よんばば つれづれ

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新しい浅田さんに戸惑う、『ブラックオアホワイト』浅田次郎著

やはり、たとえ宮部みゆきさんでも浅田次郎さんでも、はずれはあるのだなと知った。もちろん自分の好みの問題であるのだろうけれど。

 

宮部さんは『英雄の書』であり、浅田さんはこの『ブラックオアホワイト』だった。

 

今まで浅田さんの作品は読み始めるとすぐグイグイ引きつけられて夢中で読み進んでしまったが、この本は「もうそろそろ話が動く?」「いつになったら?」「え、ずっとこのまま?」って感じで、終わりまで行ってしまった。

 

「私」が大学の同級生である「都築君」から、彼の見たさまざまな夢の話を聞くという物語である。白い枕と黒い枕。白い枕で眠ると良い夢が見られ、黒い枕を選ぶと悪い夢にうなされる羽目になる。

 

その夢の舞台がスイスの湖畔であったり、パラオであったり、北京、ジャイプール・・・と商社マンである「都築君」は実際に暮らした土地であるにしても、読む側にとっては、というか私にとっては現実離れした舞台であり、よけいにフワフワと空中に浮遊して、ジタバタと足を動かしてもいっこうに地面を踏めないような、もどかしさを感じ続けた。

 

世界を股にビッグビジネスを展開する一流商社マンの、仕事の駆け引きや同僚との足の引っ張り合いなどが夢に絡めて描かれるので、そうした部分が面白いと感じる人もいるだろう。また夢の女性はみな美しくエロティックなので、男性の方が楽しめるかも知れない。

 

蒼穹の昴』とか『鉄道員』とか『地下鉄に乗って』などの作品から抱いた、自分の勝手な期待をもって読んだため、少々違う作風に面くらってしまった。終始これは誰の作品だろう・・・という感じであった。

 

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