アルファブロガーちきりんさんが年末に推薦していた本。彼女の紹介で一気に注文が殺到したのか在庫が底をつき、手元に届くのに大分日にちが掛かった。
著者のロバート・アラン・フェルドマン氏は、ワールドビジネスサテライトのコメンテーターなどもなさっているのでご存じの方も多いかもしれない。16歳の時交換留学生として日本に来てすっかり日本が好きになり、その後大学で経済と日本のことを学んで国際通貨基金(IMF)で働いたのちウォール街に転職し、1989年末にモルガン・スタンレーMUFG証券の日本担当として赴任し現在に至っている。
ちきりんさんによれば、「日本人以上ともいえる深い愛情をもってこの国を見つめてきた氏の、日本経済への知見の豊かさと洞察の深さは、多くの日本人エコノミストのそれを遙かに凌駕して」いるそうだ。
読み始めてしばらくはなんだか結構現政権の政策を評価している印象を受け不愉快だったのだけれど、読み終わってみると日本の良い点も問題点も明快に分かり、どうすれば問題点が解決できるかも非常に明瞭に示されて頭がスッキリした。
経済学とは何かと訊ねられれば、「希少資源の最適な利用の学問」と答えます。さらに、その目的は、「希少性からくる争いを減らし、世界を平和にすること」と言えるでしょう。
なんと簡潔で明瞭で、そのうえロマンのある経済の定義。経済学なんて損得ばかり考えるおよそ夢のない学問だと思っていたのに、こんな風に表現されると人類の夢と希望に直結する、とても大事な考え方なのだと思える。
日本の強みは豊かな水と農地で、大変な潜在力を持っている。オランダは単位面積当たり日本の100倍ほどの輸出額を誇っているという。農地の集約化やIT化などを進めることで、オランダのような大農業輸出国になれる可能性を秘めているのだそうだ。なのになぜこの国には、農業を取り巻く話に希望や未来が感じられないのだろう。外国に比べ、弱くて守らなければならないお荷物の存在のような印象しか感じられない。もったいないことだ。
この他、アベノミクスの分野ごとの評価、エネルギー政策、労働市場、少子高齢化対策、地方再生と教育改革などについて書かれているが、どの分野の問題も、根本的には「いかに若い人たちの投票率が上がるか」にかかっているという結論に至る。
若い人たちが選挙に関心を持って、若い世代のための政策を実現する政治を求めなければ、いつまでたっても高齢者にばかり税金は使われ、国の借金も減らず、消費税は30%までも上げなければやっていけなくなってしまう。しかも教育に予算をかけないから人材も育たない。国力は落ちていくばかり・・・。
選挙制度の改革では、「参議院を二人に(もちろんこれは極論)」とか、「投票を権利でなく義務に」とか、大胆な案が示されている。投票を義務化するというのは私も以前から考えていたけれど、自分たちに都合の悪いことを議員たちが決める訳はない。若い人たちや、本気で国の将来を考える「責任感のある人たち」が相当強く求めなければ、話題になることさえないだろう。
本書の171ページに掲載されている、厚労省のデータ。
「年齢階級別1人あたり医療費、自己負担額及び保険料の比較(年額)」
このグラフの青い部分が医療費、茶色が自己負担額、緑が保険料。頭で分かっていても、実際こうしてグラフで見ると、いかに年寄りが得をしているか、若い人が損をしているか、一目瞭然。これは医療費だけだが、年金などもこのように見える化したら恐ろしいことになりそうだ。これでも若い人たちは政治に興味ないなんて言っているつもりだろうか。
この図では小さくて分かりにくいので、サイトで見ていただくと良い。
今日のスタンディングは金曜日ということで45人ほど。久々に賑やか。駅前の人通りも多く活気があった。週末で遊びに心が飛んでいるのか、私たちに関心を持ってくれる人はほとんどいなかったけれども。
私はこの本の影響もあって、
「既得権者の私たちが立っているのに、
若者たちよ、選挙に無関心でいいの?」
という新しいプラカードを書いて行った。
今日の国際交流コスモス会での初釜の様子