『空の名前』 光琳社出版と角川出版の微妙な違い
『空の名前』は私のお気に入りの本だ。高橋健司さんの雲を中心とした写真がとてもいいし、添えられた文章を読むのも楽しい。以前友人が入院した時にもプレゼントしたのだが、今回姉にも持っていった。話していると、病院の窓越しに毎日たっぷり空を眺めるという言葉が出てきたので、やはりピッタリだったのではないかと思う。長い入院中に、この本と見比べてたくさん雲の名前を憶えるのも楽しいのではないだろうか。
私の持っているものは光琳社出版の平成8年第23刷のものなのだけれど、このあとこの出版社はつぶれてしまったようで、角川出版が引き継いで出している。したがって今回姉に贈ったものは角川版だ。
光琳社出版のものは細部まで非常に気が届いていて実に美しいが、角川に代わって値段は少々安くなったものの、残念なことに、中身も明らかに安っぽくなってしまった。
marcoさんが昨日のブログで本の印刷の文字色の違いについて書いていらしたが、この『空の名前』なども似て非なるものになってしまって、ちょっと悲しい。友人の時も今回の姉にも、見舞い用なので古本というのもどうかと思い角川版を贈ったのだが、私としてはもともとの繊細な美しさをぜひ届けたかった。
marcoさんが古書や初版本で読みたいと仰る気持ちがよく分かる。
この本のあと、姉妹編のように夜の空に関する写真を集めた『宙(そら)ノ名前』という本も出て、この二冊を並べると、背表紙に三日月(空)と満月(宙)が並ぶ意匠になっているのも心にくい。さらに『色の名前』というのも追加された。どれも本当にずっとそばに置きたいと思わずにいられない本たちだ。
もっぱら図書館で借りて本を読んでいる私が言えることではないけれども、良心的な本を出版している会社ほど経営が苦しくなってしまう現実は苦い。