よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

江戸時代のおくりびとの話『出世花』『蓮花の契り』高田郁著

本木雅弘さんの映画がヒットしてすっかり世間に認知された「おくりびと」の仕事だが、この物語は江戸時代を背景に、檀家寺でない墓寺でその仕事に携わる女性を主人公にしたものである。

 

ヒロインの艶は、不義密通の大罪を犯して男と出奔した母を討つ、「妻敵(めがたき)討ち」の父とともに旅をしていた。ある日、飢えをしのぐために食べた野草が毒だったため二人は行き倒れになり、父は命を落とすが、九歳の艶はそばの寺の住職たちの介抱で救われる。

 

みなしごとなった艶は寺に引き取られるが、やせ衰え毒のために苦しんでひどい形相だった父の遺体が、その寺の僧や毛坊主の手で湯灌をされて安らかな姿に変わるのを見て感銘を受け、次第に自分もその仕事を手伝うようになる。

 

その艶が、住職から「縁」という新しい名をもらい、巷の人にときに「屍(かばね)あらい」と蔑まれたりしながらも、やがて「死んだら、なんとしてもあの三昧聖に湯灌をしてもらいたい」と言われるまでに成長していく物語だ。

 

以前、雲龍さん(id:umryuyanagi104)が高田郁さんの『あきない世傳』の紹介の時に、私へのコメントの中で、むしろこちらの方を先に・・・と薦めてくださった作品だ。結局私は5月の連休中にその『あきない』の5巻を先に読んでしまったが、ずっとこちらも気になっていた。

 

もともとは漫画の原作者をしていた高田さんが、時代小説作家に転向した最初の作品が『出世花』なのだそうだ。そのあとに書いた『みをつくし料理帖』が大変人気が出てシリーズが長くなり、この作品の続編をぜひ書きたいと思いながら、あれもこれもはできない性分で、『みをつくし』が完結して、やっと念願の続編『蓮花の契り』の刊行となったとのこと。

 

主人公をはじめ周辺の人までそれぞれ魅力的に描かれ、この著者らしくどうしようもない悪人は登場せず、でも、抗いがたい人生の不条理やら気持ちのすれ違いやらで悲劇が起こる。苦難や悲しみを乗り越えて、縁は自分の生きる道を選びとってゆく。

 

読み終わって私の心に一番残ったのは、岩のような巨体に疱瘡のあばただらけの顔をした棺桶作りの岩吉だ。そうした容貌や仕事のため、いくら思っても鼻も引っかけてくれない女性をかばい、罪を背負って拷問のために命を落とす。

 

途中、縁が定廻り同心の新藤にそばをごちそうになる場面が出てくるのだが、ああ、高田さんは本当に食べることがお好きなんだなあと感じる。実にうまそうな描写なのだ。

 

ヒロインの仕事が仕事だし舞台は墓寺ということで、華やかさはないけれど、涙にも洗われて、気持ちの良い読後感だ。

 

 

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