昭和の日(どうもピンとこない呼称)の昨日、友人に誘われて豊田市民芸館を訪ねるドライブに出かけた。天気予報では午後3時過ぎに天候が急変するので注意とのことだったけれど、朝出かけるときには、そんなことが信じられないようなドライブ日和だった。
新緑の山は、まさに「笑う」という言葉がぴったりの賑やかさ。(足助にて)
豊田市民芸館 第一民芸館(第三まであり)
第一の目的地豊田市民芸館は、私の全身も染まりそうな輝く緑の中にあった。紅葉の季節はもちろん見事だろうが、新緑も良いものだ。少し前の桜の季節はいくらか賑やかだったようだけれど、昨日は休日なのに全然ほかの来館者がなく、係員は私たちの専属コンダクターのごとくゆっくり話が聞けた。しかも常設展示は無料とのこと。
展示物は縄文土器から、室町、江戸期の土人形やら、近代まで使われていたような箪笥類まで幅広い。円空仏もたくさんあって、そのなかの一体、温かいほほえみを浮かべている、小さな聖観音菩薩の座像が心に残った。
敷地内にある登り窯。平安時代の古窯を復元したもの。
訪問者は少ないが、いちおう休日だからか茶室(勘桜亭)は営業していたので、抹茶をいただく。借景が素晴らしい。写真では分からないと思うけれど、川の流れも見える。
菓子は牡丹。
第三民芸館は改装中とかでゴタゴタしていたけれど対応はとても感じが良かった。来年(さ来年だったかな?)の展示のために全国から集められたこけし。目下その準備で整理の最中。男性3人が当たっていた。こんなバックヤード、めったに見られない風景なので、写真を撮らせていただいた。
友人が「こけしが西日本にないのはなぜですか」と尋ねると、整理作業中の一人の方はこけしの研究者だったようで手を止めて対応してくださったのだが、分からないとのことだった。適した木があまりない(温暖な地では材質が軟らかい)からだろうか、とは友人と研究者の一致した推論。
こちらは足助資料館。分かりにくいところにあるうえ、地元の人にもあまり知られていないようだった。中では、女性の方が掃除機をかけていらした。平日はたぶん一日中ひとりきりだと思う。休日の今日でも、多分来館者は私たち2人だけだろう。
このひっそりとたたずむ資料館の一室に、縄文のビーナス(右上すみ)がいた。想像していたよりはるかに小さくて驚いた。およそ5センチほどしかない。でも、その隣の胸から下のものなどなかなか豊満で、縄文の人々のおおらかさを感じさせる。
足助資料館を見ていた時、強い雨が屋根を叩く音と雷まで聞こえだした。時計を見ると3時を回ったところ。朝は信じがたいと思った天気予報が見事に的中した。雨の中、山道を下る。
縄文の土器やビーナスを見ていると、ゆったりと流れる「とき」を感じ、たくさんの物に埋もれ、時間に追われてあくせくと暮らす現代の私たちと、どちらが豊かか分からないなと、車に揺られながら思った。
途中、白や薄いピンク濃いピンクの枝垂桜があちこちで美しく咲き乱れ、山桜の咲き残りもあったりで、新緑の美しさとともに、豊かな日本の山村風景を満喫した一日になった。