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よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

『天の梯』-みをつくし料理帖完結編ー高田郁著

本、動画等感想

うっかりしていた。『みをつくし料理帖』の最終巻がもう出ているはず・・・と調べたら、なんと、もう2年も前に出版されていた。前回読んでからもうそんなになるのかと、時の流れの速さに驚く。

 

熱烈なファンの方々にすれば「何をいまごろ寝ぼけたことを・・・」と思われるだろうが、あまりに素晴らしかったので、時を失していても感想を書かずにはいられない。

 

こんなにも一文一文に愛情がこもっている物語があるだろうかと思うほど、作者のこの物語および登場人物一人一人、そして料理を作るという行為に対する深い愛情を感じた。これまでの9巻も良かったけれど、最終巻は濃縮もいいところ、心がふるえっぱなしだった。

 

全10巻5年間にわたって紡がれてきたこの物語には、ヒロインを取り巻く大切な人々だけでも随分多くの登場人物がいて、それぞれに様々な人生を背負っていることをずっと読んできた読者は知っている。

 

ご存じない方々のためにざっと解説をすると、ヒロイン澪(みお)と野江(のえ)は幼馴染、少女の頃の大阪の大洪水でともに両親を失い、離れ離れになってしまう。かたや吉原の伝説の花魁となり、かたや生まれ持っての料理の才で身を立てながら、いつか苦界に沈んだ友を救い出し、再びともに自由に生きられる日を夢見る。

 

そうしたなか、周囲に現れる善意の人々や、澪の料理の腕をねたんで陥れようとする輩も現れ、それぞれに思うに任せぬ過酷な運命が展開していく。

 

この最終巻でも、さらにつらい試練に遭遇するひとたちもいるのだが、その新しい問題も、またこれまでの9巻のなかで残してきた問題も心のしこりもなにもかも、みごとなまでにきちんと収斂していく。そのかたの付け方も、ただもう見事!というほかない。

 

今までの巻は処分してしまったのだけれど、この最終巻だけは手元に残しておこうと思う。いや、この巻を読んで、あらためてもう一度最初から読み直してみたい気持ちになり、全て残しておけばよかったと軽い後悔がある。

 

どの本も巻末に、物語に登場する料理何点かの調理法が載っている。物語の舞台である江戸時代の材料、調味料や道具で作れるレシピになっている。全て著者が何度も試作して納得のいった方法とのこと。最終巻にはさらにおまけで、物語中でもたびたび話題になった江戸時代の料理番付が綴じ込みになっていて、しかもその内容をよく見ると、登場人物たちのその後が垣間見えたりする仕掛けになっていて、どこまでも心憎い。

 

ファンの熱烈な要望で、いずれ登場人物たちの後日譚として1巻が出されるらしいので、楽しみに待ちたい。

 

 

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