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よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

人は、人生は、なんて切ない!でもだから愛おしい・・・坂口健太郎くんの舞台『かもめ』を見る

本当に見たい舞台を自分でチケットを取ってみる方がいい、と思って演劇鑑賞会をやめたのだけれど、劇場の会員専用の発売日も一般の発売日も、ネットはログインすることすらできず、気が付けば今年はまだ一度も舞台を見ていなかった。

 

人気者ぞろいで、やはりチケット入手が大変だった『かもめ』。要望が多かったためか、豊橋は当初3日、4日の2回公演だったのが2日の夜が追加になった。幸運なことにチケットが手に入り、諦めていたこの舞台を鑑賞することができた。

 

満島ひかりさん、坂口健太郎さん、田中圭さん、渡辺大知さんといった当代の若手人気俳優のファンが多いのだろう、いつもよく目にする演劇鑑賞会の公演がある日のロビーとは、集まっている観客が明らかに違う。圧倒的に若い人が多い。

 

 

コンスタンチンを演じる坂口健太郎さんは、この作品が初舞台だという。佐藤オリエさんや小林勝也さんという大ベテランに並んでとても健闘している。ガラスのように透明で傷つきやすく、少年っぽさを残したコスチャという役柄そのものになっていた。

 

田中圭さんは、年増の大女優とまだ世に出ぬ若い女優とに思われるモテモテの売れっ子作家ながら、ちっとも幸せそうでない哀しみを表出していた。

 

満島さんはもちろん悲劇を演じても、『トットてれび』のトットちゃんのようにコミカルなものを演じても、大変素晴らしい女優さん。ニーナの可愛らしさや悲しさが胸に迫った。

 

登場人物の誰もが、運命に翻弄されたり思う人に思いが届かなかったりと、生きることの苦しさや人生の重さを感じさせるストーリーだけれど、そうしたなか、ベテラン俳優演じる登場人物が、ご当地サービスも盛り込んで、所どころでクスッと笑わせる。

 

年下の愛人を持ち、奔放に振る舞って息子を苦しめお金にも執着する大女優を演じたのは、一世を風靡したテレビドラマ『若者たち』の紅一点だった「オリエ」さんだ。あの頃から子供心にも、なにか他の女優さんたちとは違う感じを受けたけれど、年を重ねてますます素敵な役者になっていらした。

 

 

前衛的とも言えるシンプルな舞台で、役者は、ときに這ったり転がったり舞台から飛び降りたりと激しい動きもあるのだけれど、ピアノやカモメを表す白い紙が効果的に使われ、全体を通しては静かな感じを与えながら、終わった時にはズシンと重い感動でふるえていた。帰り道、ずっとその感動に心を占領され、家に着いてからもしばし余韻に浸っていた。

 

ただひとつ欲を言えば、セリフが聞き取りにくい部分が結構あったので、もう少し小さな劇場で見られたら、よりこの作品の良さが味わえるだろうなと思った。でも、今回は東京でも800人規模のプレイハウスだったし、なんといっても、もうこのメンバーで再演するのは無理なのだそうだ。

 

人の縁で、思いがけなく見られることになった素敵な舞台。幸せな時間をいただいたことに心から感謝したい。

 

 

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穂の国とよはし芸術劇場PLATのサイトより