先日のNHKスペシャル「マネーワールド 資本主義の未来」にも出演していらした井手英策氏が、松沢裕作氏と出された 『分断社会・日本―なぜ私たちは引き裂かれるのか』を読んだ。この本を知ったのはSPYBOYさんのブログだったのだけれど、いつも利用する市民館にリクエストを出して待っていたこともあって、「読もう」と思ってから随分日にちが経っての読了となった。
SPYBOYさんのブログ
内容は・・・
Ⅰ 分断社会の原風景 「獣の世」としての日本
明治日本 弱肉強食の獣の世 井手英策・松沢裕作
Ⅱ 分断の諸相
労働問題の視点から 禿あや美
住宅問題の視点から 祐成保志
日本政治の状況 吉田 徹
西欧の状況 古賀光生 -右翼ポピュリスト政党の台頭を通じて
現在の日本社会 津田大介
Ⅲ 想像力を取り戻すための再定義を 井手英策・松沢裕作
こんな構成になっている。古賀氏の論文は少々私には難解だったが、グローバル化の進んだ現在、日本だけでなく、世界的に「獣の世」のような厳しい状況になり、あらゆるところで分断化が進んでいるということが様々なデータとともに示される。このところアメリカ大統領選の結果からも、しきりに「分断」という言葉が聞かれる。
では、その「分断」をなくすためにどうすれば良いのかは、同じくSPYBOYさんが紹介している井手先生のもう一冊の本『分断社会を終わらせる』を読めば分かるだろうか。
5氏の論文のあとの、本書のまとめともいえる「Ⅲ 想像力を取り戻すための再定義を」の最後のくだり・・・
私たちの社会が他者への想像力をなくし、価値を分かち合えなくなったとき、社会は人間の群れとなる。そして、そのような群れが、妬みを動機として、他者を引きずりおろし留飲を下げる人々から成り立つとき、私たちの生きる時代は「獣の世」となるだろう。分断をなくし、対立点をなくすための絶え間ない努力、それは、「人間たちの社会」をめざすための再定義でなければならない。そのためには、いま、この社会に無数に引かれ、混線してしまっている分断線を一つひとつ解きほぐしていき、私たちの何と何が共通の関心であるのかを丁寧に考えていくほかない。「分断の政治」を「共通の政治」に変えられるかどうか。それは私たちが人間らしさを回復するための条件でもある。
という文章が胸に迫る。
トランプを大統領に選んだアメリカは、果たして「共通の政治」を選択したのだろうか。もし「選択」の時点では「共通」でなく「特有」の選択の結果だったとしても、トランプ氏も一流の財界人であり、アメリカという大国を率いる責任ある立場になった以上、ぜひとも「共通の政治」を目指す大統領になっていただきたいものだ。
なお、蛇足ながら「獣の世」に関連して・・・
「自然界は弱肉強食?」というYahoo知恵袋への質問に対する、素晴らしい答えがあった。ネット上で評判にもなったようなのでご存知の方もいらっしゃるかもしれないけれど、獣たちの名誉のためにも、ここに紹介したい。
弱者を抹殺する。不謹慎な質問ですが、疑問に思ったのでお答え頂けれ... - Yahoo!知恵袋
今日ご近所さんにいただいたピーマン。野菜が高騰している折、助かります。