よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

重松清著『哀愁的東京』

先日地区市民館に行ったときこの本を見つけ、重松さんの本を読んでみたいと思っていたので借りてみました。ドラマ『とんび』がNHKもTBSのものもとても良かったのでどういう作品を書く方なのだろうと興味がありました。

9編の短編からなり、全編を通すとまたひとつのまとまった話になるようにできています。主人公は一時は賞までとった絵本作家でありながら、あるできごとがきっかけになって絵本を書くことができなくなってしまった男。現在はそれまで補助的にしていたフリーライターの仕事で食べてはいるが、妻と娘はカナダで暮らしていて心の距離はもっと離れていそうな状況にいます。

主人公もかなり寂しいけれど、各章の登場人物もそれぞれ寂しい人ばかりです。フリーライターとしての仕事でそれらの人々と関わりながら、主人公の絵本の熱烈なファンという担当の編集者の女性の明るさにも助けられながら、絵本を書けない自分から目を背けずに向き合っていくようになります。

寂しくせつないお話が多いのですが、主人公がすさんでしまっても不思議ではないような状況ながらどこまでも優しく(それは強さでもあると思いますが)、それぞれの話に登場する人物も魅力的に描かれていて、悲しい話が多いのですが不思議に気持ちが暗くなりすぎることなく読めました。題名が少々センチメンタルでは?と感じましたが、それも最後まで読むとこの五文字熟語?の意味が分かり味わいが深まります。

重松さんの他の本も読んでみたくなりました。