よんばば つれづれ

民主主義を機能させる、自立した「ひとり」でありたい

本、動画等感想

明日目覚めるのが怖くなる?『わたしの本の空白は』近藤史恵著

ある日目覚めたら、自分がどこにいるのかも分からず、名前も年齢も何も思い出せない。どうやら自分がいる場所は病院らしく、身体的には何ら問題ないので退院してくださいと言われる。迎えに来た男は夫だと言うが、まるで親しみを感じることができない。夢の…

『ビブリア古書堂』やら『マスカレード・イブ』やら

入院して1週間もしないうちに、嫁からの『思い出のとき修理します』の4巻、そして『花だより』を読み終え、次に『ビブリア古書堂の事件手帖~扉子と不思議な客人たち~』を読み始めた。これも入院に備えてネット通販で購入しておいたものだ。 ビブリアシリ…

『花だより みをつくし料理帖 特別巻』高田郁著

入院に備えて買っておいた、大好きな『みをつくし料理帖』の最新刊で、そうして悲しいことに、多分最終巻となる。 yonnbaba.hatenablog.com yonnbaba.hatenablog.com yonnbaba.hatenablog.com このシリーズの本についての感想はこの3冊についてしか書いてい…

手紙を出しに行ける、たったそれだけのことと玲子さんの本

我が家から南郵便局まで、地図で確認すると1キロメートルもない。普通に歩けば、ほんの十数分のところだ。それが、歩いていけなかった。鎮痛剤を飲んで、杖を突いて、その杖に全体重を掛けんばかりにして歩いても、耐えられそうもなくて行けなかった。だか…

時計屋さんに恋する!『思い出のとき修理します』谷瑞恵著

入院と手術に付き添うため信州から来てくれた長男が、嫁からの見舞いとのことで全四巻(今後まだ増えるかも)のこのシリーズを持ってきてくれた。本さえあれば退屈はしないと、自分でも入院中に読むための本を何冊か買って、入院用の荷物の中に入れていたの…

心にしみる思いやり

今朝、珍しく8時過ぎに携帯電話が鳴った。スタンディングの活動で出会った友人が、昨日の受診の結果を聞いてきた。この友人はほとんどインターネットを利用しない。だから私のブログも読んではいない。でも、前に電話をくれた時に私が告げた受診の日にちを…

少し高い所の話、『雨降る森の犬』馳星周著

夫を亡くした後、奔放に女としての人生を生き始めた母親に嫌悪を感じ、伯父の元で暮らすことになった中学生の少女雨音が主人公だ。伯父は山岳カメラマンで、蓼科の別荘地で、バーニーズ・マウンテン・ドッグという大型犬のワルテルと暮らしている。これは、…

横山秀夫さんの原点『ルパンの消息』

『半落ち』『クライマーズハイ』『64』・・・と作品が次々映像化されている横山秀夫さんの、サントリーミステリー大賞で佳作を受賞したデビュー作だ。受賞したのは1991年だけれど、作品は出版されることなく、本作は15年後に改稿出版されたもの。 昨日見守り…

登場人物の誰かは自分自身『乱反射』貫井徳郎著

以前AO153さんが紹介していらした『乱反射』を読んだ。 相馬野馬追・オウム死刑囚の刑執行に思う・貫井徳郎「乱反射」 - A0153の日記 プロローグのあと、マイナス44章から始まって運命のゼロへと向かい、やがてプラスの数になり37章のあとエピローグで終わる…

何層もの入れ子構造の『後巷説百物語』京極夏彦著

地区市民館の書棚で見つけ、猛暑地獄を少しは涼しくしてくれるのではないかと借りてみた。 六つの話が収録されているのだけれど、非常に凝った作りになっていて、五重の入れ子構造のようになっている。最初の1ページには、江戸時代に刊行された奇談集『繪本…

江戸時代のおくりびとの話『出世花』『蓮花の契り』高田郁著

本木雅弘さんの映画がヒットしてすっかり世間に認知された「おくりびと」の仕事だが、この物語は江戸時代を背景に、檀家寺でない墓寺でその仕事に携わる女性を主人公にしたものである。 ヒロインの艶は、不義密通の大罪を犯して男と出奔した母を討つ、「妻敵…

なんとも凛々しい女たち『朱唇』井上祐美子著

まだ纏足が女性の美しさの要素であった時代の中国の話。妓女と呼ばれた職業女性のなかでも、日本の花魁にあたるようなかなり上層部の女性たちの物語を集めた短篇集だ。 標題になっている「朱唇」と、「背信」「牙娘」「玉面」「歩歩金蓮」「断腸」「名手」の…

ものがたり受難の時代だからこそ・・・『孤軍』笹本稜平著

高齢の資産家が50歳も若い女性と結婚すると間もなく怪死した事件や、プロ棋士の藤井聡太七段の破竹の活躍。大怪我から復帰するや、奇跡のようなオリンピック連覇を成し遂げてしまった羽生結弦選手に、プロでありながらピッチャーで四番打者もこなしてしまう…

戦争の理不尽さが胸にしみる『天切り松闇がたり 第四巻』浅田次郎著

昨年第一巻を読みとても面白かった「昭和侠盗伝」シリーズの第四巻だ。 浅田次郎著『天切り松闇がたり 闇の花道』は、絶滅したかもしれない粋でいなせな闇の世界の物語【写真を追加】 - よんばば つれづれ グウタラでばくち好きのろくでもない父親のために、…

こういう謎解きいいな『思い出探偵』鏑木蓮著

少ない月でも5、6冊は本を読んでいるけれど、ブログで紹介したいと思う本にはそうそう出合えない。でも、今回の『思い出探偵』は良かった。 主人公実相浩二郎は、一人息子が冬の琵琶湖で溺死し、自殺と判断されたことをきっかけに警察を退職し、「思い出探…

潔い若さが煌めく『ウエストサイドソウル』花村萬月著

主人公は不登校の十七歳、火田光一(ピカイチ)。赤ん坊の彼をおいて、母親は博打中毒の夫に愛想をつかし出て行ってしまった。以来、ピカイチは「大将」と呼ぶ父親と二人暮らしだ。 なぜ大将かと言えば、妻に出ていかれて改心した父が、才能が認められつつあ…

摺師安次郎の魅力が光る『父子ゆえ』梶よう子著

初めての著者だと思ったが、昨年『ことり屋おけい探鳥双紙』を読んでいた。この時は人物描写が今一つ物足りないと感じたのだけれど、今回の作品は、主人公も周辺の人物たちもなかなか魅力的に描かれていた。 主人公安次郎の職業の設定も魅力的だ。浮世絵の摺…

少年と特攻兵の交流『青空に飛ぶ』鴻上尚史著

父親の転勤で、小学校高学年の何年かをアメリカで過ごした少年友人(ともひと)が主人公だ。日本では帰国子女はいじめに遭いやすいと聞き身構えて日本での中学生生活を始めるが、友人は幸いにもそうならなかった。というのも、友人が中一の2学期に編入学し…

心の洗濯『なつかしい時間』長田弘著

さすが『詩ふたつ』の詩人の本・・・と深く感じた。 yonnbaba.hatenablog.com 著者がNHKテレビの「視点・論点」で、17年間48回にわたって放映のために書いた原稿に、新たに三篇を加えてまとめた文章だ。 1995年5月の「国境を越える言葉」に始まって、「会話と…

部分的には痛快『爺爺ライダー』薄井ゆうじ著

タイトルと表紙の雰囲気で、ゆるくて楽しい物語だとばかり思っていたら、思い切り肩すかしだった。 光(コウ)ちゃんは、ずっと欲しいと思っていた黄色いオフロードバイクを手に入れ、バイク屋の店長に見送られて、両親のいる奥多摩に寄ってから富山に向かう…

何者にもなれなくても・・・『いつか響く足音』柴田よしき著

私が本を借りるのはたいてい地区市民館(中学校区単位)なのだけれど、今日は校区市民館(小学校区単位)の図書室で会議があり、定刻までまだ時間があったので本を見ていた。すると、柴田よしきさんの作品があったので、迷わず借りてきた。 東京の近郊、かつ…

伊集院静著『浅草のおんな』はちょっと苦手なタイプ

美しい本だ。書名とみごとな調和を感じさせ、読んでみたくなった。 幼馴染との若い日の恋に破れたヒロイン志万は、身ごもったまま浅草で男に救われ、妾となって幸せな日々を送る。そのままでも十分満たされていたのだが、無理を言って小料理屋「志万田」を持…

物語の結末は読者に託される『黄金の騎士団』井上ひさし著

みなしごで「聖母の騎士園・若葉ホーム」で育った主人公外堀公一は、一流企業の新人研修中に、その園の田中文子副園長が骨折で入院し、精神的に心配な状態になっていてしきりにあなたに会いたがっているので、至急見舞に来てほしいという手紙を受け取る。 そ…

粗忽者の読書 『フォー・ディア・ライフ』

別にこの物語が粗忽者の話というわけではない。読んだ私が、おっちょこちょいなだけである。 柴田よしきさんの作品、三作目。今回は『フォー・ディア・ライフ』という、無認可保育園の赤字を埋めるため、裏稼業であやしげな私立探偵をしている元刑事の園長が…

ひっそりと誠実に生きる日常の愛おしさ『桃色東京塔』柴田よしき著

昨日の民生委員の新年会のおかげで、今朝の定時の測定で体重が1キロ増えていた。落とすのは大変なのに、増えるほうはかくもあっけない。早いとこ調整しなくてはいけないのに、今日は今年最初の老人会で、ぜんざいをふるまった。お餅2個入りをしっかりたい…

つくづく不思議な生き物のドキュメンタリー映画『猫が教えてくれたこと』

映画『猫が教えてくれたこと』を見に出かけた。豊橋では今日封切り。 観客は10人くらいか。意外と男性、それも年配の男性が多い。映画の中で、目じりを下げて猫をめでたり、世話をしたりしている人にも男性が多かった。そういえば、猫ってオス・メス関係なく…

仲良し夫婦の心地よい物語『春子さんの冒険と推理』柴田よしき著

この1年だけでも、どれだけのカップルが不倫で話題に上っただろう。だいたい不倫なんて当事者だけの問題で、ニュースとしての価値などあまりないと思うのだけれど、需要度が高いのか暴きたがる出版社あり、テレビは呆れるほど追っかける。 うんざりするよう…

日本初のベストセラーグルメ小説の作者村井弦斎が活躍する『美食探偵』火坂雅志著

今年77冊目の読書。毎年、100冊には届きそうでなかなか届かない。 美味しいお料理が出てきそうな期待で手に取った本書だけれど、主人公の美食探偵村井弦斎は実在の人物で、しかもなんと我が豊橋出身の人だった。 村井氏が書いた『食道楽』という作品は、小説…

吉野せいさんの厳しさに触れたくて『洟をたらした神』『梨花』を読む

今年もあと半月ほどになってしまった。もう本を読んでいる時ではないと思い、先日市民館に本を返しに行った折も、あればつい読んでしまうから借りずに帰ってきた。 それなのに、なぜか急に吉野せいさんのキリリとした文章に触れたくなって、「ちくま文学の森…

表紙の感じはいいんだけどね『さようなら、猫』井上荒野著

この表紙で、題名が『さようなら、猫』だもの、読んだ。 猫が登場する(姿は見えないものもある)九つの短編集。でも、猫はすべてわき役だったり、小道具のような扱いだ。猫好きがこの表紙に期待して読むと、たぶんがっかりする。著者は猫を飼ったことはある…