よんばば つれづれ

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『海賊女王 上・下』皆川博子著は400年後もめったにいないハンサムウーマン!

若い頃の読書ではむしろ翻訳物を好んで読んだけれど、近頃は一晩寝ると昨日までの筋や登場人物を忘れることもあり、カタカナの名前は覚えるのがなお大変ということもあり、外国が舞台の作品は敬遠気味だ。

 

それなのに、この作品は、そもそも上下巻がそれぞれ500ページ余りという大作であるうえ、巻頭の「登場人物一覧」に掲げられた人物だけでも上下それぞれ7、80人(重複する人もあるが)もいる。さらに種族名やら地名やらもこれでもかというほど出てくるので、カタカナの固有名詞が何百という数になる。

 

そのうえ、イングランドアイルランドの抗争がテーマであり、主人公は女海賊とあって、次から次へと戦闘場面が展開し、私の苦手な「痛い」(第一義的な意味での)シーンの連続だ。

 

始めのうちはこのふたつに苦しめられ、読み進むのを諦めようかとさえ思った。けれども、信頼する皆川さんの作品なのだからもう少し頑張ってみよう・・・と取り組むうち、上巻の半ばあたりではすっかり物語に引き込まれていた。

 

いままでアイルランドとイギリスの抗争をテーマにした映画や芝居をいくつも見て来たが、その根源は500年近く昔のこんな頃から続いていたのかと驚いた。

 

植民地政策で潤うスペインやポルトガルを真似て世界に乗り出そうとするイングランドは、大艦隊を持ち海路侵入するスペインを防ぐため、アイルランドを治めたい。アイルランドに比べ圧倒的に大きな国であるイングランドに屈する族長もいるが、誇り高く徹底して圧政と闘う部族も少なくない。

 

部族同士のつばぜり合いもあって血で血を洗うような激しい戦いが続く日々を、海賊女王グラニュエルのすぐそばで終生彼女を守り続けるアランの視点から描いた物語だ。この主人公二人の人物像が魅力的であるうえに、イングランドエリザベス女王(もうひとりの海賊女王と言える)を取り巻く美貌の寵臣や、それに取って代わろうとする者たちの、権謀術数の世界が絡む壮大なストーリーが展開する。

 

ヒロインのグラニュエルは男勝りの海賊の女王だけれど、美しさもとびきりだ。はるかに上の地位にある敵将でさえ、彼女と相対すると思わず跪いてしまいそうになるほどの艶やかな魅力を兼ね備えている。その女としての武器さえも、見事なまでに利用して男の武力の世界を突き進む海賊女王グラニュエルのようなハンサムウーマンは、四百数十年たった今もめったにお目にかかれない。

 

読む側でさえかなりのエネルギーが必要なこの大長編活劇が、80歳を超えた著者の手になるとは驚くばかりだ。皆川博子さん、これからもどんなお話を紡ぎ出してくれるのか、まだまだ目が離せない。

 

 

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やっと青空がのぞいた今日、けなげにまだ小学校の桜は結構残っていた。

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