よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

『摩天楼を夢見て』

久々にGyaO!の無料映画を見ました。なんだか安っぽい恋愛映画みたいな題名だけど、顔ぶれがとっても渋いしレビューでも好評なので見ることにしました。

見終わって、密度が濃くてまるで舞台劇のようだと思ったら、なんと原作はピューリッツアー賞文学賞を受賞した戯曲で、ロンドンで初演、日本の文学座でも演じられている『グレンギャリー・グレンロス』という作品を映画化したものだそうです。出演者は男ばかり。アル・パチーノジャック・レモンエド・ハリス、ケビン・スペーシー、アレック・ボールドウィンといったすごいメンバーです。

舞台はちょっとあやしげな(?)不動産会社。成績が落ちているらしく、本社からエリートが来て営業マンたちを叱咤するのですが、その言葉のひどいこと、パワーハラスメントバリバリ、そのうえトップと2位には賞品があるがそれ以下の者はクビだと言うのです。しかも言われている人たちはみんなそのエリートよりはるかに年上の人たちばかりです。今は落ちぶれているけれど、かつては素晴らしい成績を上げ会社に貢献したという自負を持つ人もいます。

外は土砂降りの雨、たいていの人々が家路へと急ぐ時間、なのに1件でも契約が取れないうちは帰るなと、若い支店長(ケビン・スペーシー)にも責められます。不満を抱きながら雨の中にそれぞれ出かけて行きますが、エド・ハリスは「会社はろくなネタもよこさないくせに、もうこんなのやってられない、会社の情報を盗んで売りさばきライバル会社に移ろう」と同僚をそそのかします。

その夜、その不動産会社に泥棒が入り会社の情報や電話などが盗まれます。警察が来て営業マン一人一人の事情聴取が始まり・・・で、事態は意外な展開を見せるのですが、なんといってもジャック・レモンの落ちぶれた営業マンが出色です。

アル・パチーノは相変わらずクールでかっこいい。1992年の作品なので彼は52歳、素敵なわけですね、男盛りです。脂の乗り切ったやり手営業マンで、解約を頼みに来た気弱な男性客とのやり取りでも実に言葉巧みに丸め込もうとし、あまりに相手の人が気の毒でひやひやしてしまいました。

営業マンたちの、本社のエリートにはぶつけられなかった鬱積や警察に犯人扱いされることへの不満が、現場も知らない若造のくせにということで支店長に向かいます。罵詈雑言を浴び普通ならかっとなってしまうところですが、この支店長は冷静で、そして切れ者でした。当時はまだ知名度は低かったでしょうが、さすがケビン・スペーシーがやはりキラリと光ります。

目下大人気の『半沢直樹』と同じテイスト。「男の戦場」を描いています。ただしこの作品には「倍返し」はなくほろ苦さを噛み締めるのですが・・・。