よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

見わたすかぎり人生

GyaO!の無料動画で『見わたすかぎり人生』が見られます。まるで知らない作品でしたがとてもいい映画でした。思いがけないプレゼントをもらったような気分になれます。

ヨーロッパの若者の就職難はやはり相当なものなのだろうなと思います。これは2008年の作品なので、現在はもっと深刻でしょう。就職難、非正規雇用、非人間的なノルマや競争、いびつな家庭など、日本人も身につまされる問題が次々と出てきます。そんな中でも前向きに誠実にがんばるヒロイン、マルタ。恋人は遠いアメリカに行ってしまい、寂しい心の隙間にちょっぴり入り込みかけた男性には裏切られ、愛する母親は病気で失い・・・と、次々に辛いことが起きますが泣き言も愚痴も言いません。

マルタが心を動かした相手はパート労働の人々を救うための活動をしているのですが、この善意の行動が意外な悲劇的な事件を呼び起こしていきます。人生は必ずしも努力が報われ、願った方向に展開するとは限りません。

職場で起きた事件によってマルタはテレホンアポインターというパートの職も失いますが、応募した論文が採用になって賞金を獲得します。でも貴重なそのお金を彼女は仕事で知ったおばあさんのために使うことにして訪ねていきます。何度か電話で話しただけのおばあさんに温かく迎えられ、優しい言葉を掛けられて、気丈な彼女も思わずおばあさんの胸にすがり泣き崩れてしまいます。このシーンは、今こうして書いていてもまた涙がこみ上げてくる名シーンです。そしてそこに流れるケ・セラ・セラがとても効果的です。

思うように行かなくて悲しいこと辛いことの多い人生、でも、やっぱり生きるってまんざらじゃないね、っていうメッセージを感じます。真面目に暮らす全ての人への愛を込めたエールが聞こえてきます。

バスの乗客、通りを歩く人々、みんなが踊っているオープニング、そして殺されたはずの人や手錠を掛けられた犯人までもが踊っているラスト、と喜劇のスパイスを振りかけて、深刻になりすぎずに、でも現代社会の抱える問題を鋭く描いています。