よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

『空を飛ぶ夢をもう一度』いいね、友情と再生・・・

先週も紹介した『55歳からのハローライフ』の最終回。イッセー尾形さんと火野正平さんというキャスティングも魅力的だけれど、さらに火野さんの母親役に奈良岡朋子さんという渋さ、いやでも期待は高まろうというものだ。

ストーリーは勤めていた出版社がつぶれ、ハローワークに通い続けるが「その年で事務職なんて無理!」と職員に言われてしまう60歳の因藤という男と、その因藤の前にホームレスとなって現れた小学校時代の同級生福田の数日間を描く。

因藤は肉体労働の講習も受けてはいるが、腰痛という爆弾を抱えているためまだその仕事に就く決心はつかずにいる。しかしなかなか仕事は見つからず、おまけにスーパーでパートをしている妻も契約を切られてしまい、ホームレスにおちぶれる悪夢を「夢日記」と題したノートに日々綴るほど追いつめられた状況で、見ているほうも少々苦しくなるほどだ。

ところがその因藤よりはるかに苛酷な立場に置かれた福田の出現で、物語は大きく動き出す。福田は簡易宿泊所の料金を1か月分も滞納しているほどお金もないが、さらに深刻な病まで抱えていた。そして因藤に2つだけ頼みがあるという。

10歳の頃福田は因藤のいる小学校に転校してきた。そしてすぐまた転校していったので、友人と言っても彼らが共に過ごした期間はほんのわずかにすぎない。その友人の、もう死が近いことさえ感じさせる状況での頼みに、因藤はどう対処するのか・・・。


インタビュー記事で因藤を演じたイッセー尾形さんが「因藤と福田のロードムービー」と言っているけれど、まさにここからは初老の、おちぶれた男二人のロードムービーだ。この部分が実に味わい深い。そしてこの作品のお約束で登場する、前作の出演者小林薫さんの役どころも、効果的でとてもいい。

あれほど大変な思いをするよりとっとと救急車を呼べとか、はた迷惑なことこの上なしといった評価もあるだろうけれど、あれはやはりなんとしても生きているうちに福田を母親に会わせたい!と思う因藤のロマンだろう。そして人生とは「お互いしょうもない迷惑の掛け合い」で、「おたがいさま」の精神でちょっとずつ我慢し合いましょうや・・・という作り手のメッセージ(原作者村上龍の?)かと思う。


ただでさえ苦しい状況に置かれていた男が、さらに大変なことを抱えた友人に50年ぶりに出会い、巻き込まれ振り回されていくうちに、自分を縛っていたものを取り払い、もう一度自由に生きなおそうと思う再生の物語。最後の方のシーンで映った夢を書き留めるノートの新しい題名や、福田の母親の「あの子があなたの話をするときの顔は本当に楽しそうだった・・・」という言葉、「救われたのは俺の方だった・・・」という因藤の言葉などが深く心に響き、見終わった後もしばらく余韻に浸っていた。



こういうドラマが増えれば、まだまだテレビも楽しいなと思う。