桐野さんの本だけに、初め私はとても緊張しながら読んでいた。
舞台は東京のベイエリアに建つ超高層マンション。
折りしも強風の日にヒロイン有紗は、物を置くことを禁じられているベランダに我が子の砂遊び用のプラスチックのバケツとシャベルを置いておいたため、シャベルが飛ばされ無くなっている。
もしかしたら、その風に飛ばされたシャベルが大変な凶事を引き起こす???
私の胸はドキドキし、頭の中では恐ろしい光景も・・・。キャ〜〜ッ!
なんて、思っていたけど、いくら読み進んでも、案に相違して「○○ママ」と呼び合うママ友の虚飾の世界が延々と繰り広げられていくばかり・・・。
そして、高級マンションで子育てにいそしむ恵まれた専業主婦たちにも、微妙なヒエラルキーがあったり、夫婦間に事情を抱えていたりすることが徐々に分かってくる。
有紗の夫はアメリカに単身赴任しているのだけれど、その裏には、彼女が一度結婚に失敗していて、しかも10歳になる男の子までいるということを、全く夫に話さないまま「デキ婚」に持ち込んでいたため、夫の心が離れ始めているという事情があった。
高層マンションでの妻子の生活費の仕送りは、一部夫の両親が負担しているのだが、義父は定年退職した身であり、義母がパートで働いて支払っていて、子供を保育園に預けて有紗も働いたらどうかと持ち掛けてくる。アメリカに話し合いに行くのであれば子供は預かると彼らは言うが、有紗は離婚を切り出した夫の方が来るべきだと拒否する。
やがて休暇をとって夫が帰国、夫婦の選ぶ道は・・・というようなお話だ。そこにママ友同士とその夫というドロドロの不倫話も絡んでくるやら、元キャビンアテンダント、リッチで恰好いいご主人がいていつもブランド品で身を固めている、みんなの憧れのママ友リーダーにどうやら秘密が・・・などという、私の苦手なお話であった。
よくよく見れば巻末に「雑誌VERYで連載されたものを加筆修正」とあった。ナルホド。VERYはまさに高級マンションで育児に励み、お受験に臨むようなママたちを読者とする雑誌だ。このあたりのストーリー展開や着地点が妥当なところなのだろう。
私には期待外れな読書となってしまった。