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浅田次郎著『天切り松闇がたり 闇の花道』は、絶滅したかもしれない粋でいなせな闇の世界の物語【写真を追加】

『黒書院の六兵衛』以来の浅田次郎さんの作品。『黒書院・・・』を読んだのはほんのちょっと前のような気がするけれど、読書記録を見てみると昨年の6月だったので、約1年ぶりだ。あちらは比較的最近の作品だったが、この『天切り松闇がたり』は20年ほど前に出版されている。シリーズもので、最新刊は2、3年前に第5巻が出ているようだ。

 

今回読んだのは、そのシリーズものの第1巻。主人公松蔵の生い立ちから始まり、一気に時は飛んで、老境の松蔵が警察のブタバコで同房の仲間や警官たちを相手に来し方を語って聞かせるという体で物語は展開する。大人気シリーズということなので、読んだ方も多いかもしれない。

 

幼くして母を亡くした主人公松蔵と姉のさよは、グウタラでばくち好きで借金まみれの父親によって、母親似で器量よしの姉は吉原に、9歳の松蔵は盗っ人の親分のもとにと、それぞれ売られてしまう。

 

それからの盗っ人修業の日々を、留置人や係官、ときには松蔵の話が聞きたくてやって来る非番の警官までを聴衆にして、毎夜毎夜、消灯時間まで語るのだ。

 

この松蔵が引き取られた親分のもとの盗っ人たちは、誰もかれも盗みの技術もとびきりなら、心意気も粋でいなせで実に格好良い。決して盗まれて困るような相手からは取らず、被害を大っぴらに届けられないようなところばかりを狙い、しかも暮らしに困っている貧乏人たちに盗んだ金を配って歩く、まさに鼠小僧のような義賊と言える。

 

第二夜で語られる女スリのおこんの、あっと驚くお相手との悲恋や、最終章の第五夜で語られる、松蔵が9歳のときに分かれて以来の姉おさよとの再会と別れなどは、涙なくしては読めない。

 

どんなに粋な仕事ぶりであっても、泥棒は泥棒であり、法を犯していることには違いない。けれども、充分な報酬を受けられる役職にあり、庶民とはおよそ別世界で暮らしているであろう人たちが、そのうえまだ「それほどまでして私利私欲や保身に走るか!」と呆れるしかないようなニュースばかり聞かされる昨今の風潮を思うと、なんとこの盗っ人たちの格好いいことよと、おひねりでも投げたいような気分になる。

 

現代は何事も「結果オーライ」とやらで、どんな方法で稼ごうとお金さえ儲ければ「セレブ」なんぞと呼ばれ、勝ち組とか言って賞賛される。けれども、私はやっぱり、どんな風にスマートに稼ぎ、いかに粋にいなせに使うか、というところに、その人の価値があるように思う。

 

これからこのシリーズも、楽しみに読んでいくこととしよう。

 

 

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*「はてな」のサイトがこの2、3日とても重くて開くのもままならず、まして記事を書くのはほとんど不可能(昨日はワードで文章を作ってから貼り付けた)だったので、問い合わせフォームで連絡したら、回答メールはまだ来ていないが、ほぼ通常に近い状態に改善され、今日は普通に入力することができた。

 

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今日の「19日の集会&パレード」(例によって私は集会のみ参加)

発言者は皆一様に今日の共謀罪法案委員会通過に憤り、ぜひ団結して廃案に持ち込みましょう!と言っていた。でも、共謀罪法阻止よりも、サッサと諦めて、次の選挙で野党の票を増やす方策に知恵を絞るほうが現実的のような気がする。