よんばば つれづれ

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胸をしめつけられるETV特集『宮沢賢治 銀河への旅』

先週土曜日夜に放送され、録画しておいたものを見た。もともとはBS4Kで前後編3時間にわたって放送されたものらしい。先週放送されたものはそれを1時間にまとめ直したもののようだ。3時間見たかった気がするが、今回Eテレで放送されたものも素晴らしかった。

 

盛岡農林高等学校の寄宿舎で賢治と同室だった保阪嘉内に対し、賢治が生涯持ち続けた強い思いにスポットを当てている。賢治の作品の多くに嘉内の影響が見られ、トルストイを読み百姓として人のために生きたいと考える嘉内に、賢治は強く共鳴したようだ。

 

嘉内は1992年に発見された小惑星にその名が付けられたほど、天文学上の貴重な資料となるハレー彗星のスケッチを残していて、賢治の『銀河鉄道の夜』にも大きな示唆を与えているという。むろん、カンパネルラは彼をモデルにしているものと思われる。

 

銀河鉄道の夜』は初めて読んだ時から、親友カンパネルラを失うジョバンニの悲しみにうたれたが、こうした背景を知ると、この物語はいっそう悲痛さを増し、番組を見ていて胸がしめつけられるように苦しかった。

 

1921年、賢治は上京して軍隊にいた嘉内に面会するが、その日の嘉内の日記には「宮澤賢治 面会来」と書いた上から大きく斜線が引かれている。そしてそののち賢治から嘉内への手紙もなくなる。そのとき二人の間にいったいどんな会話があったのか。賢治の思いが裂かれた気がしてならない。

 

番組では明らかに、嘉内を愛した賢治を描いていた。こうした表現が受け入れられると判断したのは、時代ゆえだろうか。

 

賢治の文学にいっそうの深みを添える、素晴らしい企画だった。

 

 

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私の大切な本の一冊。