その後の『スーパーローカルヒーロー』
去年のちょうど今ごろ、私は映画『スーパーローカルヒーロー』の自主上映会に向かって走り出していた。スタンディングで様々な団体と関わり、多くの人と知り合った今なら大分事情が違っていたかもしれないが、あの頃の私はまだ大した人脈もなく、目標50人の小さな映画会でも本当に心細く、ドキドキしながら取り組んだ。
SPYBOYさんの素晴らしいレビューに感動するあまり、あとさき考えずに走り出すという暴挙に出てしまったのだけれど、幸い友人知人の協力を得て目標を上回る方に観ていただくことができた。いろいろトラブルも発生していっぱい冷や汗もかいたけれど、貴重で、素敵な経験をすることができた。
このたびあの映画の田中トシノリ監督からメールが届き、ちょっと懐かしくなってこんなことを思い出した次第。
以下、監督からのメール
みなさま、いつもありがとうございます。
映画『スーパーローカルヒーロー』監督の田中トシノリです。
いかがお過ごしでしょうか。
公開から1年10ヶ月が経ち、
おかげさまで世界5カ国、全国114カ所で上映されました。
その過程で見えてきたこと、
映画では伝えきれなかったこと、
そしてこの広がりをより良いものにしていきたいという想いから
1冊の本が出来ました。
タイトルは
『スーパーローカルヒーロー
〜3.11のその後。ぼくらの未来はぼくらがつくる』。
少し長いですが、以下に本への想いを、
本書の「はじめに」から抜粋します。
ーー
映画『スーパーローカルヒーロー』に続いて、
なぜ僕が本をつくったのか
3・11が起きるまで、僕という人間は眠っていたのかもしれません。
何をやりたいのか、何をすべきなのかが分からず、誰かの真似のような生き方をする20代を過ごしました。自身へのいらだちや周囲からのプレッシャーから逃 げるようにイギリスに留学し、映像の世界に出会い、ようやく自分の進むべき道が見えたような気がしていました。しかしそこには、「何のためにするのか」 「何を表現したいのか」という哲学が欠けていました。心の底から納得できるもの、充足感を得られるものがないままでした。
そんな矢先の3・11。午後2時46分に東北を襲った大地震は、地球の裏側まで響き渡り、早朝のロンドンにいる僕を目覚めさせたのです。
それまで僕は、「原発」のことも「放射能」のことも考えたことがありませんでした。海外の仲間たちから日本の政治や歴史について、あるいは自分の出身地である「ヒロシマ」のことをたずねられても、何も答えられませんでした。
震災を機にロンドンから広島県尾道市に帰り、自分が今なすべきことは何か、真剣に向き合い始めました。そしてある日、ちょっと変わったオジサンと出会いま す。以前の僕なら気にもとめなかったであろう無愛想で要領の悪いそのオジサンは、どこにでもいそうでどこにもいないオジサンでした。
目の前の問 題に他人事ではなく自分事として取り組み、何の見返りも求めず、ひたすらまっすぐ突き進むオジサン。「ヤボ」な僕はその「粋」な生き方に、いつしか惹きつ けられていました。と同時に、さまざまな問題の本質が、じつは自分のとても身近なところにあることにも気づかされていきました。
全国上映となった僕のドキュメンタリー映画『スーパーローカルヒーロー』は、そのオジサンの後ろ姿から学んだことを映像で表現したものです。「ヒーローは特別な誰かなんかじゃない。自分自身がそうあるべきなんだ」ということを確信しました。
本書では、『スーパーローカルヒーロー』が誕生するまでのいきさつと、日本をはじめ海外で上映していくなかで見えてきたこと、91分の映像だけでは伝えきれなかった想いをつづりました。
映画を観た人たちが寄せてくれた感想から浮かび上がってきたキーワード、
「家族のあり方」
「3・11後の生き方」
「あたらしいヒーロー像」
「これから自分のすべきこと」
「音楽の本来の役割」
これらをもう一度かみしめて、何かをみなさんに投げ返したくなったのです。
つたない文章ではありますが、映画とあわせて本書に目を通していただけたら、こんなにうれしいことはありません(映画『スーパーローカルヒーロー』の無料視聴案内が222ページにあります)。
すでに映画を観てくださった方には今一度「生きる哲学」について考える機会に、映画より本書が先という方には、僕という人間の変化を通して、あらためて3・11を振り返る機会にしていただければ幸いです。
ーー
本書詳細は下記、特設サイトでもご覧いただけます。
http://utashimasya.jimdo.com/
これから、次回作の制作にも取りかかっていきます。
引き続き、どうぞよろしくお願いします。
引用終わり
映画で紹介されたヒーロー「ノブエさん」は、相変わらず、福島のためのチャリティーコンサートを行ったり、保養や移住のサポートをしたりしている。
ノブエさんほど「スーパー」じゃなくても、世の中の一人一人の人が「ちょっとした」ヒーロー、ヒロインになれば、世界は劇的に変わる。反対に、みんながちょっとしたことを他人事(ひとごと)と思って見過ごしていると、力のある人たちがどんどん自分たちに都合の良い世の中にしていってしまう。
今日のスタンディングで、お子さんを抱っこしたお母さんが署名してくれた。多くの人が無視して通り過ぎる署名に、足を止めて名前を書くことも、ちょっぴり勇気が必要だ。このお母さんも立派に「ちょっとした」ヒロイン。
みんなヒーロー、ヒロインになりましょう!
昨日の「かなりの」ヒーロー、小室さんの新聞記事。
朝日新聞(デジタル版より)