よんばば つれづれ

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イナゴの足は固くて口の中が痛かったお話

今日はブースの当番でもなければ、発表も受け持ってなく、たんなる気楽な観客として「子どものための平和展」に行って来た。

午後1時半から二階の一室でユネスコの割り当て時間があり、前半は会長の当会の内容紹介とESDやユネスコスクールについての話で、後半は当時小学2年生で豊橋空襲に遭われた方の体験談だった。

市の中心部に住んでいた人たちは防空壕を作るような敷地の余裕はなく、空襲警報が鳴るたびただ息を殺すようにして小さくなっているしかなかったそうだ。けれども昭和20年6月19日夜半は、どうもいつもと雰囲気が違うからとお父さんが外に出てみると、もうあちこちで火の手が上がっており、大慌てで一家で逃げ出したそうだ。

その時に家族がバラバラにならないよう、お父さんがお母さんの帯を持ち出し、しっかりこれを掴んで決して離さないように言われた。けれども、火の中を逃げまどい、熱さのあまり川にのがれて流れを遡り、また陸に上がって火の心配のない高台に這うようにして登り着き、やれやれと一息ついて掴んでいるものを見たらお婆ちゃんの手で、6人家族からお婆ちゃんとその方と2人だけはぐれてしまっていたそうだ。

それでもともかく命だけは長らえたとほっとして、高台から燃える市街をぼんやり見つめて夜を過ごした。朝になると空腹でたまらない。高台から、その方の通っていた小学校が鉄筋コンクリートだからか焼け残っているのが確認できたので、お婆ちゃんがそこに行けば何かあるだろうと言い、二人で歩いて行ったそうだ。案の定一人一個のおにぎりが供給された。空腹におにぎり、さぞやおいしかったことだろうと思ったら、そのおにぎりのまずかったことが強烈な印象として残っていると言われる。

「ものすごく煙くさくて食べられないような代物だった」そうだ。おそらく空襲のすぐその朝だから、そのあたりで運良く焼けないで残った米を使ったのだろうし、釜にしても水にしても、ドサクサの中でかなり悪い条件で炊かれたのだろう。

家族で普段から話し合ってあったのか、そのあとお婆ちゃんに連れられ親戚のある静岡県境に近い町まで行った。逃げる途中で履物をなくし裸足で、長い道のりを歩いて行ったのだそうだ。そこではぐれてしまった家族と再会できたけれど、ご両親は二人が死んでしまったかもしれないと思っていたそうで、さぞかし嬉しかったことだろう。

そのまま親戚の家で5年生の途中まで暮らしたけれども、戦争が終わったと言っても、子供も勉強どころではなく食べるのに必死の自給自足の日々が当分続いたそうだ。背負子を背負って薪を集めに行かされる。あまり早く戻るともう一度行って来いと言われるので、戻る頃合いを考えながら集めたそうだ。

田んぼにいっぱいいるイナゴを取るのも子供の仕事で、取ったイナゴを焼いて食べると、足が固くて口の中が痛かったそうだ。今料理屋で供されるイナゴの佃煮は手がかかっているので美味しいかもしれないが、当時は貴重なタンパク源だから食べたけれど、決しておいしいものではなかったそうだ。


こうした体験をした我々はあと10年か15年もしたらほとんどいなくなってしまう。だからどうか、あなた方若い人たちがこうした話を語り継いでいってほしい。戦争の惨めさを忘れないでほしい。平和を当たり前と思ってはいけない。大切に思い、保つ努力をしなければ、いつか知らない間に平和を失ってしまうから、と、聴衆に強く願ってその方は戦争体験談を締めくくられた。


昨日は一緒に発表をした仲間と、会場の近くのケーキ屋さんでケーキセットを楽しんだ。今日はそのケーキ屋さんの2軒隣りの、ご夫婦でなさっている美味しい和菓子屋さんで夏の和菓子を買って帰ろう、あんみつも・・・と計画していたのだけれど、定休日でもないのにシャッターが半分しか空いていない。おじさんもう大分高齢だから・・・と案じながら覗くと、案の定奥さんが「ちょっと主人が体調を崩して入院しちゃったのでしばらく休みます。すみません」とおっしゃる。残念!でもご主人の容体は心配するような状態ではないそうでまずは一安心。和菓子はまた次の機会に。

予定のお店ではなくなったけれど、駅ビルの店で美味しいものを調達して家で一服し、つくづく平和の恩恵に浸っている。

語り部の方は、「今日私はやむにやまれぬ思いでここにいます」と語り始められた。連日の中東の紛争のニュースが、本当に人ごとでないという感情の激し方だった。ご自分の体験と重なるだけに辛さは私などの比ではないのだろう。

珍味としてイナゴを食す時代に生まれ合わせた幸運と、貴重なタンパク源だからとろくな味付けもなく固い足の痛さも我慢して食べなければならない時代に生まれ合わす不運。平和で豊かな日本に生まれる幸運と紛争の絶えない中東に生まれる不運。どれも人間個人の努力でも責任でもない。

一人のできることは小さいけれど、一人一人が何もしなければ、確実に何も変わらない。


もうすぐ7時。組長会の時刻です。
とりあえずこれでアップ。まちがいがあれば後で訂正いたします。

まもなく8時、組長会から戻り、ちょっとだけ訂正しました。