よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

『人口減少社会という希望』

これは広井良典先生の本を読んでの感想なのですが、読書感想というより社会問題についての論なので、このカテゴリに入れます。

私自身かねてより人口減少とか高齢化ということをなぜすぐに社会のマイナス要因と決め付けてしまうのか疑問に思っていたので、大変期待を持ってこの本を読みました。前半はまずまずの展開だったのですが、後半は宗教とか倫理とかという漠然としたことに広げてしまい、どんどんタイトルから離れていってしまいました。どこかでまた本論につなげるのだろうなと、だれがちな気持ちを抑えて読み進んだのですが、結局論旨が戻ることはなく広がりっぱなしで終わってしまいました。

もしかしたら後半の方が本当に広井先生の書きたかったことなのかもしれません。でもタイトルは『人口減少・・・』のほうが今の時代に訴求力があるからということでこのタイトルにし前半をつけたのであれば、ちょっと読者に失礼でしょう。国家の借金が1000兆円を越したことでもありますから、ここはやはり後半できちんと財政的な裏づけも論じ、前半で例示したヨーロッパの諸都市のような「スロー&オープン」で、「エコ&ソーシャル」で、コミュニティを大切にした「なつかしい未来」社会を日本に実現させていく可能性を力強く説いて頂きたかったと思います。

ただ、人類誕生からの20万年を振り返って、狩猟採集社会が成長拡大したあと第一の定常化期があり(心のビッグバン)、農耕社会が成長拡大したあと第二の定常化期がきて(枢軸時代/精神革命)、そして産業革命以来ひたすら物量的生産の量的拡大の坂を駆け上り続け転換点に来ている現在は第三の定常化の時期に入りはじめたのだという指摘はとても納得がいきます。もう拡大を図らず、精神的な充実を追求していくべきときにきているのだと思います。

日本は人口全体に占める「子ども・高齢者」の割合が、戦後から一貫して減り続け、2000年前後に「谷」を迎えて増加に転じ、今後2050年に向けて増え続けるという指摘はそれこそ「希望」と言えるのではないかと思いました。少子化ばかりが声高に言われるのでこの指摘は新鮮でした。もちろん内実は高齢者の増加ということでしょうが、見方が変われば違った対策も浮かんでくるというものでしょう。広井先生は「子ども・高齢者」は「地域密着」人口なので、そこに地域を活性化していくヒントもあるのではないかと言っています。

日本のものづくりは大切ですが、このグローバルな時代に価格面で発展途上の国に勝てる訳がありません。原発を再稼動させようが法人税を下げようが、非正規社員を増やし続けようが無理です。しかもその競争で国民が幸福になれるわけもありません。でも、人に対するサービスは国外に移すわけにはいきません。シンガポールの英国学校に子どもを入れる方や、フィリピンで日本の年金を受け取って暮らす高齢者もいるでしょうが、あくまでも大半の子どもや高齢者は地域に密着して暮らし続けるでしょう。

戦後の焼け野原から68年。いまやちまたに物はあふれ、食べ物は世界一たくさん捨てていると言われるほど物質的には豊かな国になった日本です。これまでとはまるで違う時代が始まっています。それなのに政界も財界もまだまだ古い感覚を引きずった人たちが上に居座っているので、対応しきれないのです。40代以下の若い方たちに期待しています。名誉欲とか金銭欲とかに無縁で、政治家を志したり出世を望んだりしないのでなかなか世の中に台頭してこないのでしょう。これはという人材がいたら、周りのみんなで押し出していかないといけません。そういう風にしない限り、新しい日本は生まれないでしょう。