よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

輝いて生きる人

昨年秋に放送されたとき見過ごしてしまったが、再放送があったので見ることができた。絵本作家甲斐信枝さんを追ったドキュメンタリー『足元の小宇宙』だ。

 

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甲斐さんは、雑草のことを「このヒト」とか「あいつ」「こいつら」などと呼ぶ。それが愛情にあふれている。雑草たちを、心から友達や相棒のように思っている。気にいった相手を見つけると、草はらに座り込んで5時間も6時間もスケッチを続ける。思いがけない草の営みなどに出合うと、まるで小さな少女のように歓声を上げる。

 

甲斐さん、撮影時おんとし86歳。でも、草のなか腹ばいになって夢中で観察する身ごなしも目の輝きも、とてもそんなお年のお婆ちゃんとは思えない。

 

雑草たちが草どうしの過酷な競争の中、それぞれ工夫して勢力を広げたり子孫を残す努力をしていることに、心から尊敬の念を抱いているのが分かる。そういう気持ちで描くからこそ、この方の絵本の中の雑草たちは見る人を魅了するのだろう。

 

とりわけお気に入りののげしの種の飛ばされ方を見ていて、草のまわりで風が渦を巻くことを発見する。のげしを何度も何度も描き、膨大な時間を費やし、愛情をもって観察したからこそ、気付くことができたのだと思う。

 

キャベツ畑のキャベツの葉の先にできた水滴が、朝日によって七色に輝く瞬間に遭遇して、お宝をもらったと感動する甲斐さんは本当に幸せそうな笑顔だった。

 

誰の暮らしのそばにも生えている、何でもない雑草たち。その何でもない雑草も、この人にかかれば鑑賞するに足る、価値ある美しい造形物になる。紙に写し取られれば、何十年も人々に愛される絵本が生まれる。

 

絵本を創りだすことはできなくても、身近な草を眺めて楽しむことは心の持ち方一つで誰でもできる。お金がなくとも、気持ち次第で、置かれた場所で美しいものを見つけることはできる。

 

質素な家、簡素な身なりで、近頃巷で盛んに話題になる方々とはおよそ対極ともいえる暮らし方をしている甲斐さんだったが、一瞬一瞬が発見や驚きや喜びに満ちているようなはつらつとした姿は、この上なく幸福そうに見えた。

 

 

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甲斐さんが大好きだという「のげし」が主役の本。

 

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甲斐さんの発見がいっぱいありそう・・・。