よんばば つれづれ

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本、動画等感想

どこの教室にもいそうな女の子の物語『マウス』村田沙耶香著

『コンビニ人間』に魅了されるあまり、もう少し村田沙耶香さんの著書を読んでみたいと思った。けれども、ネット上で紹介されているあらすじを読むと、『コンビニ人間』とは違って、少々私には読むのが辛そうな傾向の作品が多い。そうしたなかで、これなら・・・…

未消化なままご紹介『レトリックと哲学』中西満貴典著

ご紹介するのは、コスモス会などでご一緒する先輩Oさんがお貸しくださった本。著者はOさんの甥御さんだ。前回お借りしたのは『追憶の日米野球』という作品で、「昭和6年の日米野球を中心に据え、野球界や社会思潮、文化・ファッションなど、当時の新聞記事…

5年前のものだけど・・・『霊長類ヒト科動物図鑑』向田邦子著

5年も前の本の紹介エントリーだ。二十数個の星もいただいていて、ありがたいことに今も変わらずお読みいただいている方もいらっしゃるが、だいぶお顔ぶれも違っているので再掲させていただく。へたなりに、自分としては結構気に入っているものだ。 *** …

胸躍る冒険と浪漫そして鋭い金融資本主義への批判『遺産』笹本稜平著

内航貨物船の船長だった父を15歳の時海難事故で亡くした興田真佐人は、自身もこよなく海を愛し、理解ある大伯父の支援を受け水中考古学を専攻する。しかしそれで食べていくことはできず、豪華客船内のダイビング教室のインストラクターや、堪能な英語やス…

多数派の横暴を思い知る『コンビニ人間』村田沙耶香著

この世界は多数派の論理で回っているのだなという当たり前のことが、細胞で解ったような気分になる読書体験だった。 主人公の古倉恵子は、幼稚園児の頃、公園で青い綺麗な小鳥が死んでいるのに遭遇する。まわりの子供たちが泣きながらお墓を作ってあげようと…

アフガニスタンが近くなる『ソルハ』帚木蓬生著

ちょうど、少し前にペシャワール会から会報が届き、少雨と闘う中村医師たちの奮闘ぶりを読んでいたが、これはそのアフガニスタンを舞台にした、ビビという少女の成長物語だ。 ビビが5歳の頃の豊かなカブールのバザール(市場)の思い出から物語は始まり、希…

友達・夫婦・親子さまざまな人の繋がりが心に響く『ひとがた流し』北村薫著

『中野のお父さん』『太宰治の辞書』につぐ北村薫さん作品の3冊目だ。これまでとはまたテイストが違った。どれもそれぞれにいいけれど、感動の深さでは文句なしに本作だ。 四十代に入った3人の女性を中心に、その配偶者、娘たちを群像劇のように描いていく…

静かで温かな感動に満たされる『笑い三年、泣き三月。』木内昇著

焼け跡に闇市の立つ混乱の昭和21年から、世の中が徐々に落ち着き、貪欲に復興していく昭和25年までの時代を背景に、浅草でエロと笑いの世界に生きる人々の物語だ。 岡部善造は十三の歳に貧しい農家の親元を離れ、万歳芸の世界に飛び込んで三十年余を過ごして…

作家と編集者の世界が魅力『Miss You』柴田よしき著

主人公の江口有美は文潮社「小説フロンティア」の編集者。東大卒の26歳。東大出を鼻にかけない控えめな性格や「天然」と言ってもいい程度の鈍感さで、あまり周囲の妬みを買うこともなく、ほどほどで平穏な日々を送ってきた。担当した本の装丁で知り合ったデ…

胸をしめつけられるETV特集『宮沢賢治 銀河への旅』

先週土曜日夜に放送され、録画しておいたものを見た。もともとはBS4Kで前後編3時間にわたって放送されたものらしい。先週放送されたものはそれを1時間にまとめ直したもののようだ。3時間見たかった気がするが、今回Eテレで放送されたものも素晴らし…

紹介せずにいられなかった『歌川国芳 猫づくし』風野真知雄著

しばらく本の感想はお休みしようと思っていたのだけれど、題名に惹かれ、これなら楽しく読み流せそうだと手に取った本著、思いのほか味わい深くて、ご紹介しないのはもったいない気持ちになってしまった。 主人公はもちろん浮世絵師の歌川国芳。7つの連作短…

冷や汗ものの読書感想

marcoさん(id:garadanikki)が今日のエントリで言及してくださった。「端的でわかりやすいあらすじが書ける羨ましい人」として。いつもmarcoさんの深い読み方に感心し啓発されている私としては、非常に嬉しいことなのだけれども、あらすじは苦手なのでなんだ…

やっとスタートした冬ドラマ『みかづき』

今期のドラマでは一番遅いスタートではないだろうか。森絵都さん原作のドラマ『みかづき』が先週やっと始まった。今期、私の興味を引くドラマはあまりないし、原作が結構良かったので、このドラマの始まりを楽しみに待っていた。 原作を読んでの感想 yonnbab…

いろんな味が楽しめるアンソロジー『隠す』アミの会(仮)

「アミの会(仮)」という名の、女性作家11人からなる会があることを、今回初めて知った。2015年に最初のアンソロジー『捨てる』(この時点では9名)を出版しているようだ。何作か読んで好きになった柴田よしきさんや、先日ブログで紹介した『わたしの本の空…

文学をめぐる探索『太宰治の辞書』北村薫著

著者のデビュー作である『空飛ぶ馬』に始まる「円紫さんと私」シリーズの、17年ぶりとなる最新作(2015年出版)だそうだ。デビュー作では女子大生だった主人公の「私」は、小さな出版社の編集者となり、中学生の息子のいる母になっている。 第一作からのファ…

宮部さんらしさを満喫『希望荘』宮部みゆき著

このところ私の好みとは少々違う作品に当たって、肩すかしの感を受けていた宮部みゆきさんだったが、今回の『希望荘』は満足のいくものだった。 小泉孝太郎さん主演でドラマ化された杉村三郎シリーズの第四弾の作品で、杉村の経歴や過去に扱ってきた事件など…

明日目覚めるのが怖くなる?『わたしの本の空白は』近藤史恵著

ある日目覚めたら、自分がどこにいるのかも分からず、名前も年齢も何も思い出せない。どうやら自分がいる場所は病院らしく、身体的には何ら問題ないので退院してくださいと言われる。迎えに来た男は夫だと言うが、まるで親しみを感じることができない。夢の…

『ビブリア古書堂』やら『マスカレード・イブ』やら

入院して1週間もしないうちに、嫁からの『思い出のとき修理します』の4巻、そして『花だより』を読み終え、次に『ビブリア古書堂の事件手帖~扉子と不思議な客人たち~』を読み始めた。これも入院に備えてネット通販で購入しておいたものだ。 ビブリアシリ…

『花だより みをつくし料理帖 特別巻』高田郁著

入院に備えて買っておいた、大好きな『みをつくし料理帖』の最新刊で、そうして悲しいことに、多分最終巻となる。 yonnbaba.hatenablog.com yonnbaba.hatenablog.com yonnbaba.hatenablog.com このシリーズの本についての感想はこの3冊についてしか書いてい…

手紙を出しに行ける、たったそれだけのことと玲子さんの本

我が家から南郵便局まで、地図で確認すると1キロメートルもない。普通に歩けば、ほんの十数分のところだ。それが、歩いていけなかった。鎮痛剤を飲んで、杖を突いて、その杖に全体重を掛けんばかりにして歩いても、耐えられそうもなくて行けなかった。だか…

時計屋さんに恋する!『思い出のとき修理します』谷瑞恵著

入院と手術に付き添うため信州から来てくれた長男が、嫁からの見舞いとのことで全四巻(今後まだ増えるかも)のこのシリーズを持ってきてくれた。本さえあれば退屈はしないと、自分でも入院中に読むための本を何冊か買って、入院用の荷物の中に入れていたの…

心にしみる思いやり

今朝、珍しく8時過ぎに携帯電話が鳴った。スタンディングの活動で出会った友人が、昨日の受診の結果を聞いてきた。この友人はほとんどインターネットを利用しない。だから私のブログも読んではいない。でも、前に電話をくれた時に私が告げた受診の日にちを…

少し高い所の話、『雨降る森の犬』馳星周著

夫を亡くした後、奔放に女としての人生を生き始めた母親に嫌悪を感じ、伯父の元で暮らすことになった中学生の少女雨音が主人公だ。伯父は山岳カメラマンで、蓼科の別荘地で、バーニーズ・マウンテン・ドッグという大型犬のワルテルと暮らしている。これは、…

横山秀夫さんの原点『ルパンの消息』

『半落ち』『クライマーズハイ』『64』・・・と作品が次々映像化されている横山秀夫さんの、サントリーミステリー大賞で佳作を受賞したデビュー作だ。受賞したのは1991年だけれど、作品は出版されることなく、本作は15年後に改稿出版されたもの。 昨日見守り…

登場人物の誰かは自分自身『乱反射』貫井徳郎著

以前AO153さんが紹介していらした『乱反射』を読んだ。 相馬野馬追・オウム死刑囚の刑執行に思う・貫井徳郎「乱反射」 - A0153の日記 プロローグのあと、マイナス44章から始まって運命のゼロへと向かい、やがてプラスの数になり37章のあとエピローグで終わる…

何層もの入れ子構造の『後巷説百物語』京極夏彦著

地区市民館の書棚で見つけ、猛暑地獄を少しは涼しくしてくれるのではないかと借りてみた。 六つの話が収録されているのだけれど、非常に凝った作りになっていて、五重の入れ子構造のようになっている。最初の1ページには、江戸時代に刊行された奇談集『繪本…

江戸時代のおくりびとの話『出世花』『蓮花の契り』高田郁著

本木雅弘さんの映画がヒットしてすっかり世間に認知された「おくりびと」の仕事だが、この物語は江戸時代を背景に、檀家寺でない墓寺でその仕事に携わる女性を主人公にしたものである。 ヒロインの艶は、不義密通の大罪を犯して男と出奔した母を討つ、「妻敵…

なんとも凛々しい女たち『朱唇』井上祐美子著

まだ纏足が女性の美しさの要素であった時代の中国の話。妓女と呼ばれた職業女性のなかでも、日本の花魁にあたるようなかなり上層部の女性たちの物語を集めた短篇集だ。 標題になっている「朱唇」と、「背信」「牙娘」「玉面」「歩歩金蓮」「断腸」「名手」の…

ものがたり受難の時代だからこそ・・・『孤軍』笹本稜平著

高齢の資産家が50歳も若い女性と結婚すると間もなく怪死した事件や、プロ棋士の藤井聡太七段の破竹の活躍。大怪我から復帰するや、奇跡のようなオリンピック連覇を成し遂げてしまった羽生結弦選手に、プロでありながらピッチャーで四番打者もこなしてしまう…

戦争の理不尽さが胸にしみる『天切り松闇がたり 第四巻』浅田次郎著

昨年第一巻を読みとても面白かった「昭和侠盗伝」シリーズの第四巻だ。 浅田次郎著『天切り松闇がたり 闇の花道』は、絶滅したかもしれない粋でいなせな闇の世界の物語【写真を追加】 - よんばば つれづれ グウタラでばくち好きのろくでもない父親のために、…