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よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

おしどりマコケン トークライブに行って来た

社会のこと 暮らし

「おしどり」は吉本興業の夫婦漫才コンビ、マコさんとケンさんのふたりだ。とはいうものの、インターネットの予約サイトで申し込みをする時点でも「おしどり」も「マコケン」も全く何のことか知らなかった。たんに義理があって参加せざるを得なかっただけのことだ。

 

けれども、ライブを見た今は、この催しに導いてくれた人に感謝している。

 

このブログを読んでいる方もこの二人を知らない方が多いと思うので少々紹介する。この二人は、東日本大震災のあとテレビで東電の発表することに疑問を感じ、会見に出かけて行ったことをきっかけに、次々疑問に思って調べ、その後会見には数えきれないほど出かけ、そうした中で知ったことや考えていることをネタに、全国でトークライブをしている。

 

大阪にいた2人が活動基盤を東京に変更して上京したとたん遭遇した3.11。吉本でも売れっ子や大物はすぐに沖縄などに避難してしまったと言う。売れていない新人たちだけが東京に残り、かなたからの指示で舞台に出続けていた、という話にまず私は驚いた。

 

あの頃、在東京の外国人が続々本国に引き上げているというニュースは知っていたけれど、それは文化の違う外国人ゆえの少々神経質な反応だと思っていた。日本人でも時間的金銭的に余裕があったり、自分で裁量できる立場の人たちはサッサと避難していたとは全く知らなかった。それでは残された人たちはさぞ不安だったことだろう。

 

マコさんはもともと医学部で生命科学を学んでいたということもあったからか、何度も東電の記者会見に出席するうち、東電担当者もたじたじとなる(実際の記者の質問は慣れ合いと思えるようなゆるい質問がほとんどだそうだ)ような鋭い質問をするようになり、関係方面では相当知られた存在になって行ったようだ。

 

マコさんは、耳の悪い私には時々聞き取れないほどの早口で2時間しゃべりっぱなしで、プロジェクターを使いながらのその情報量たるやものすごく、とてもここに書ききれないが、とにかく表に出ていないデータや、そもそも調査さえしていないことも多いそうだ。

 

フクシマで働いている現場の作業員さんたちの、医療に携わっていた方の話も恐ろしいものだった。どの会社の誰それとしてカルテを残すと、圧力がかかってその方が働けなくなってしまうため、記録が残っていないケースがたくさんあるそうだ。そして「原発の敷地内で就業時間中に無くなった場合」以外は死者としてカウントされないため、時間を過ぎても出勤してこないからと宿舎に見に行くと亡くなっていたなどというケースは死者の数に入っていないのだそうだ。

 

宗教関係の団体の招きで、国際会議に参加するために訪れたドイツでの話もとても興味深かった。中学生や高校生相手に話した時は、日本のことなんてあまり知らないだろうし、こんな子供たちでは質問も出ないんじゃないかと思っていたら、「NHKの会長はあの人で大丈夫なんですか」とか、特定秘密保護法についての質問があったり、とても日本についてよく知っていて驚いたそうだ。

 

あまりしっかりしているので、冷やかすようなつもりで「じゃあ、支持する政党なんかもあったりして・・・」と言ったところ、ほとんどの子がよどみなく自分の支持政党の名を上げたそうだ。そうして反対に「日本では選挙権を持ってから支持する政党を考えるの?それじゃ間に合わなんじゃない?」と聞き返されてしまったと言う。

 

ドイツは日本の事故を受けて原発をやめようと決めたのに、当事者の日本で再稼働を進めようとしているのはなぜなのかという質問も多く、「徐々にという意見も入れると国民の九割以上は脱原発を望んでいる」と答えた。そうすると、「日本人はポスターやステッカーで世の中を変えられると思っているのか?」と言われたという。日本人は怠けていると思われているそうだ。嫌ならもっと自分で動くべきだ、他人に頼っている、誰かがなんとかしてくれると思っているのだろう、ととらえられるのだそうだ。まあ、実際その通りだけれど。

 

脱原発市民運動のいろいろなグループのリーダーたちの集まりに参加した時の話も示唆に富んでいた。一人が意見を言うとものすごい勢いで反論する人、さらにそれに反対する人や逆に同調する人など、激論になるのだそうだ。それに驚くと、1から100まで考えが合う人間などいるわけがない。違って当たり前。でも「原発をなくしたい」という点だけ同じなら、その点で一緒に活動できる。バラバラは当然という考え方なのだそうだ。

 

そのグループリーダーの中に銀行の支店長や大企業の管理職などがいたそうで、やはり勤務時間などの労働環境の違いを感じた。日本では会社勤めしている間は時間的精神的余裕がないため、たいていの人は社会活動などしていられない。ドイツではワークライフバランスが取れているのだろう。

 

マコケンさんは「ドイツでも権力者側に都合の悪いことが報道されないことはしばしばある。ドイツがもしよいと思われているのなら、それは隣の芝生が青く見えるようなもの。政府やメディアが悪いのはドイツも同じ。ただ違うとすればドイツでは市民が自分で調べ、考え、動くことだ」と言われたという。

 

この間まで読んでいた『豊かさとは何か』という本の中にひかれている、ドイツの社会システムとのあまりの差に暗澹としていたが、まさに違ってしまった原因はここにあると思った。ドイツとて放っておいても、あのような国民思いのシステムができた訳ではないのだ。一人一人の国民が自分で考え行動したからなのだ。

 

ならば、私たち日本人だってもっと底辺の国民に優しい社会が築けるはず。なんたって、ピラミッドの底辺は数が多いんだから!

 

そのためには、自分で考え、調べ、行動する!

 

 

質疑応答の時間の最後に出た東京に避難している福島の小学生の話。卒業文集に「将来は国会議員になって、特別秘密保護法とか集団的自衛権とかよく考えて、日本を平和な国にしたい」というようなことを書いたら、校長先生かもう少し上の方からか書き直しの指示が入ったという。結局政治批判は避けた方が・・・ということで、全く違う文章を書き直したのだそうだ。このところそういう話をよく聞く気がするとふたりは言っていた。

 

 

本業は芸人さんだけあって、原子力とか放射能という難しい話を、面白く聞かせてくれて、質疑応答を入れると3時間余だったのが少しも長く感じなかった。