よんばば つれづれ

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盲ろう者と介助犬

昼間、何を見るでもなくテレビをつけると、「盲ろう者」という言葉が耳に飛び込んできた。アメリカではかなり多くの盲ろうの人が、二重目的犬(二つの役割を兼ねる犬)の助けを受けて暮らしているのだそうだ。番組ではNPO法人を運営する盲ろう者の門川さんが、日本で初めて盲導犬ベイルと生活する様子を伝えていた。

 

何頭かの盲導犬の中から一番適性があると選ばれたベイルに、発声が健聴者とは違う門川さんの声に慣れさせたり、音で周囲の状況を判断できない門川さんのために、さらに特殊な訓練をして(訓練士も手話通訳者を通しての初めての試み)、門川さんとベイルの生活が始まった。

 

中途失明の門川さんは完全に視力を失った時、絶望で引きこもりのようになっていたが、ベイルの助けで一人でも恐怖を感じることなく外出できるようになり、NPOを始めて自分と同じような二重障碍者のために働くまでになった。

 

ところがある時期からベイルがうまく門川さんの指示に従わなくなり、生活に支障が出てくる。訓練士がいろいろ調べると、どうやら会社でベイルが仕事を離れているときに、手の空いている健聴者の職員がベイルを遊ばせてやっていることが原因らしいと判明する。健聴者との遊びの楽しさを覚えてしまったベイルは、門川さんを軽く見るようになったのだという。

 

それから門川さんもベイルをおもちゃで遊ばせたりして、再びベイルにとって「一番」の存在になり、問題を克服する。

 

考えてみれば当たり前のことなのだけれど、ともすると人間は盲導犬などの人間のために働く犬を、感心だという気持ちで見てしまいがちだ。でも、犬の方は自分が尊い仕事をしているなどとは思っていない。ベイルを遊ばせてやった職員は、けなげに仕事をするベイルをついねぎらってやりたいと思ってしまったのかも知れないが、犬のベイルは「門川さん、つまんない・・・」と思ってしまった。

 

盲導犬が利用者と過ごす期間は平均8年だそうだ。その8年のためにパピーウォーカーがいて、訓練士がいて、なかには脱落する犬もいて、やっと「一人前」になって8年の現役。人のほうは何十年も生きるのだから大変だ。さらに、リタイアした後の盲導犬の面倒を見るボランティアも必要だ。

 

こういうことを考えると、やはりある程度経済が発展して豊かな社会でなければ、こうした介助犬の育成などとうていままならないだろうと思う。アメリカでもイギリスでも、二重目的犬の育成組織がきちんとできているそうだ。かつては「ジャパンアズナンバーワン」と言われ、現在だっていちおう世界で3番目の経済大国だけれど、まだまだ日本は豊かではないのだとしみじみ思う。

 

 

今日も何気ないザッピングから、盲ろう者介助犬という、思ってもいなかった世界を知ることができた。これが私にとっていちばんテレビの捨てがたいところ。まあ、知ったからといってどうなるものでもないのだけれど・・・。

 

 

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