読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

『ノラや』を読んで百閒先生に嫉妬する

以前ゑぽむさんにお教えいただいた本。内田百閒著『ノラや』を読んだ。 わたくしごときが百閒先生と競ったとてせんないことなのですが、改めて筆力の違いを思い知らされた。百閒先生はノラと1年半しか一緒に暮らしていないのに、どうしてこんなにノラの愛ら…

『浮浪児1945- 戦争が生んだ子供たち』石井光太著

著者は今までアジアや中東やアフリカの貧しい国々を取材し、貧困、紛争、犯罪といったことのルポルタージュを書いてきた人だ。そうした中で多くのストリートチルドレンを目にした。ところが、そうした国々でもその国が経済発展をすると、わずか1年、2年と…

新しい浅田さんに戸惑う、『ブラックオアホワイト』浅田次郎著

やはり、たとえ宮部みゆきさんでも浅田次郎さんでも、はずれはあるのだなと知った。もちろん自分の好みの問題であるのだろうけれど。 宮部さんは『英雄の書』であり、浅田さんはこの『ブラックオアホワイト』だった。 今まで浅田さんの作品は読み始めるとす…

『愛のひだりがわ』筒井康隆著 犬と話す少女の冒険と成長

不思議な題名だけれど、愛という名前の少女と、彼女の左側に寄り添って彼女を守るものたちが次々に登場する、冒険と成長の物語だ。 小学6年生の愛は、小さい時野良犬にかまれ、しかもその時の治療が適切でなかったために左腕が不自由だ。父親は事業に失敗し…

堤幸彦監督『くちづけ』 誰もが当たり前に幸せを求められる社会に

夕方5時半、スタンディングするのなら家を出る時刻だ。でも、今日は休ませてもらうことにする。日曜日は「ソングスペシャル」。平日は仕事の都合で参加不可能な保育士さんたちが先々週の日曜日あたりから参加してくれて、日頃子供たちと歌っているお得意の歌…

たまにはお題に応えてみよう

今週のお題「人生に影響を与えた1冊」 このところ政治に頭が占められて視野が狭くなっている。それでなくともあまり変化のない生活をしているのに、さらにブログのテーマも偏りつつあるように感じているので、たまには目先を変えてお題で書いてみる。と言っ…

『満州難民』三八度線に阻まれた命 井上卓弥著

今まで手記や小説に描かれた満州引き上げの話はだいぶ読んできたけれど、戦後70年の節目に出版されたこの本は、おそらく「初の本格的ノンフィクション作品」ということで手にした。 1945年8月9日、ソ連軍が国境を破って満州に侵攻した。この日を境にして大陸…

『旅猫リポート』有川浩著 ハチに似た猫ナナのお話

読み終わってから一週間ほどたってしまったけれど、どうしてもこの本のことは書いておきたい。 題名も村上勉さんの表紙も楽しそうな感じがして、猫だし、この雰囲気だし、心がほっこりするようなお話かな?と思って手にした。「吾輩は猫である。名前はまだ無…

映画『人の望みの喜びよ』

インディペンデントの本作、主役の姉弟の姉を演じる大森絢音さんが豊橋出身(というか在住)という縁で、穂の国とよはし芸術劇場プラットのアートスペースにて本日3回上映。本来は2回だったのだけれど、チケットの売れ行きが好調で急遽3回に増やされたの…

権力はかくも暴走する『時代の正体』

予約をしておいた本が届いた。神奈川新聞取材班による『時代の正体ー権力はかくも暴走するー』である。 「立ち上がる若者たち」としてまずSEALDsを紹介し、沖縄や横須賀の米軍基地の問題に進み、ヘイトスピーチを論じ、「戦後70年」の歴史のとらえ方や教科…

さらに『しのびよる破局』辺見庸著

この本はまだ東日本大震災も起きていない2009年に出版されたものだ。けれども今読んでもまるで違和感を感じない。「ああ、これは解決されてしまったな」とか「現在は軌道修正されているな」とか思えることがほとんどなかった。つまり我々にはますます破局が…

今読むと妙にリアルでこわい『日本難民』吉田知子著

なんだかよく分からないけど、ある日突然連合国が日本を抹殺することにして攻撃を始める。情報は入っていたらしいのに、どうやら政府はそれを軽視していたらしい。動揺を恐れて国民には一切知らせなかった。いや、そんなことあり得ないと思っていたらしい・・・…

『漱石の長襦袢』半藤末利子著

キンドル版で半藤一利さんの『昭和史』を読んでいるときに、市民館の図書室で奥様のこの本と遭遇した。もうこれは読むしかないでしょ、と借りて来た。 私は特に漱石ファンではないけれど、割合と漱石の本は読んでいる。若い頃、日本の作家の小説はどうも陰気…

変人中年ヒーローの『隠蔽捜査』今野敏著

昨 年の冬ドラマで杉本哲太と古田新太のダブル主演で放送され、視聴率は芳しくなく、結局この後しばらくして月曜8時(水戸黄門の後の枠)のTBSのドラマ枠自体も消滅してしまった。 でも、この『隠蔽捜査』は間違いなくとても良い作品だった。脚本も矛盾やご…

魅力的な沖縄の女性(ひと)『星の衣』高橋治著

小さめの活字でしかもページ数は600ページ近い長編だけれど、引き込まれて結構短期間に読んでしまった。1996年の吉川英治文学賞受賞作。 年代の違う二人の沖縄の女性が主人公で、物語はその二人の視点で交互に進んでいく。二人には沖縄という以外接点はない…

スカッと爽やか!『任侠学園』

梅雨時の憂鬱をスッキリ爽やかに解消する本を・・・とご紹介しようと思っていたら、天気の方がひと足先にスッキリしてしまった。 警察小説で有名な今野敏さんの任侠シリーズものだ。『隠蔽捜査』やボディガード工藤を主人公にしたハードボイルドものと違って、…

久々に普通の格好してるジョニー・デップ

というタイトルにしたけれど、そもそもこの映画は今から10年前の作品だ。普通の格好の役柄の彼を私が久々に見た、ということだ。作品は『ネバーランド』。 世界中知らない人はいなんじゃないかというくらい有名な『ピーター・パン』の原作者ジェームス・バリ…

死よりむごい運命 『ルール』古処誠二著

舞台は第二次大戦下のフィリピン。左耳を半分失った中尉鳴神と、背中に雲龍の彫物を入れた軍曹姫山、平和な世であれば寺を継いで美しい僧侶になっていたであろう一等兵八木沢。この3人の日本兵を中心に、戦争末期、最も苛酷だった時期の苛酷だった場所に置…

『四十九日のレシピ』伊吹有喜著

何年か前にNHKのドラマで見たがとても良かったので、市民館の図書室でこのタイトルを見つけて迷わず借りて来た。 主人公は突然妻に先立たれた初老の熱田(ドラマでは伊東四朗)か。彼はかつて最初の妻にも2歳の娘を残して死なれている。その娘も嫁いでいる…

『おだまり、ローズー子爵夫人付きメイドの回想ー』華麗なる貴族の世界

アメリカ生まれでイギリス子爵夫人、そしてイギリス初の女性国会議員だったというレディ・アスターという実在した人物と、そのお付きメイドとして35年間を共に過ごしたロジーナ(ローズ)・ハリソンという、女性二人の物語だ。 ちょうどテレビドラマ『ダウン…

宮本輝さんのエッセイ『いのちの姿』

宮本さんの小説は大分読んだけれど、エッセイは初めて。そもそもエッセイというジャンルの作品をこのところ避けていたのだが、どなたかのブログでこの書評を読み興味を持った。 とても良かった。とりわけ冒頭の数編は親子兄弟といった家族の情愛と、血のつな…

昭和30年の女優、男優たちー映画『あした来る人』を見て

目にした時刻が信じられず、思わず柱時計を見直した。もう5時近い?!そうか、おやつの頃からGyaoの無料映画を見始めたのだから、不思議ではない。随分日が長くなったものだ。 『あした来る人』という1955年の日活の作品を見た。山村聰さんが白髪で恰幅の良…

不幸の分だけちゃんと幸せになるよ・・・シエの優しさに泣く

浅田次郎さんの短編集『姫椿』を読んだ。浅田さんは『蒼穹の昴』のような長編も素晴らしいし、映画にもなって広く知られている『鉄道員』のような短編も素晴らしい。十数年前に出されたこの短編集には心温まる8編が収められているのだけれど、いきなり冒頭…

一途な思いが胸を打つ『いとしの儚100days LOVE』を見た

東三河の演劇団体合同の公演『いとしの儚(はかな)』を見に愛知御津まで出かけた。豊橋駅からJR東海の下り普通列車で2駅目。会場のハートフルホールはその駅から徒歩10分とのこと。スマートフォンであらかじめ会場までのアクセスを検索し、一番分かり易…

素敵な熟年男優5人の『海をゆく者』

小日向文世、吉田鋼太郎、浅野和之、大谷亮介、平田満、の5人だけの舞台。男くささ(舞台は別の"臭さ"が設定されていて笑えるのだが)ムンムンで、ほとんどみんなアル中状態のしょうもないオヤジばかりなのだけれど、それぞれとても魅力的だった。でもやっ…

『真実の「わだつみ」』学徒兵木村久夫の二通の遺書

8月にnumapyさんがブログで紹介していらした。新聞の書評欄などでも紹介され、図書館では順番待ちだった。木村久夫さんは京都大学(当時は京都帝国大学)の学生の時に応召、結核で一時陸軍病院に入院するも、半年余で退院しインド洋のカーコニバル島に配属…

恐るべし、演劇老人集団「さいたまゴールド・シアター」

団員の平均年齢75歳という「さいたまゴールド・シアター」の『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』を、豊橋芸術劇場プラットで見た。なんとエネルギッシュで前衛的!被告役の2人を除いて、ほとんど出ているのは老人ばかりだ。役柄も老人だけれど、演じているの…

優しい妖怪バンブーのお話『ほんとうの花を見せにきた』

著者は桜庭一樹さん。なんて繊細な感性を持った男性だろうと感心しながら読んでいたら、女性だった。やっぱりねえ。本の半分余りを『ちいさな焦げた顔』という第一作が占め、表題作は二番目で50ページほどの短編で、三作目もほぼ同じくらいの短編『あなたが…

重松清の描く阿久悠『星をつくった男』

重松さんが阿久悠さんをモデルに書いた小説だと思って手に取ったが、ノンフィクションの評伝だった。書かれる阿久さんという人間も魅力的なのだろうが、やはり重松さんの筆力に負うところも非常に大きく、素晴らしい人物評論であり時代評論になっている。 8…

猫が残念!『女系の総督』あとちょっと言葉・・・

藤田宜永さんの作品。この方は小池真理子さんのご主人なのですね。この本を書くヒントになったのもその奥様(ふたり姉妹)なのだとか。 この著者の作品を読むのは初めてで、何となく名前の感じから堅そうなイメージだったので、へえ、こういう柔らかなものを…

『櫻の園〜最後の楽園〜』豊橋演劇塾の公演です

『櫻の園〜最後の楽園〜』あまちゃんでも女優としての存在感を発揮した木野花さん作の演劇。穂の国豊橋芸術劇場(プラット)で今日と明日、豊橋演劇塾によって上演される。 2週間ほど前、去年数か月在籍して結局すぐ退団してしまい、ご迷惑をおかけしただけ…

『クローズアップ』今野敏著、と・・・。

テレビ局の報道部記者布施と警視庁の黒田刑事を中心とするシリーズの3作目の作品。長年の与党から政権交代で野党第一党となった政党の大物政治家と、反社会的勢力の癒着の闇を暴くストーリーは、実際にもこんなことはあるかも・・・と思わせるに十分なリア…

『赤目四十八滝心中未遂』車谷長吉著

社会の底辺に暮らす人々の猥雑な風景を描きながら、実に清らかな話だという印象を受けた。有名大学を出ながら会社勤めの生き方になじめず、自ら無頼の世界に落ちていく主人公生島も、その生島が惹かれていく美貌の女アヤも、ずるく立ち回る気になればもっと…

宮沢賢治をひとり語り 林洋子さんの世界

長年宮沢賢治の作品のひとり語りをなさっている、林洋子さんの舞台を見に。会場は穂の国豊橋芸術劇場(プラット)のアートスペース、200席余のこぢんまりした空間なので演者との距離が近い。開演時刻が来て場内が暗くなり、チリーン、チリーンと澄んだ鈴の音…

『それでも猫は出かけていく』ハルノ宵子著

著者は吉本隆明氏の長女、ばななさんのお姉さん。漫画家で自称開店休業中ということだけれど、この本の猫たちを見れば、その画力が尋常でないことはよく分かる。生き生きとして、個性的で、単なるイラストではなく、読む者の心にそれぞれの猫がスルリと入っ…

想像力を刺激する『枯木のある風景』ー「近代日本の絵画名品展」改題ー

えむこさんが期待を上回る素晴らしさだと書いていらした、今回の豊橋市美術博物館の企画展。開館35周年を記念する催しでもある。前売り券は早々に手に入れていたのに、なにやかやと出かけるのが遅れ、今日やっと見に行って来た。やはり、とても見ごたえがあ…

『首都感染』高嶋哲夫著

2010年に出版された本なので、ちょうどあの、空港での検疫などが行われた新型インフルエンザの騒ぎの後で執筆されたのだろう。おりしも今は毎日のようにエボラ出血熱のニュースを耳にしているので、感染力こそこの物語のウイルスほど強くはないけれど、いか…

『世界の果ての通学路』輝く子供の瞳

見たいと思いながら見られずにいた映画を、思いがけなく見ることができた。平和教育出前授業で交流のある小学校が、ユネスコスクールの登録をしたことで県から助成金を受け、せっかくだから記念になる使い方をしたいと、映画鑑賞会を催され、私たち豊橋ユネ…

八路軍に強制抑留され戦闘員となった少年の記録『大陸流転』

先日行った満蒙開拓平和記念館で、仲間が求めてきた本が回って来て読んだ。著者は長野県旧富草村から、昭和15年10歳の時に両親と渡満。終戦に伴い逃避行、収容所生活を体験し、途中八路軍に抑留され8年間の長きにわたって戦闘に参加させられた。昭和28年8…

『流れる星は生きている』藤原てい著

今更ではあるが、『国家の品格』の藤原正彦さんの母上の著書。夫の仕事について渡った満州で終戦を迎え、夫は使命感から現地に残ることを選ぶため、女一人で幼児2人と乳飲み子を抱えて引き揚げた体験をもとに綴った物語だ。よくぞ3人の子を無事に連れ帰っ…

『一九四五年の少女』澤地久枝著

ー私の「昭和」−と副題にあるように、『妻たちのニ・二六事件』を始めとして数多くの戦争にまつわるノンフィクション作品を著してきた著者の、戦後昭和の総括のような本である。敵であるアメリカ兵の遺族から、戦争中に自分と同じような少女期を過ごしたドイ…

喜多郎コンサート

急に都合が悪くなって行けなくなった人のチケットをいただいて、喜多郎さんのコンサートに行って来た。豊橋市の公益財団法人国際交流協会の設立25周年を記念する事業で、無料。広報で案内があったけれど抽選なのでスルーしてしまった。抽選というものは大抵…

「中神敬子 日本画展」を見に

ほの国百貨店美術画廊で開催中の「中神敬子 日本画展」を見に出かけた。10年ほど前に西武百貨店が閉店してから、この街の唯一の百貨店だった丸栄が、2012年から独立した運営になり、この珍しい名称のデパートになった。私は西武があった頃は仕事帰りにちょく…

『あなたに、大切な香りの記憶はありますか?』

この前のアンソロジーはちょっとガッカリの巻でしたが、今回は佳作揃いで楽しい読書となりました。 収録作品は、夢の香り 石田衣良 父とガムと彼女 角田光代 いちば童子 朱川湊人 アンタさん 阿川佐和子 ロックとブルースに還る夜 熊谷達也 スワン・レイク …

『不可能犯罪コレクション』二階堂黎人編

江戸川乱歩賞や鮎川哲也賞受賞者やその他の、40代から50代初めの作家の書き下ろし作品ばかり6編のアンソロジー。いかにもまだ練れていない印象を受ける作品もあるが、不可能犯罪という難しいテーマに縛られながら、どの作品もまずまず楽しめるものにはなっ…

『カルタヘナ〜陽だまりの絆〜』久々のGyaO

台風で外出も危険だし、久々にGyaOの無料映画を鑑賞した。副題の「陽だまりの絆」って、なんかベタベタした感じで安っぽくて、ない方がいいんじゃないかという気がする。でも『カルタヘナ』ではどんな映画かまるで分らない。原題は『ベッドサイドの男』とい…

『霊長類ヒト科動物図鑑』向田邦子著、お見事!

久々に小気味良い日本語を堪能し、充実した読後感だ。それとともに、描かれている世界も含めて、私たちはなんとも素晴らしい大切なものを失ってしまったことよと痛感し、寂しい気持ちにもさせられる。その寂しさは、向田邦子という練達の書き手を思いがけぬ…

残念だった『借りぐらしのアリエッティ』。好きな人は読まないでね。

古い家の床下に住む小人たち、なんて魅力的な設定かと思う。原作は読んでいないけれど、面白そうな気がする。なのに、映画は残念な作品になっていた。なんだか安っぽい「コイバナ」でしかなかったような印象だ。人物描写やストーリー展開がちょっとずつ浅い…

『THE BIG FELLAH』観劇、感激! 訂正しました。

[訂正] 重大な間違いが・・・。最後の場面は2001年3月ではなく、9月です。9.11です。 本でも動画でもなく、本日は舞台の感想です。チケット争奪は敗れ果てて、同じS席でもかなりはじっこですが仕方ありません。それでも去年完成した800席弱の演劇専用劇…

『ハピネス』桐野夏生著、ディスアポインティング!

桐野さんの本だけに、初め私はとても緊張しながら読んでいた。舞台は東京のベイエリアに建つ超高層マンション。折りしも強風の日にヒロイン有紗は、物を置くことを禁じられているベランダに我が子の砂遊び用のプラスチックのバケツとシャベルを置いておいた…