よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

ドラマ『パンとスープとネコ日和』から群ようこさんの『三人暮らし』を読む

先日Huluで久しぶりに『パンとスープとネコ日和』を見た。

 

やっぱり、心が穏やかになってとても良いドラマだと思う。主人公のアキコを演じる小林聡美さんはじめ、もたいまさこさんや光石研さんなど荻上監督の作品でおなじみの俳優陣もいいし、アキコが始めるサンドイッチのお店もシンプルで居心地良さそうだし、なんといってもサンドイッチやスープが断然おいしそうで、近くにあったら絶対行ってみたい。また、その店が立地するちょっと懐かしい商店街に流れる空気も心が安らぐ。

 

この物語の原作者は群ようこさんだ。群さんというと、私は音訳ボランティアをしていた時に、『都立桃耳高校 神様おねがい!篇』と『都立桃耳高校 放課後ハードロック!篇』のふたつの作品を手掛け、読みやすくて楽しいけれど、なんだか調子が良いばかりの軽い作品という印象が強く、自分の読書として手に取ろうとは思わなかった。

 

でも映像になると、映画『かもめ食堂』も良かったし、このドラマ『パンと・・・』も何ということもないストーリーなのだけれど、流れる雰囲気がとても良く、魅了される。製作スタッフの力量かとも思うが、やはり原作の力もあるのだろうなと思い、今回市民館の図書室で見つけた『三人暮らし』という作品を読んでみた。

 

『三人暮らし』のアマゾンサイトの紹介文に、

「一人は寂しい、二人は不安。でも三人暮らしならうまくいく。性格は違うし、びっくりすることもある。それでも買い物に家事分担、お財布や生活時間の約束事と、ちょっとした気遣いで、毎日はこんなに楽しくなる。一緒だけど独立した生活は、とても心地良い。独立したての若い女子、七十五歳過ぎて助け合いながら暮らす老女たち、帰る家のない娘の友達を受け容れてしまった母。十組十色の三人暮らしを描いた短篇集。」

とあるように、さまざまな組み合わせの女三人の十通りのシェアハウス暮らしが綴られる。

 

なかには、私には我慢ならないタイプの人物もいてイライラさせられるが、それでも、もともと私は「共に暮らす」というときに、あまり血縁にこだわらない考え方を持っているので、この短編集は示唆に富んでいた。

 

高齢の三人が一緒に暮らす『三人で一人分』は一番身につまされる話だったが、三人で助け合う暮らしの心地よさに浸かって、ひたすら質素倹約の生活になっていたことに気づき、そろって美容院に行きお洒落をして旅行に出かけるラストには、高齢のこの三人に祝杯を挙げたい気分だった。

 

83歳のシマが、日参する近所のお薬師さんで具合が悪そうなところを助けたタマエは、シマより一まわりほど若そうだが、まるで生気がない。高層マンションでの一人暮らしが味気なかったせいで、昔懐かしい木造家屋でシマと暮らすうちにタマエは元気を取り戻す。さらにシマが助けた路上生活状態の19歳のサクラが加わって、老若の女三人の生活はさらに活気のあるものになっていく『バラの香り』。この作品が私は一番気に入った。

 

アメリカ帰りのマキとルームシェアするサヤカ。もう一人新たなルームメイトを募集することになる。募集を出すとたくさんの応募があり、その中からマキが厳選したはずのトモコは結構問題のある人物だった。けれどもマキはことが起きるたびにスッパリと解決し、「同居してるからって特別に考えないことよ。私たちはお友だちを求めたわけじゃないんだから」と言い切る。この『友だちではない』の一篇は、ルームシェアという暮らし方に希望を感じながらもまだあまりなじんでいない私に、大いに考えさせてくれるものだった。

 

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