『まだ結婚できない男』さん、「通り一辺倒」ってどんなこと?
阿部寛さん主演の『結婚できない男』は、かつて人気ドラマだったらしい。最近午後の時間帯に再放送されていて、それで初めて見ている。
今季、13年ぶりにその続編がスタートし、話題になっている。旧作がまだ終了していないが、新しいドラマの第一回の録画を見た。
内容や総入れ替えになった女優陣についての感想はともかく、主人公の変人だけれど売れっ子の建築家が放った一言が、頭から離れない。その日主人公は建築に関するシンポジウムで講演することになっていて、かつてはアシスタントとして働いていたが、13年たった今、事務所の相棒となっている若い建築家が、直前になって出かけようとする主人公に予定を忘れていないか確認する。
それに対して主人公が面倒くさそうに、「(どうせシンポジウムくらい)通り一辺倒な話をすればいいんだろ!」と投げやりなせりふを吐いて事務所を出ていくのだ。
「通り一遍」であるべきところを、「一辺倒」という言葉と混同して「通り一辺倒」という造語をあててしまった、ありがちな間違いだ。主演の阿部寛さんが言い間違えたのか、脚本家の尾崎将也さんがこう書いていたのか。おそらく脚本がこうなっていたのだろうと思う。
犯人に会ったことがあるかを刑事が関係者に聞くシーンで、「〇〇にお会いしましたか」と言ったり、自分の子供や配偶者を救ってくれと弁護士などに頼むときに「どうか〇〇を助けてあげてください」と言ったりはもう日常茶飯すぎていちいち取り上げてもいられないけれど、さすがに「通り一辺倒」では意味をなさない。
ところで、今回この「一辺倒」を調べてみたら、この言葉自体もともと日本語にあった言葉ではなく、【1949年7月に、毛沢東が発表した論文中に「要向社会主義一辺倒」とあったことから、北村徳太郎(芦田均内閣の蔵相)が、国会で「共産党は向ソ一辺倒、政府は向米一辺倒である。中立こそ大事なのではないか」と質問演説。それが契機となって、「一辺倒」が昭和25年の流行語となった。】(NHK放送文化研究所のサイトより)という、流行語から定着した言葉なのだそうだ。
間違う人が多数派になれば日本語として定着してしまうかも知れないが、それでもやっぱり「通り一辺倒」は座りが悪い気がするので、どうか「通り」が付く場合は「一遍」で止める(字も違う)ということを、通り一遍に聞かず、心にとどめていただきたい。
誠意がなくうわべだけという意味の場合は、「通り一遍」の「一辺倒」で!
チュッチュはお母さんの指、一辺倒! byドリーム