今年7冊目の東野圭吾さんの本。期待が大きすぎたのか、今までの6冊はいま一つの感が否めなかったが、今回の作品は大あたりだった。
第一章 回答は牛乳箱に
第二章 夜更けにハーモニカを
第三章 シビックで朝まで
第四章 黙禱はビートルズで
第五章 空の上から祈りを
こんな具合に5つの章に分かれていて、それぞれ違う登場人物を巡って話が展開する。読み始めはあれっ、短編小説集だったのかと思ってしまうが、空き巣をして逃亡中の児童養護施設育ちの3人の若者が全話にからんで、時空を超えた壮大な一つの物語になっている。
いつ閉店したのかも分からない、いまや廃屋同然の「ナミヤ雑貨店」。悪事を働いたもののあまり運も頭も良いとは思えない3人は、逃走に困ってその荒れ果てた雑貨店の店舗に身をひそめる。すきっ腹を抱え、なんとか朝まで眠る場所を作ろうと思っている彼らを驚かせたのは、郵便口から差し込まれた「月のウサギ」からの悩み相談の分厚い手紙だった・・・。
こんなふうにして彼らはさまざまな人間のさまざまな悩みの手紙を受け取り、自分たちなりに頭をひねって回答をしていく。そうして、「ナミヤ雑貨店」がおこす不思議な現象に巻き込まれていく。
ちょっと『バックトゥーザフューチャー』を思い出させるくだりもあったりする、過去と現在が交錯する物語だ。この手の話が苦手な方には向かないかも知れないが、これはタイムトラベル物というより、心温まる人間の繋がりの物語だ。そして素敵な純愛の物語でもある。
これから読む方の楽しみを減らしたくないので、あまり多くを語ることは避けたい。年末年始の休み、お暇で人ごみは避けたいという方は、心洗われる感動の「ナミヤ雑貨店」ワールドを楽しんでみられてはいかがでしょう。