よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

『クローズアップ』今野敏著、と・・・。

テレビ局の報道部記者布施と警視庁の黒田刑事を中心とするシリーズの3作目の作品。長年の与党から政権交代で野党第一党となった政党の大物政治家と、反社会的勢力の癒着の闇を暴くストーリーは、実際にもこんなことはあるかも・・・と思わせるに十分なリアルさだ。

どちらも強い正義感の持ち主ながら、対照的ともいえる主人公二人の人物造形が魅力的で、映像化するとしたら誰に演じさせたらぴったりだろうなどと想像しつつ読んだ。また今回は狂言回しの立場の黒田の相棒である若い刑事谷口も、先輩の「熱さ」にウンザリしながらも次第に彼の真摯な仕事ぶりに敬意を感じていく様子など、好感の持てる人物になっている。

それにしても、敵対する政権党のトップを失脚させるために、卑怯な手を使ってマスコミを遠隔操作しネガティブキャンペーンを仕組むという話には、妙に現実味を感じる。この間女性閣僚が相次いで辞任に至ったことなども、対立政党どころか、身内で大臣の順番待ちをしていたおじさま方の「あんな嘴の黄色いヒョッコの女どもが、ヘン、チャンチャラおかしい!」という妬み、嫉みの矢が後ろから飛んできたのでは?などと私なんぞは考えていた。


これまでも有望な若い人が出てきて世間の人気を集めると、やがてつまらないスキャンダルやちょっとしたお金の問題が暴かれ失脚することがあった。大きな力(お金のあるところ?)を敵に回すと怖い、駆け出しの政治家をひねりつぶすくらい朝飯前なのだろうという気がしたものだ。

先日のオランダ国王のレセプションのニュースと同じで、どの部分を取り上げ、どの部分を取り上げないか、で内容は随分違ったものになる。一枚の写真も、どの部分を切り取るかで、与える印象がすっかり変わることもある。報道機関が意識的にピックアップすることもあれば、すでに切り取られた断片を与えられて、無批判にそれを流し、





と、17日夜、ここまで入力した時、私のスマホが着信を知らせる音を立てた。時刻は夜の9時を少し回ったところ。急いで出ると母の施設のスタッフの方で、「たった今、〇〇様の呼吸停止を確認しました」との連絡だった。

すぐに母のもとに走った。

ベッドの母は、6時間前にマッサージを終えて帰る時と変わらぬ顔色で、安らかに目を閉じている。頬に触ってみても温かく、眠っているとしか思えない。でももう心臓は打っておらず、口の前に手を当てても呼吸はない。スタッフの方が定時のバイタルチェックに来て、なかなか血圧が取れないで手間取っているうちに呼吸が停止したそうなので、眠ったまま何も苦しまずに逝けたのだと思う。

日曜日に私がマッサージに行ったときには、それまでと変わらぬピンク色のきれいな足だった。それが月曜日にマッサージの方と訪れると、紫色になっていた。たった1日でこんなにも変わるものかとびっくりするほどの変わりようだった。

それでも呼びかけると反応は良く、「娘よ、〇〇〇よ」と話しかけると、これまでは名前どころか、自分の娘というのも解らないらしくぼんやりした目を向けてきたのが、その日はしっかり強い光の目をまっすぐ私に向け、そうして何か言いたげにしきりに口をもぐもぐさせた。

ああ、あれはきっと私にお別れを言いたかったのだな・・・と今なら分かる。きっとあの瞬間母の頭の霧が晴れ、久々に私を認識したに違いないと思う。

母はきっと、私が携帯電話を持って準備ができるのを待っていたのだ。もういい加減父の所へ行きたくて首を長くしていたのだろう。だから私の準備が整うや否や、「やれやれ、じゃあね・・・」と天国へ旅立って行ったのだろう。

お母さん、長いこと頑張って生きてくれてありがとう。32年ぶりに再会するお父さんと、積もる話をしてください。