よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

本、動画等感想

ドラマ『パンとスープとネコ日和』から群ようこさんの『三人暮らし』を読む

先日Huluで久しぶりに『パンとスープとネコ日和』を見た。 やっぱり、心が穏やかになってとても良いドラマだと思う。主人公のアキコを演じる小林聡美さんはじめ、もたいまさこさんや光石研さんなど荻上監督の作品でおなじみの俳優陣もいいし、アキコが始める…

「いちにじゅうパジャマでもいいみらい」とか、『それしかないわけないでしょう』ヨシタケシンスケ著

大人にも人気の絵本作家、ヨシタケシンスケさんの作品。 私が子供のころの未来は、いつもバラ色だった。今、未来のことを考えると、日本はもちろん、世界に目を向けても、想像される未来は暗い。60年前に比べて現在の社会は物質的には豊かになったけれど、子…

時代に翻弄された恋『恋歌』朝井まかて著

今回の『恋歌』は、7月に朝井まかてさんの『眩(くらら)』の感想をアップした折り、AO153(id:A0153)さんがコメントでご紹介くださった作品だ。 明治時代に『藪の鶯』を書いた三宅花圃が語り手となって、短歌の師である中島歌子が幕末の水戸でたどった数奇…

人間の愚かさと崇高さを考えさせる『ヒトラーの忘れ物』

深夜に放送された映画を録画して観賞。2015年デンマークとドイツの共同製作作品。原題はUnder sandet(Land of Mine)。 舞台は1945年5月、ドイツが降伏したばかりのデンマークだ。捕虜となったドイツ兵たちが延々と歩かされている道を、1台のジープが通りか…

平凡な女の平凡でない生き方『風化する女』木村紅美著

会社を三日も無断欠勤したため、上司の手配でアパートのふとんの中で硬くなっているのを発見された四十三才の「れい子さん」。 この後に続く「会社では九時から五時まで口をへの字形にむすび、ふちのない眼鏡をかけ、長い髪は黒いゴムでひとつに束ねて、もく…

生きること、死ぬこと・・・『リメンバー・ミー』を観て

何十年ぶりかでディズニー映画を見た。6月に孫の吹奏楽部の演奏会で信州に行った折り、嫁が貸してくれたDVDの『リメンバー・ミー』だ。 彼女は私がディズニー作品にあまり興味がないのを知っていて、自分もまるで見るつもりはなかったのだが、息子(私か…

北斎の娘と渓斎英泉が魅力的な『眩(くらら)』朝井まかて著

一昨年NHKで宮﨑あおいさんが主演したドラマの原作本である。ドラマも大変見ごたえがあって記憶に残る作品(2017年度の文化庁芸術祭大賞を受賞したそうだ)だったが、この原作も素晴らしいものだった。どこまでが史実でどこからが創作か分からないが、北…

誰の立場で読みますか『私が誰かわかりますか』谷川直子著

人は誰も老いる。いくらお金があっても、どんなに強大な権力を握っても。そして最後まで尊厳が守られるかどうかも、わからない。その「老い」の周辺でオロオロするさまざまな立場の人間たち。配偶者・息子・娘・嫁・親戚・・・。 物語の中心となるのは、再婚し…

京のみやびと茶道を堪能『雨にも負けず粗茶一服』松村栄子著

面白いと思ったらやはり人気があるようで、シリーズ化されているようだ。 『至高聖所』で芥川賞を受賞したという著者(寡聞にして存じ上げず)の、青春エンターテインメント小説で、楽しくスイスイ読めてしまう。花嫁修業(死語!)でほんの少し習っただけの…

面白かった村田沙耶香さんの脳世界

村田沙耶香さんという作家に興味を覚え、最近めったに読まないエッセイ集を読んだ。『となりの脳世界』。 自分ではない誰かの脳を借りて、そこから見える世界をのぞいてみたいなあといつも思っているという村田さんが、デビューから15年の間に、あちこちで書…

スクリーンで会いたい!『とっぴんぱらりの風太郎』万城目学著

以前なにかの書評で目にして、読みたいと思ってメモしておきながらそのままにしていて、その後marcoさんのブログを読んでますます興味を募らせた。 garadanikki.hatenablog.com それからさらに半年。やっと『とっぴんぱらりの風太郎』を読んだ。といっても、…

どこの教室にもいそうな女の子の物語『マウス』村田沙耶香著

『コンビニ人間』に魅了されるあまり、もう少し村田沙耶香さんの著書を読んでみたいと思った。けれども、ネット上で紹介されているあらすじを読むと、『コンビニ人間』とは違って、少々私には読むのが辛そうな傾向の作品が多い。そうしたなかで、これなら・・・…

未消化なままご紹介『レトリックと哲学』中西満貴典著

ご紹介するのは、コスモス会などでご一緒する先輩Oさんがお貸しくださった本。著者はOさんの甥御さんだ。前回お借りしたのは『追憶の日米野球』という作品で、「昭和6年の日米野球を中心に据え、野球界や社会思潮、文化・ファッションなど、当時の新聞記事…

5年前のものだけど・・・『霊長類ヒト科動物図鑑』向田邦子著

5年も前の本の紹介エントリーだ。二十数個の星もいただいていて、ありがたいことに今も変わらずお読みいただいている方もいらっしゃるが、だいぶお顔ぶれも違っているので再掲させていただく。へたなりに、自分としては結構気に入っているものだ。 *** …

胸躍る冒険と浪漫そして鋭い金融資本主義への批判『遺産』笹本稜平著

内航貨物船の船長だった父を15歳の時海難事故で亡くした興田真佐人は、自身もこよなく海を愛し、理解ある大伯父の支援を受け水中考古学を専攻する。しかしそれで食べていくことはできず、豪華客船内のダイビング教室のインストラクターや、堪能な英語やス…

多数派の横暴を思い知る『コンビニ人間』村田沙耶香著

この世界は多数派の論理で回っているのだなという当たり前のことが、細胞で解ったような気分になる読書体験だった。 主人公の古倉恵子は、幼稚園児の頃、公園で青い綺麗な小鳥が死んでいるのに遭遇する。まわりの子供たちが泣きながらお墓を作ってあげようと…

アフガニスタンが近くなる『ソルハ』帚木蓬生著

ちょうど、少し前にペシャワール会から会報が届き、少雨と闘う中村医師たちの奮闘ぶりを読んでいたが、これはそのアフガニスタンを舞台にした、ビビという少女の成長物語だ。 ビビが5歳の頃の豊かなカブールのバザール(市場)の思い出から物語は始まり、希…

友達・夫婦・親子さまざまな人の繋がりが心に響く『ひとがた流し』北村薫著

『中野のお父さん』『太宰治の辞書』につぐ北村薫さん作品の3冊目だ。これまでとはまたテイストが違った。どれもそれぞれにいいけれど、感動の深さでは文句なしに本作だ。 四十代に入った3人の女性を中心に、その配偶者、娘たちを群像劇のように描いていく…

静かで温かな感動に満たされる『笑い三年、泣き三月。』木内昇著

焼け跡に闇市の立つ混乱の昭和21年から、世の中が徐々に落ち着き、貪欲に復興していく昭和25年までの時代を背景に、浅草でエロと笑いの世界に生きる人々の物語だ。 岡部善造は十三の歳に貧しい農家の親元を離れ、万歳芸の世界に飛び込んで三十年余を過ごして…

作家と編集者の世界が魅力『Miss You』柴田よしき著

主人公の江口有美は文潮社「小説フロンティア」の編集者。東大卒の26歳。東大出を鼻にかけない控えめな性格や「天然」と言ってもいい程度の鈍感さで、あまり周囲の妬みを買うこともなく、ほどほどで平穏な日々を送ってきた。担当した本の装丁で知り合ったデ…

胸をしめつけられるETV特集『宮沢賢治 銀河への旅』

先週土曜日夜に放送され、録画しておいたものを見た。もともとはBS4Kで前後編3時間にわたって放送されたものらしい。先週放送されたものはそれを1時間にまとめ直したもののようだ。3時間見たかった気がするが、今回Eテレで放送されたものも素晴らし…

紹介せずにいられなかった『歌川国芳 猫づくし』風野真知雄著

しばらく本の感想はお休みしようと思っていたのだけれど、題名に惹かれ、これなら楽しく読み流せそうだと手に取った本著、思いのほか味わい深くて、ご紹介しないのはもったいない気持ちになってしまった。 主人公はもちろん浮世絵師の歌川国芳。7つの連作短…

冷や汗ものの読書感想

marcoさん(id:garadanikki)が今日のエントリで言及してくださった。「端的でわかりやすいあらすじが書ける羨ましい人」として。いつもmarcoさんの深い読み方に感心し啓発されている私としては、非常に嬉しいことなのだけれども、あらすじは苦手なのでなんだ…

やっとスタートした冬ドラマ『みかづき』

今期のドラマでは一番遅いスタートではないだろうか。森絵都さん原作のドラマ『みかづき』が先週やっと始まった。今期、私の興味を引くドラマはあまりないし、原作が結構良かったので、このドラマの始まりを楽しみに待っていた。 原作を読んでの感想 yonnbab…

いろんな味が楽しめるアンソロジー『隠す』アミの会(仮)

「アミの会(仮)」という名の、女性作家11人からなる会があることを、今回初めて知った。2015年に最初のアンソロジー『捨てる』(この時点では9名)を出版しているようだ。何作か読んで好きになった柴田よしきさんや、先日ブログで紹介した『わたしの本の空…

文学をめぐる探索『太宰治の辞書』北村薫著

著者のデビュー作である『空飛ぶ馬』に始まる「円紫さんと私」シリーズの、17年ぶりとなる最新作(2015年出版)だそうだ。デビュー作では女子大生だった主人公の「私」は、小さな出版社の編集者となり、中学生の息子のいる母になっている。 第一作からのファ…

宮部さんらしさを満喫『希望荘』宮部みゆき著

このところ私の好みとは少々違う作品に当たって、肩すかしの感を受けていた宮部みゆきさんだったが、今回の『希望荘』は満足のいくものだった。 小泉孝太郎さん主演でドラマ化された杉村三郎シリーズの第四弾の作品で、杉村の経歴や過去に扱ってきた事件など…

明日目覚めるのが怖くなる?『わたしの本の空白は』近藤史恵著

ある日目覚めたら、自分がどこにいるのかも分からず、名前も年齢も何も思い出せない。どうやら自分がいる場所は病院らしく、身体的には何ら問題ないので退院してくださいと言われる。迎えに来た男は夫だと言うが、まるで親しみを感じることができない。夢の…

『ビブリア古書堂』やら『マスカレード・イブ』やら

入院して1週間もしないうちに、嫁からの『思い出のとき修理します』の4巻、そして『花だより』を読み終え、次に『ビブリア古書堂の事件手帖~扉子と不思議な客人たち~』を読み始めた。これも入院に備えてネット通販で購入しておいたものだ。 ビブリアシリ…

『花だより みをつくし料理帖 特別巻』高田郁著

入院に備えて買っておいた、大好きな『みをつくし料理帖』の最新刊で、そうして悲しいことに、多分最終巻となる。 yonnbaba.hatenablog.com yonnbaba.hatenablog.com yonnbaba.hatenablog.com このシリーズの本についての感想はこの3冊についてしか書いてい…