よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

魅力的な沖縄の女性(ひと)『星の衣』高橋治著

小さめの活字でしかもページ数は600ページ近い長編だけれど、引き込まれて結構短期間に読んでしまった。1996年の吉川英治文学賞受賞作。

 

年代の違う二人の沖縄の女性が主人公で、物語はその二人の視点で交互に進んでいく。二人には沖縄という以外接点はないので、全く別々の二つの話が交互に語られる訳で、それが少々筋を追ううえではかえって邪魔になっているように思う。

 

それぞれに魅力的なヒロインだし、別々の作品にすれば普通の長編小説が二編できたと思うのだけれど、あえてこのような形式で一つの物語に収めた作者の意図を考えた。

 

ヒロインが一人だったら、読み手はたまたまその女性が特別だったという印象を受けるだろう。この形で同時進行のようにして二人の人生を追うことで、沖縄の女性たちの物語、という普遍性を感じさせる。

 

ヒロインの二人はもちろん、彼女たちを取り巻く女性たちがまたみな魅力的だ。強くしなやかで大らかで優しい。これが沖縄の女、なのだろうなと思わせる。

 

私も一時期真剣に、各地で消滅しかかっている土地の織物の技を受け継ぐような生き方に魅力を感じていたので、このヒロイン二人がそれぞれ首里織八重山上布に惹かれていく話は興味深かった。着物や織物が好きな人にはそのあたりの細かな描写も楽しいだろう。

 

女性に劣らず、男性もなかなか素敵なおじさま、おじいさまが登場する。全編を通じて嫌な人物は若い方のヒロインの恋人くらいか。きれいごとに過ぎると思う方もあるかも知れないが、私はドロドロは苦手なので、結構この爽やかで精神性の高い男性陣にも好感を持った。

 

背景としての沖縄の描き方も、薩摩に、大和に、アメリカに、翻弄され続ける悲劇の地の歴史に触れながら、過度に恨みがましくならず、全てを赦して大きく包んでいってしまうような、沖縄の大きさや優しさを感じた。でもこの優しさに、私たちヤマトンチュは甘え過ぎて来たのだろう。

 

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