よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

何気ない日々にもドラマはある『ちゃんぽん食べたか』

昨夜が最終回だった。故郷長崎で思いがけなく開催の運びとなった「グレープ」のコンサート、雅志と古田の二人がステージに歩き出したところで終わった。客席の入りも客の反応も何も見せず、プツンと終った。

 

でもそれが心地よい余韻となる終わり方だった。この後の二人の活躍は充分世に知られるところだし、『かすていら』『ちゃんぽん食べたか』と良作が2作続いたので、ひょっとしたらまた長崎の食べ物(次は何だろう?)関連の題名で三部作になるのではないかと期待も抱かせる。

 

夏ドラマは各局ともさんざんで、『花咲舞・・・』のような安易に二匹目のドジョウを狙った(しかも最初のシリーズとてそれ程名作だった訳でもない)ものが視聴率ではトップで、ほかには二桁行くものがほとんどないらしい。

 

評論家がサスペンスにしろラブストーリーにしろ、種が出尽くして新鮮味や意外性を出すのが難しいなどと書いているのも見るが、『ちゃんぽん・・・』など最初から最後までそれほど大した事件も意外な展開もない。まして現在も大活躍中のさだまさしさんの自伝なのだから、結末も分かっているようなものだ。

 

けれどもこのドラマは9回ずっと楽しく見ることができた。むしろ強引な展開や無理なつじつま合わせがない所に好感が持てた。何気ない日常もしっかりした脚本や演出があって、細部まできちんと丁寧に作ることで、なんでもない場面のひとつひとつも見るものを楽しませ心を温かくしてくれた。

 

昨夜の最終回に散りばめられた回想シーンは、往々にして時間稼ぎになりがちなことも多いなか、このドラマではとても効果的に使われていた。特に雅志の子供時代の『かすていら』での映像は、懐かしい時代の長崎の美しい風景をバックにしたものばかりで、詩情があって胸が締め付けられるようだった。

 

登場人物もみな温かく描かれていて、さださんが特別に良い人間関係に恵まれたのかも知れないけれど、温かい目を通して書かれた物語だからなのかも知れない。さださんは人をこういうふうに見る、優しい人なのだろうなと思う。だから生み出される楽曲も優しく心に沁みる作品になるのだろうなと思わせられる。

 

悲しい運命や、主人公に冷たく当たる人など登場しなくても、十分良いドラマが出来上がるというお手本のような作品だった。『64』や『限界集落株式会社』やこのドラマのような良心的な名作が作れるNHKが、看板的なドラマや報道番組で驚くほど質の低い仕事になってしまうのはなぜなのだろう。

 

確かに上に挙げたドラマはどれも数字としては良かったとは言えないだろうが、受信料で成り立っているNHKなのだからこそ、民放のように数字ばかり追っかけないで見るものの記憶に残る名作を作って欲しい。

 

このドラマに関してちょっとだけ苦言を呈するとすれば、主人公が東京で下宿している大家の息子の一人を、なぜ芸人に演じさせなければいけなかったのかという点だ(その芸人さんを嫌いではない)。

 

どうもNHKはお笑い芸人大好きで、総合でもEテレでも猛烈に出演させている。「数字を持っている」と考えているのか、何かほかに理由があるのか知らないが、いろいろな劇団に下積みで知られてはいないけれど実力はあるという役者がたくさんいるのではないだろうか。バラエティーは仕方ないとしても、ドラマには役者を使ってほしい。

 

今を時めく若手男優窪田正孝さんは、6年前にNHK土曜時代劇(現在この枠はない)で主役の若き日の尾形洪庵を演じていた。見たことない俳優さんが主役をやってるなあと思っていたら、その後同じくNHKの『下流の宴』でナイーブな高校生役を演じ、驚くほどの演技力を見せつけ現在の活躍に至る。

 

福士誠治さんも斎藤工さんも、あまり名前が売れていない頃からNHKでは主役や準主役を演じていた。こういうことができるのもNHKならではだろう。若い才能や、長い下積みで苦労している演劇人に日を当ててやってほしい。 

 

 

 

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『かすていら』の頃(昭和30年代、長崎ではなく愛知です)の私と愛犬チェリー。

 

 

追記 今日もスタンディング参加します!