よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

仲良し夫婦の心地よい物語『春子さんの冒険と推理』柴田よしき著

この1年だけでも、どれだけのカップルが不倫で話題に上っただろう。だいたい不倫なんて当事者だけの問題で、ニュースとしての価値などあまりないと思うのだけれど、需要度が高いのか暴きたがる出版社あり、テレビは呆れるほど追っかける。

 

うんざりするようなニュースの多い現世を忘れ、なんとも気持ちの良い夫婦の物語を読んだ。主人公はもと看護師の春子さん。プロ野球二軍選手の園田拓郎と結婚し、アスリートの妻を全うするため専業主婦になる。

 

プロ野球選手も一軍ならば年俸も高額だし、奥様はもと女子アナウンサーとかモデルとかタレントと、たいてい美人と相場が決まっている。けれどもこの夫婦はシーズンの終わりが近づくと、戦力外通告をされないかと心配する夫と、ごく平凡な妻のカップル。

 

しかし夫の拓郎は誠実そのものの人物だし、春子もいつも夫を第一に考え、同性の友人との付き合い方にも誠意があふれ、まさにいつも春風が吹いているようなのどかでほほえましいカップルだ。

 

夫の仕事を除けばじつに平凡な園田家の周囲で持ち上がる、ちょっとした事件や謎。たいていの人がへ~とは思ってもさして気にも留めず流してしまいそうなことに、春子さんはまじめに向き合っていく。そして推理を働かせて解決する。

 

一般的なミステリーと比べれば、派手さも奇抜さもない事件ばかりだ。春子さんの謎解きの次第も、買い物しながらだったり料理しながらだったりの、のどかなものだ。でも、それがこの物語の魅力でもある。

 

平凡でも毎日心を込めて誠実に暮らす気持ちよさ。人を思いやる温かさ。それはもちろん周囲の人を救っていくのだけれど、その人自身にとっても、結局そうしたことが幸せをもたらすのだ。

 

そんなのほほんとした春子さんが、様々な人とかかわるなかで、夫第一に考えていたのは本当に夫のためになることなのかという疑問を感じ始めたところで物語は終わる。作者は続編を書きたそうで、読んだ私は、この素敵な夫婦の今後もぜひ見守りたいという気になっている。

 

 

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