よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

優しい妖怪バンブーのお話『ほんとうの花を見せにきた』

著者は桜庭一樹さん。なんて繊細な感性を持った男性だろうと感心しながら読んでいたら、女性だった。やっぱりねえ。

本の半分余りを『ちいさな焦げた顔』という第一作が占め、表題作は二番目で50ページほどの短編で、三作目もほぼ同じくらいの短編『あなたが未来の国に行く』。一作目の続編が二作目で、これらの話の元となる話が三作目という構成になっている。

一作目の始まりはちょっと映画『レオン』を思わせる。舞台は日本だけれどかなり治安の悪い街、時代はいつなのか・・・。何か父親が良くないことをしたらしく、その報復に妻と女学生の娘が無残に殺される場面だ。10歳の少年だけが奇跡的に敵の手を逃れ隠れていると、何者かが窓から入って来て母親の死体にかがみこみ、首筋から血をすする。

それは死者の血で生きる竹の妖怪バンブーだった。そして少年はそのバンブーに窮地から救いだされ匿われ、敵の目を欺くよう少女として育てられる。

バンブーは二人いた。一人は少年を救い出したムスタァ、そしてそのムスタァとともに暮らす洋治。妖怪たちは昼間は冷たい長持の中で眠り、夜が訪れると互いに相手の身繕いをし仕事に出かけていく。二人に世話をされて学校に通う少年とはすれ違いの生活だ。けれども二人のバンブーは、自分たちと違って日々成長し変化していく少年をこよなく慈しんで育てる。バンブーの世界のおきてを破る行為なのに・・・。

だんだん少年が成長していくと、妖怪たちの言いつけどおりにならないことも出てきて、やがてその少年の行為がもとでバンブーたちの身に危険が迫る。一人はおきてを破った罪で裁かれ、3人の優しさと愛に溢れた生活は終わりを迎える。


とても切ない話だった。途中から胸が痛くなるほど。死人の血をすするというおぞましい行為をする妖怪でありながら、二人のバンブーのなんと温かく優しいことか。その一方で、生きるために恩ある人さえ裏切ってしまう人間。



人間と妖怪という異種の生きものの間の愛の交流と別れをこまやかに描き、生きることの意味を問いかける。年をとっていくこと、永遠とか不変がないことの意味を問いかけ、静かに深い感動を与える。


二作目も三作目も悪くはないのだけれど、一作目ほどの深みは感じない。そして残念なことに、妖怪話が続くため、全部読み終わった時には少々お腹いっぱい、という感じになってしまった。せっかく最初の話であんなに感動したのに・・・。うぅ、もったいない!