よんばば つれづれ

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新しい資本主義へ

アメリカのデモが広がっています。ヨーロッパでも若者を中心にデモが頻発しているようです。経済的な格差の拡大や失業が大きな問題のようです。ヨーロッパはフランスをはじめ多くの国で若年層(25歳以下)の失業率が20%を超えています。アメリカも9%と言われますが、若年層に限れば19%を超えるようです。日本は2010年の総務省の数値で全体が5.1%、若年層で9.4%です。世界的に見ても10%未満の国はあまりないようです。

昔々人間はどこの地に生まれてもみな自給自足で暮らし、貧富の差もありませんでした。多少手先の器用さで道具の出来がうまかったり下手だったりはあったかもしれませんが。食料もたくさん手に入れたところで保存ができなかったのですから、食べ切れなければ無駄にするだけです。余った物を保存する知恵が生まれ、それを今度はよその土地の別な余ったものと交換する知恵が生まれました。

農業で考えれば、始め人間の力だけで作業していたのが、牛や馬を使って作業が楽になり、やがてトラクターとかコンバインなどの機械を使うようになって飛躍的に作業は楽になりました。

食料が充分で人口が増えると、いろいろな道具も足りなくなり、忙しく働かなくてはなりませんが、産業革命でこれまた飛躍的に大量のものが作れるようになりました。

単純に考えれば、動物や機械を使うようになった分人間は楽になったはずです。効率的に働いた分自由な時間が増えて、ゆっくり思索したり遊んだりできるはずです。それなのに先進国ほど時に心を失うほど忙しそうにしているのはなぜなのでしょう。これはミヒャエル・エンデの『モモ』が取り上げているテーマです。この本の発表から40年近くたっていると言うのに、人々はあまり改革しようとはせず、世界は益々「時間泥棒」に時間を盗み取られ、経済格差は開きに開いてしまいました。

エンデは「時間泥棒」の灰色の男たちの正体をはっきりと書いているわけではありませんが、私はお金でお金を稼ぐ金融業などはこの最たるものではないかと思います。物々交換社会が広くなってしまったためにお金というものが生まれ、さらに拡大して金融業が生まれました。必要悪以外の何ものでもありません。それが世間の花形の職業で、額に汗して働く人の何十倍何百倍という収入になる社会というのが狂っているとしか思えません。

なぜこんなことになってしまったのか。やはり私たち人間ひとりひとりの心の中に答えがあるように思います。私たち自身がお金が好きで、お金をいっぱい持っているのはすごいこと!と思ってしまったから、ひとりひとりのその心が、「金融資本主義」などというモンスターを生み出してしまったのです。


このところスローライフなどという言葉も盛んに聞かれ、少しずつ人々の考え方が変化の兆しを見せ始めていましたが、日本はとりわけ東日本大震災で、生き方や価値観について考えさせられました。電力をどうしていくのか、これからも皆が真剣に考えざるを得ません。そうしたなか、近頃の日本の草食系と言われる優しい若者たちに私は期待しています。高価な車がステイタスとは思わない、出世より家族との時間を大切にしたい。覇気にかけるとか冒険心が足りないとか言う大人もいますが、何事も長所短所背中合わせです。今までハングリー精神闘争心の強いタイプが社会を引っ張ってきて、結果このような状況になったのです。儲ける事より人の助けになる仕事がしたいと、社会起業家を目指す若者も増えていると言います。


怪物を生むのも人間なら、新しい世界の扉を開くことができるのも人間です。さあ、みんなで次の時代へ行きましょう。「公益資本主義」というステージへ。お金に生ませた巨大な富を持っていても、そんなの全然カッコ良くないよ、世の中にどれだけ貢献し、どんな風に人々を幸せにしているかこそがステイタスなんだよと、多くの人が考えるようになれば世界は変わります。

原 丈人さんの『新しい資本主義』、『21世紀の国富論』などを読むと公益資本主義という考え方がよく分かり、また日本という国がこういう考え方で世界に範を垂れる大きな可能性を持っている国だということも分かり、嬉しくなります。