よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

『不可能犯罪コレクション』二階堂黎人編

江戸川乱歩賞鮎川哲也賞受賞者やその他の、40代から50代初めの作家の書き下ろし作品ばかり6編のアンソロジー。いかにもまだ練れていない印象を受ける作品もあるが、不可能犯罪という難しいテーマに縛られながら、どの作品もまずまず楽しめるものにはなっている。気軽に読むのには良いだろう。

『佳也子の屋根に雪ふりつむ』雪を使った密室殺人。扱った題材は面白いのだけれど、ご都合主義が多すぎて話に引き込まれない。これだけ偶然を狙っちゃダメでしょ、と思う。

『父親はだれ?』不可能犯罪って・・・ああ、そっちだったの?!という点はちょっと意外かな。

『花はこころ』能楽の世界を舞台にした作品。能についての解説がなかなか興味深いし、トリックも納得できる方法で良かったが、動機がちょっと強引な気もする。美の世界に生きる人だもの、もっと違う解決法を考えてほしかったなと思う。

『天空からの死者』動機がなかなか現代的で面白かった。こういう人間なら殺人を犯しても目的達成を考えかねないなと納得する。誰もいない、そして入口には鍵という密室状態の屋上から転落した被害者。情緒には欠けるけれど、ミステリーとしてはまとまっている。

『ドロッピング・ゲーム』近未来の日本?と思われるパラレルワールドが舞台。登場人物は小学生。でもこのように選別化を図ってエリートを培養すると、こうした恐ろしく賢い12歳はできそうな気がする。読み終わると、じんわりと寒気を覚えるよう・・・。

『「首吊り判事」邸の奇妙な犯罪』著者(加賀美雅之)の他の作品でも活躍しているらしい(私は読んでいない)パリ警視庁の敏腕予審判事シャルル・ベルトランが登場する作品。いかにも手慣れた感じがする。トリックはいくらか予想がつく部分もあるけれど、私は面白く読んだ。事件を解明していく中で見えてくる、頑迷固陋(がんめいころう)、苛烈狷介(かれつけんかい)なばかりと思った人間の別な一面。ミステリーでは、事件を起こすために少々強引な動機が見受けられることもあるが、この作品はそこの部分に魅力があり、印象的だった。


アンソロジーは好みの作家を見つけるという楽しみもあるのだけれど、残念ながら私には、今回は他の作品まで読んでみたいと思える書き手は見つけられなかった。