よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

居酒屋もへじ

昨夜のテレビ番組の感想です。「居酒屋もへじ」。とても心がほっこりするいいドラマでした。かねがね私は家族とはともに暮らす人であり、情は近くにいて世話を焼いたり焼かれたりすることではぐくまれるもの、血の繋がりにこだわることはないという考え方なのですが、まさにそうした家族を描いたドラマでした。芸達者な俳優さんのいきピッタリの演技に、2時間すっかり引き込まれて視聴しました。

水谷豊さんは刑事のときのクールな右京さんとは対極の、熱くて情にもろい下町の居酒屋の親仁「もへじ」を見事に演じていました。また訳ありの酔客を演じた松坂慶子さんもぴったりのキャスティングでした。美人は冷たい印象を与えがちですが、松坂さんは画面に映るだけでほんわかとあったかさが伝わってくるような、素敵な女優さんになられました。役名が「ようこ」で、居合わせた客にどんな字を書くのかと聞かれて、「太陽の陽子さんよ」と答えたのには笑いました。「おひさまというより北風」などとネット上のレビューで揶揄されている某局の陽子さんを皮肉ったのかしらと勘ぐってしまいました。確かに松坂さんの陽子さんはひなたのあったかさが感じられる陽子さんでした。

また他人でありながら水谷さんの家に同居(居候?)する「じっちゃん」を演じる桂文珍さんの歌う鼻歌が、「これも愛、あれも愛・・・」と若かりし頃の松坂さんの大ヒット曲。これはひょっとしたら文珍さんのアドリブなのでしょうか。遊び心いっぱいで楽しませてくれます。

もへじさんの居酒屋のお客さんもよく見る人やら懐かしい人やら。奈良岡朋子さんの喫茶店に、過日多くもらいすぎたおつりを返しにきたということで、ほんの1シーン出演の石坂浩二さんや、エンディングのバックに流れる歌は佐良直美さん(益々磨きがかかった素敵な歌声でした)と、60台以上の視聴者には嬉しい限りのサービスでした。

そしてなんといっても私の心に一番残ったのは、「人は自分のためには生きられないが、誰かのためになら生きられる」という、もへじさんが傷心の陽子さんを励ますために言った台詞です。いま世の中には悲しい人苦しい人がいっぱいいることと思いますが、ひとりでも多くの方にこの言葉が届くといいなと思います。

魚河岸からの帰り道、池のほとりを満開の桜が彩る美しい景色を背景に、もへじさんが自転車を走らせるシーンがあるので、3月の終わりか4月の初めには撮影していたものと思われます。あの震災からまだ間もない頃に、おそらく被災された方々の苦しみ悲しみに寄り添うという思いを持って企画されたのでしょう。あまりの悲劇を目の前にすると、なんと声を掛けたらいいのか途方にくれてしまいますが、こういう形もあるのだな、スタッフ、キャストのみなさん、いい仕事をなさったなと思います。携わる人間に心や志があれば、テレビってまだまだいくらでも素晴らしいことができるんだなと実感させてくれたドラマでした。