮った方がきれいなのだろうが、回っていくのが今の私には大変なため、横着して室内から撮影。杖に気が付いていればよかった。今夏最多の開花だったかもしれない。

炭酸飲料大好き地方!

夕方のニュースのコーナーで、「炭酸飲料を日本で一番多く飲む都市は?」という企画を放送していた。ここで、15年間津軽に暮らした私は「もしかしたら・・・」という気がした。テレビから「暑い沖縄・・・ではなくて、なんと青森市です」と聞こえてきた。

やっぱり!

 

2009年からずっと1位なのだそうだ。なぜ私が「もしかしたら」とピンと来たかと言えば、毎年夏を迎えると、姑がサイダー屋さんに電話して、箱で注文していたからだ。私は夏の飲み物と言えば冷えた麦茶!と思っていたのだけれど、津軽ではサイダーが定番のようだった。

 

今日の番組では、青森県でサイダーがよく飲まれる要因について、

・リンゴに薬を散布する農家では、昔から炭酸飲料に毒消しの効果があると言い伝えられていた。

青森県民は甘いもの好きで、飲み物もお茶や水といった糖分を含まないものより、圧倒的に甘いものを好む。

・夏とは言っても28度以上になることがあまりなく、糖分の多い炭酸飲料でもべたべたした感じを受けない(28度を超えると、炭酸飲料の売り上げは落ちるそうだ)から。

といったことを挙げていた。この炭酸飲料好きを証明するように、今でも青森には地サイダーの種類が非常に多いのだそうだ。

 

姑が箱買いしていたのも、そうした素朴な地元産のサイダーで、レトロな雰囲気のラベルも、違うメーカーの物も構わず使ってしまうのか、ガラスの瓶が様々な形をしていることも、私には面白かった。そしてそのサイダーが木製のケースに入って届けられるのだった。

 

姑と暮らした12年間、私はほとんどサイダーを飲まなかったが、この放送を見て、あの素朴な地サイダーを、もっと飲んでおけばよかったなと、ちょっぴり思っている。

 

 

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弘前地サイダー(画像は青森県地場セレクトブログ様より)

婚家で購入していたのはもっと素朴なラベルだったように記憶する。何しろもう30年も前だから、デザインもそれなりに新しくなっているだろう。

私は相変わらず、ほとんど炭酸飲料は口にしない。

嵐の中でも

ちょうど台風が最接近している頃か、雨も風も激しい。ただ、鉄筋コンクリートの集合住宅の1階なので揺れもしないし、幸いなことに水の心配もないところなので、さして恐怖は感じない。でも、ヒューヒューと風の音はすごい。

 

そんな中でも、昨日注文しておいたネットスーパーの注文品が届いた。こんな日に配達をお願いしてしまって恐縮だ。うっかりコーヒーを切らしてしまったため、それが昨日からつらかったのだけれど、それ以外は急を要するものではなかったのだから、明日の配達にしても良かった。配送の方には申し訳ないことをしたが、久々にコーヒーが飲めて嬉しかった。

 

こんなに便利なネットスーパーだけれども、思わぬ落とし穴があった。電子マネー支払いを利用していて、口座からのオートチャージにしているので、店舗で買い物しているときには残高を心配することはなかったのだが、玄関先で支払う電子マネーは、現金でもチャージができなかった。

 

改めてサイトで確認すると、きちんと利用法の所に書かれていた。これはなんとしても、近々店舗まで行かずばなるまい。おかげで、せっかく今日は高額の購入だったのにポイントを逃した。でも、こんな嵐の日に、自分は1ミリも濡れないで買い物ができるのだから、文句は言えない。

 

私の脚を心配して、急遽今週末に息子夫婦が来ると言ってきた。部活で忙しい孫は置いて、夫婦二人で三人分の食料と自分たちの寝袋持参で行くから、何も準備などはしないようにと言う。

 

この夏は嫁の母親の急逝で、見舞い・葬儀と、忙しく信州と三河を往復することになり、休みもたくさん使ったことだろう。管理職になり責任も増した嫁は、やっと先日四十九日の法要が済んで、落ち着いて仕事に取り組まなくてはならないことだろうに、優しい彼女は、長男の嫁として何もできずにいることに心苦しさを感じているに違いない。その心遣いだけありがたく受け取ることにして、心配はいらないと返事をした。

 

「情けは人の為ならず」「困ったときはお互いさま」をモットーとして暮らしてきたが、思いがけなく早ばやと、人の情けに助けられている今日この頃だ。家から出られない日々で、インターネットのないころだったら、普段から友人と頻繁に電話したり会ったりする習慣のない私は、かなり寂しい思いをしたのではないかと思うけれど、ブログを通して多くの方とつながっていることも、心強いことだなと痛感している。

 

 

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ヤフー天気・災害サイトより