この表紙で、題名が『さようなら、猫』だもの、読んだ。
猫が登場する(姿は見えないものもある)九つの短編集。でも、猫はすべてわき役だったり、小道具のような扱いだ。猫好きがこの表紙に期待して読むと、たぶんがっかりする。著者は猫を飼ったことはあるのだろうが、「猫はしょせん猫」といったクールな付き合い方のできる人なのだろう。
九つの物語には、若い男女も出てくれば、中年の男女も登場する。なんだか私には、みな淡々とした人たちだなという感じがした。付き合ってはいるのだけれど、強い愛もなければ、嫌悪も憎しみもなく、深い嘆きもない。
去年同じ著者の『しかたのない水』という作品を読み、読書記録に「どの登場人物も現実味がなく、感情移入ができない」と書いていた。自分の好みの作家ではないという記憶はあったのだけれど、つい表紙に惹かれてしまった。
猫との距離の取り方といい、人間同士の付き合い方といい、あまり熱くなるのは好みではないという方には、面白いかもしれない。
収録作品はすべて2007年から2010年にかけて「小説宝石」に掲載されたもの。
自分の猫
わからない猫
赤ん坊と猫
降りられない猫
名前のない猫
ラッキーじゃなかった猫
他人の猫
二十二年目の猫
さようなら、猫