よんばば つれづれ

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お上りさんの見た運慶展と東京

***昨日の続きで***

 

さて、大変な混雑の中での落ち着かない鑑賞で、しかもあとの予定が決まっていて時間的にも余裕のない悪条件のもとでの運慶展だったけれども、やはり見て良かったと心から思う。ニュースなどで人気の展覧会の大混雑ぶりなどを知ると、そんなにしてまで見たいのかしらと斜に見ていたが、やはり、百聞は一見に如かずだった。

 

もちろん本当に良いのは、それぞれの作品の本来置かれた環境で、静かにゆっくり対座することだろうが、今回の展覧会では、関東から関西まで20以上の寺や施設で保有しているものを一堂に集め、しかも親子三代にわたって系統的に(と言っても、そもそも運慶は一人で作品を作るのではなく、工房として取り組んだようだが)見せてくれるのだから、やはりありがたい。効率的に見られるのだから、少々味気なくなるのは当然の帰結だ。

 

国宝の無著・世親両菩薩の立像は期待にたがわず素晴らしかったが、私は有名な無著菩薩よりも、世の憂いを一身に負ったかのような世親菩薩の悲しそうな目に魅入られてしまった。

 

もうひとつ心に残ったのが、近年になって運慶の作と判明し、最晩年の作とされる「大威徳明王坐像だ。失われている箇所も多いし、20センチあるかないかの小さな作品だけれども、その小さな像から放たれる品格や迫力は素晴らしいものだった。

 

f:id:yonnbaba:20171116155733j:plain 鎌倉手帳(寺社散歩)さんのサイトより

 

それぞれの方がご自分の目で見て、ご自分の感じ方をなさるのが一番なので、運慶展についてはこの程度にする。

 

昨日書いた通り、もう思い出すのも難しいほど長く東京には行っていないし、しかもその直近の上京は、会社でレンタカーを借りて、関係する企業の新しいショールーム見学のためだったため、公共交通機関にさえ乗っていない。

 

そんなわけで、十数年ぶりか、ひょっとすると二十年ぶりくらいのお上りさんが、今回ほんの垣間見た東京で驚いたことを。

 

東京には、まだ肩と肩がくっつくような電車内での座り方があったということ。私が日常利用する豊橋鉄道渥美線では、たいていの場合、とても細い人なら十分座れそうなほど間隔をあけて座っている。かなり詰めていると思う時でも、こぶし大ほどの空間はある。友人と少し狭めの空間に座るときでもなければ、隣の人と体が接触することはほとんどない。東京ではラッシュ時には詰め込まれるだろうし、物理的な「人間のふれあい」は都会のほうが多いのではないかと思った。

 

その電車内の広告に、

毎朝5分、

ひげを剃るか

早く出社するかで

人生変わるかも。   

というのがあった。「Men's TBC」の広告だった。さすが都会だなあと感心した。田舎には、こんな熾烈なビジネスマンの競争自体がないし、近年は電車内の広告需要そのものがめっきり減っているらしく、鉄道会社自社や関連企業の広告が多いし、空きスペースも目に付く寂しさだ。

 

東京都は地図で見ると小さいけれど、いつも行くたびその広いことに驚かされる。たくさんの巨大なビル群、大きな公園や美術館などもいっぱいあって、そしてもっと驚くのは、そのどこにもものすごくたくさんの人がいることだ。田舎者の私は名古屋に行っても、毎日祭りのようだと感じるくらいだから、東京のにぎやかさはどうたとえれば良いだろう。

 

しかし、新幹線の中から高層ビル群を眺めて、ここに東日本大震災級の地震が来たら、日本はどうなってしまうのだろうと思わずにはいられなかった。最新の技術は地震の揺れをうまく逃がして建物は壊れないというが、どれもがそうした耐震性を備えているわけでもないだろう。先日テレビ放映の『シン・ゴジラ』を見たばかりだったこともあって、ついそんな心配をしてしまった。

 

思い切って出かけてみれば楽しくて、もっとこれからは気楽に遊びに行こうと思うのだけれど、前日の緊張感たるや、子供の自家中毒症状のごとく、本当に体に変調をきたすのではないかと思うほどだった。切符もチケットも事前購入しているわけでなし、いつでも取りやめにできるので、「ああ、やっぱりやめようか」という考えが頭をよぎった。旅慣れた人なら、南極か北極にでも出かけるのかというくらいの騒ぎだ(ひょっとしたらそれ以上?)。

 

姉も喜んでくれたし、自分でも楽しかったし、とても良い東京行だった。

でも、やっぱり、うちがいちばん!と思ってしまう出不精の私だ。

 

 

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豊橋スタンディング+(プラス)」と「じじばばの会」。