よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

これぞ江戸のB級グルメ?

七日間のお正月休みももう最後の一日です。新年早々風邪をひいてしまい、初詣にも行かず完全な引きこもり正月となりました。ただ、感染したのはおそらく大晦日の墓参りの折だと思われます。(よって去年のひきおさめ、と思いたい)31日の夜喉が痛くて(私の風邪は喉から・・・銀のベンザ?)アレレと思っていたら、案の定元旦は微熱っぽく、夜には38度。普段体温低めの私は7度で熱を感じ、8度はもうかなり辛い状態です。休み明けに体調不良で仕事を休むのは自己管理能力の欠如のようで情けないので、なんとしても正月中に治さねば・・・と、なるべくしっかり食べてゆっくり休むことをこころがけ、テレビとパソコンと本とで引きこもり正月とあいなりました。


今年は孫たちが来られないと分かっていたので、前もって買っておいた本の一冊、『八朔の雪ーみをつくし料理帖』を読みました。

おもしろくて一気に読んでしまいました。まず幼いときに水害で両親をなくしたというヒロインの設定に、おそらく著者の思惑とは別のところで妙に現実感や親近感を覚えてしまいます。そしてみなしごとなりお腹をすかせたあまりジャン・バルジャンのようになったところを料理屋の女将に救われて奉公しながら成長します。天性の並外れた鋭い味覚を店主に認められ、女には許されなかった板場に入れてもらうようにもなるのですが、不幸が重なってその料理屋も店主も失い、今は江戸の裏長屋で命の恩人の女将の面倒を見ながら蕎麦屋で働いているという設定です。そこからヒロインが持ち前の料理の腕で運命を切り開いていくお話が紡がれていきます。

好評シリーズで現在6巻まで出ているようですが、第一巻のこの『八朔の雪』には冒頭の牡蠣鍋に始まって、さまざまな料理が出てきます。そのひとつひとつのおいしそうなこと!たしか中学校の社会科の本で、徳川家康の食べていた食事として、お膳に乗った料理の写真を見た記憶がありますが、これが天下を取った将軍の食事?とその質素さに驚いた記憶があります。この物語の舞台1810年代あたりの江戸では、庶民でもこんなおいしそうなものが食べられるようになっていたのかと驚きます。

料理の魅力と並んで読むものを惹きつけるのが、江戸の庶民の人情です。「雲外蒼天」の相を持つというヒロイン澪は次から次へと困難に出合いますが、周りの人々の愛や情に助けられて乗り越えていきます。出てくる人物一人ひとりがきちんと描かれていますが、とりわけ長屋のお隣さん、大工の伊佐三夫婦は魅力的です。みなしごをひきとって愛情いっぱいに育てていて、それをまったく当たり前のことのようにしています。澪の使う流しが低くて身体に負担がかかっていることが分かると、つぎに俺の女房が手伝う時使いやすいように、勝手に女房のために直すのだから御代はいらねえ・・・ってカッコ良すぎでしょ伊佐三さん!

作中ヒロインが創作して評判を呼ぶ料理のレシピが巻末についているというサービスの良さ。ぴりから鰹田麩、ひんやり心太、とろとろ茶碗蒸し、ほっこり酒粕汁。ヒットするとすぐ江戸随一の三ツ星高級料理店がまねをして客を奪うほどなので、B級と言っては申し訳ない、味としては十分A級なのだと思いますが、庶民の蕎麦屋、それが付け火で焼かれたあとは屋台で売るということで、これはまさに江戸時代のB級グルメじゃない?と思った次第です。