よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

スカッと爽やか!『任侠学園』

 

梅雨時の憂鬱をスッキリ爽やかに解消する本を・・・とご紹介しようと思っていたら、天気の方がひと足先にスッキリしてしまった。

 

警察小説で有名な今野敏さんの任侠シリーズものだ。『隠蔽捜査』やボディガード工藤を主人公にしたハードボイルドものと違って、気楽に楽しめる。以前『任侠病院』を読んで痛快で面白かったが、作品としてはこちらの学園の方が先に出版されている。そもそもこのシリーズは『とせい』という作品から始まったそうで、それは未読なので私は新しい方から遡って読むことになりそう(『とせい』もぜひ読みたい)だ。

 

舞台は潰れかかった私立高校、活躍するのはこのシリーズでおなじみの今や絶滅危惧の昔気質のやくざ、阿岐本(あきもと)組の面々。相変わらず組長は飄々としていなせで、代貸(だいがし)の日村は心配性だけれどしっかり弟分たちを掌握している。個性豊かな子分たちは今回少々出番は少なめ。

 

文武どちらもパッとせず、そのうえ面倒な親たちに骨抜きにされて、校長以下まるでやる気のない教師たちとガラスは割れ校舎は落書きだらけの荒れ果てた学園に、なぜか阿岐本組の組長が理事長として乗り込むことになる。

 

教師や生徒や親たちはデフォルメはあるけれど、結構現代の学校というところが抱える問題をうまく描いている。病院の時もそうだったけれど、改革策として組長がすることは幾昔か前まではごくごく当たり前であったことだ。自分たちの学ぶ校舎や校庭をきれいにする。生徒が先生を尊敬する。保護者は学校を信頼し先生に敬意を持つ。教師は生徒に情熱を持って向き合う・・・。

 

現実はそんなに都合よくいかないよという部分もあるけれど、なにせ高校の理事長がヤクザの親分というフィクションの世界だ。あり得ない設定だが、もしもこんなことになったらこんな風に運ぶかもしれないなと、心地よく騙されすっかり爽快な気分になる。

 

そして冒頭から学校なんて嫌だ嫌だと愚痴りつつ、いつしか高校生たちと真正面から向き合い、心を通わせ、引き上げる際にはちょっと後ろ髪引かれてしまう代貸の日村には、どうか幸せになってね・・・とエールを送りたい気分になっている。こんなカッコイイ組長やヤクザなど現実にはいないのだろうけど・・・。

 

あり得ない設定はちょっとしたことでサーッと覚めてしまうこともあるが、今野さんは読者を心地よくフィクションの世界に遊ばせて、スカッと爽やか(昔々のコークの謳い文句)な読後感をプレゼントしてくれる。雨続きで外出もできず気がめいるようなときに手にすれば、気軽にササッと読めてスッキリすること請け合い!

 

 

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