よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

粗忽者の読書 『フォー・ディア・ライフ』

別にこの物語が粗忽者の話というわけではない。読んだ私が、おっちょこちょいなだけである。

 

柴田よしきさんの作品、三作目。今回は『フォー・ディア・ライフ』という、無認可保育園の赤字を埋めるため、裏稼業であやしげな私立探偵をしている元刑事の園長が主人公という、かなり男臭い物語。いままでの地道でどこにでもいそうな登場人物たちとはずいぶん違う世界だ。

 

ところで、前の2作を読んで、私は著者のことを随分繊細な感覚を持った男性作家だなあと感心していた。ところが、今回は男性らしい作品だなと思いながら手にしたこの本の著者紹介文に、「きわめて注目される女流作家のひとりである」とあってびっくりした。「よしき」という名前から男性と思い込んでいたのだが、女性だったのだ。

 

それにしても、この作品では作風がガラッと変わって、東京の裏側、夜の新宿で働く女性たちのための無認可保育園をとりまく世界が描かれる。様々な事情でひとり親家庭になり、劣悪な状況で子育てをせざるをえない親たちや、不法労働しながら日本人との間にできた子供を育てる外国人女性たちと、無国籍のその子供たち。

 

ヤクザの親分の妾だった女性が作ったこの無認可保育園を引き継ぐことになった主人公の花咲は、捜査の過程で不運にも同僚の警官を射殺してしまった過去を持つ。不幸な女性たちのために良心的な料金で経営する保育園は、慢性的な赤字だ。それを園長の花咲が、体を張る裏稼業で稼いで補填している。

 

その裏稼業の仕事には、捜査の途中で探偵が一人消えている、裕福な家庭の中学生の少女の失踪調査や、高校中退の少年をヤクザの世界から救出するという危なげな依頼が入る。

 

ひとり親家庭や外国人の労働と、無国籍児を生みやすい日本の国籍法の問題など、現代日本が抱える問題をさりげなく物語に絡ませながら、同時に失踪した少女の行方やヤクザに追われる少年の安否、さらにその少年と親しかった高名な漫画家の秘密までかさなって、読み始めたら止められないほど夢中になって読んでしまった。

 

指を詰めるだのクスリだの無免許の医者だのといった、日の当たらない裏社会の要素ばかり詰め込んだ話なのだけれど、やはりこの作品にも前二作と同じ優しさと誠意があふれていて、読んでいる間も読み終わってからも、とてもさわやかな気分だ。

 

ただ、1998年発行のこの作品では、パソコンやインターネットを取り巻く環境が現代とは隔世の感があり、少し大げさに言えば、時代物を読んでいるときくらいの隔たりを感じる。いっそ、それらが全くない時代なら気にならないのだろうが、1998年というのはちょうど大きくて高価な携帯電話があったり、電話回線などでインターネットを使い始めたりしていた時代で、そうした描写が結構出てくるので、そのたびにああそうだったなあという感慨を覚えてしまった。

 

 

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粗忽ついでに、もうひとつ・・・。

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以前書いた、近所のスーパーで買う「石けんで落とせるファンデーション」は、「石けん」でなく、「お湯で落とせる」だった。こんなに大きく書いてあるのに、思い込みが激しいというか、もう、そそっかしい、おっちょこちょい、粗忽、としか言いようがない、呆れた私でした。