よんばば つれづれ

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『プロフェッショナル仕事の流儀』井本先生

「子供たちのやる気を引き出す教育」というので興味を惹かれ、録画しておいたものを見た。鎌倉の中高一貫校の数学教師、井本陽久先生の授業風景が紹介された。

 

「できる・できない、正解・不正解に意味はない。大切なのは、自分の頭で考えること」と断言する井本先生。授業では教科書を全く使わず、ノートも一切取らせない。使うのは、生徒の(間違った)解答を元に作られたオリジナルプリントのみで、しかも1時間でたった1問。答えすら出ないまま授業が終わることもあるという授業である。

 

番組で紹介していたのは、任意の二つの小さな円と一本の直線を描き、この3つに接する円はいくつ存在するか、という問題だった。生徒たちは一人で、あるいは他の生徒と一緒になって、授業終了まで夢中になって問題と取り組んでいた。

 

2019年の春、井本先生は27年勤めてきた学校の正職員から非常勤講師になったのだそうだ。授業数を減らし、その分、進学校だけでない様々な生徒のために学外に立ち上げた教室と、22年間続けてきた児童養護施設での指導に時間を割くためだという。朝から夜まで、異なる学びの場を飛び回りながら、思い描く教育を模索している。 変化の激しい、先の見えない時代。生きていく上で、本当に大切にしなければならない学びとは何かを考え続けている・・・。

 

実際に子供たちの顔はいきいきと輝いていて、考えることが楽しくてたまらないという雰囲気だった。でも、こうした変則的な授業が、指導要領でがんじがらめにされた公立校で許されるのだろうか。また、1時間の授業のために10時間もの準備の時間が必要になるというのだから、雑務に忙殺される公立校の教師には、そうした点からも難しそうだ。

 

この他に私が気になったのは、この「考える」授業が成立するためには、考えるための道具となる、四則計算・公式・図形の性質や定理などの基礎知識が必要だが、そうしたことを教える授業の場合は、どんな風にしているのだろうということだ。

 

スポーツでも、競技の技術の練習そのものは楽しくても、体力づくりの基礎トレーニングは面白みに欠けると感じる人が多い。勉強でも同じようなことが言えて、基礎を覚えるのは楽ではない。九九すらつまずいたままの中学生や高校生もいるのだ。できることなら、そちらを扱った続編も作っていただきたいなと思った。

 

しかし、どんなに優れた指導者がいて、それを取り入れたい教師たちがいても、まずは1学級の子供の人数を減らしたり補助の先生を入れたりして、教師の時間とエネルギーを確保しなければ、絵に描いた餅にしかならない。

 

 

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「テレビのオファーを受けたのは、お嫁さん候補が見つかるかもって気持ちもあったからでしょ」と、生徒にツッコまれていた井本先生。