よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

森村誠一著『ガラスの恋人』

ミステリー、ハードボイルド、ラブストーリー。全ての要素を含んだ作品です。マル暴(暴力団対策課)の刑事の死体発見から物語が始まります。森村さんの刑事物ではおなじみの棟居や牛尾刑事はこの作品では脇役で、主人公は全く過去や背景の見えない謎の中年男桐生と、猫を介して彼と関わることになる少女翔子です。

この2人の関係がせつなくて清らかでとてもいいです。人生の夢や希望に背を向けたような寂しい者同士が行きがかりでともに暮らすことになり、命を狙われる少女とそれを圧倒的な危機回避能力で守ろうとする男。少女は男に惹かれていくのに、過去にこだわる男はかたくなに少女の思いを拒み続けます。読んでいてちょっと『レオン』を思い出しました。

一見無関係と思われる第2第3の事件が徐々に関連していき、終盤一気に収束していきます。抱きしめれば壊れてしまうガラス細工の人形のように大切にしていた少女を、悪の手によって手ひどく傷つけられ命を捨てて復讐に突き進む桐生。暴力団幹部を相手に行う彼の懲らしめ方が痛快で小気味良くて胸がすく思いです。このあたりは思いっきり派手な殺し合いを演じる『レオン』とは全く違います。

ラストはハッピーエンドかと期待を持たせ、そのあと崖から落とされるような気分を味わいますが、読者が勝手に想像を膨らませられる余地を残してくれています。

ただ最後まで桐生の過去の詳しいことが分からないのが不満として残ります。魅力的な造形で読者の心にグングン踏み込ませておいて、最後まで謎を残したままでは気になってたまりません。桐生の登場する他の作品もあるのでしょうか。もしあればぜひ読みたいものだと思いますが、この作品のレビュー自体少なくて、続編の存在はわかりません。



ストーブが入ると、へばりついちゃいますゥ。