よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

「きょうは会社やすみます」の会社なら休みたくないかも?

いよいよ来週は最終回だ。悲しい。私にとっては不作だった秋ドラマ、「ボーダーライン」が早々と終ってしまってからは唯一このドラマだけが楽しみだった。全くのラブストーリーなのに、60を過ぎた私が見ても毎回胸がキュンキュンして、主人公花笑さんの初めての恋に一喜一憂させられる。

登場人物のキャラクターが良いことに加え、どの人も演者がぴったりはまっている。残酷な事件も嫌な人物も、物語を盛り上げる特別な起伏もほとんどないのに、どの瞬間も見逃したくないと思うほどストーリーに引き込まれてしまう。そして見終わると胸がほんわか温かく、優しい気持ちになる。人を好きになるっていいな、親子仲がいいっていいな、人間関係のいい会社っていいな・・・。

会社と言えば、タイトルにもなっているくらい会社が重要な舞台で、いまどきこんなあったかい雰囲気の職場はないだろうと思うほどノホホン、ゆったりとしている。なんと言ったって吹越満さんの演じる上司(課長さんか)が優しくて思いやりがあって、こんな上司のためなら(上司が)いい成績出せるように頑張って働く!と思える。おバカが多いけどみんな憎めなくて楽しい同僚たち。とんでもないおしゃべりなくせに肝心なことは決して口外せず、いつもそばで見守り力を貸そうとしてくれる同期の大城くん。結婚と恋愛は別!と言いきって、条件のいい結婚相手ばかり物色している瞳ちゃんさえ、このスタッフにかかれば愛すべき存在に描かれている。

そして、その会社に劣らず魅力的なのが主人公の家庭だ。この温かな家庭で育てば、なるほど花笑のような”超”のつく真面目で誠実な人間になるだろうなあと思う。いつも本を読んでてちょっと気弱そうなお父さんと、ワインが好きでお父さんより豪快そうだけど、夫を愛していてちゃんとお父さんを立てているお母さん。そしてそして、とぼけた顔つきとだらけた姿勢で、映っただけでなごませてくれるブルドッグのマモルくん。帝江物産と同じく、いまどきこんなに愛と信頼に溢れた家庭はなかなかないだろうなあと思う。


少し前にフジテレビのヤングシナリオ大賞の記事で、「普通はもういらない」と落していったという記述を見かけ、私の思いとは違うなあと感じた。奇をてらったり、濡れ場を盛り込んだり、旬のタレントをつかったりという手段を使わなくても、いい作品は生まれる。いやむしろ現実の社会が事件にしろ恋愛にしろ「なんでもあり」の時代になり、特殊撮影の技術なども高度なことができて当たり前になってしまった時代だからこそ、普通の話が描き方によってはとんでもなく魅力的になるのではないだろうか。

確かに視聴率の数字を見ると、残酷な殺人が起こるものやドロドロの恋愛、不倫ものが上位に行くことが多いし、今期も現実離れしたフリーランスの医者の話が一位になっている。現代はネットのレビューサイトやツイッターで話し合うこともテレビの楽しみ方の一つになっているので、話題になるようなものはいちおう見る、という人も多いだろう。しかも遅れずに話の輪に入るには、リアルタイムで見なければならない。いきおい奇をてらったものの方が話題になり数字は取れるかも知れない。


今期のこの「きょうは会社・・・」は視聴率も健闘していて嬉しい。もちろん主人公を演じる綾瀬はるかさんの魅力や、相手役の福士蒼汰くんのカッコ良さ(時代劇シーン以外、キュンキュンものです)も貢献しているのだろう。また、ネットのレビューでは「入浴シーンが狙い過ぎであざとい」との評もあり、そうしたテクニックが奏功している部分もあるのかも知れない。けれども、とにかくこれほど平凡な物語を丁寧に描くだけでも、ちゃんといいドラマは作れ、視聴者の満足度も高いということが証明されたことは私には嬉しいことだった。


この作品の成功で、少しでもテレビ界の良心(そんなものがあるとしたら、だけれど)が戻ってくれればいいのだけれど・・・。



台本に取り組むマモル  (Windypost.comのサイトよりお借りしました)