よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

オリヲン座からの招待状

GyaOの昭和TVで『オリヲン座からの招待状』を見ました。なんて切なくて美しい物語なんでしょう。私などの年だと背景の昭和30年代の雰囲気でもうたまりません。映写室のシーンでは同じく映画館を舞台にしたあの名作『ニュー・シネマ・パラダイス』が重なります。

映画を深く愛する人が作るからか、映画や映画館をテーマにした作品はいいものが多いような気がしますが、それにしてもこの作品は、宮沢りえさんを起用したことですでに8割がた成功したと言ってもいいのではないでしょうか。とんねるずのバラエティーに出ていた頃や、貴乃花とのロマンスが注目を集めていた頃には、こんなにも素敵な女優さんになるとは思ってもいませんでした。時折週刊誌のグラビアで見るボサボサな髪型に奇抜なファッションも見事なら、お茶のCMや『たそがれ清兵衛』などでの落ち着いた着物姿も素晴らしい。そしてこの映画でのトヨのようにつましく暮らす薄幸の女性役で、質素な服装をするといっそう魅力が輝きを放ちます。

相手役の加瀬亮くんも不器用でまっすぐで純な役がピッタリでした。若い頃の二人が役のイメージにあまりにもはまっているため、年老いてからの原田芳雄さんと中原ひとみさんが(それぞれ魅力的でいい役者さんなのですが)、若い時のふたりと違いすぎて見ている側の気持ちが分断されるような違和感を覚えました。同じ役者が老けメイクで演じるか、そうでなければもう少しイメージの似ている人(私なら女優さんは香川京子さんあたり、男優さんは山本學さんとか加藤剛さんあたり?でも人によって好みも違うしやっぱり難しいかな)だったら、なおいっそうラストの感激も盛り上がったことだろうと思います。

現代を舞台にすればこのような純愛はもうウソっぽくて描けないのかもしれませんが、情熱的なセリフや濡れ場がなくとも心に響く愛は描ける、いえ、かえって現代では恋愛に付き物と思っているそうした表現に頼らない方が、むしろ説得力が出るようにさえ思います。トヨと留吉の人間性が日々の暮らしの中で丁寧に描かれるので、惹かれあっていくことにとても納得がいきます。売店の売れ残りのアンパンをロビーのソファで二人でかじり、留吉の口からポトリと落ちた餡を拾って自分の鼻にくっつけておどけてみせるトヨ、留吉の自転車をとりあげて疾走するトヨ、蚊帳の中の蛍のシーンとならんで記憶に残る美しいシーンです。

映画の紹介Yahoo映画http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id328377/

追記  後で読んだいくつかのネット上のレビューの中に、「周りの人間が全然描けてないのが残念」という意見があった。確かにいい作品は周囲の脇役までが丁寧に魅力的に描かれていることが多いし、そうすることで作品の深みが増すことは分かるけれど、この作品の場合はかえって周囲とのかかわりを描かないことで、二人の孤立と浮世離れした純愛が強調され、メルヘンのような清らかな作品にしているように思いました。